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【会員制の粉雪】② #毎週ショートショート


地球規模の温暖化が進み、かつて《四季》を誇ったその地から
【季節】そのものが失われて久しい。

《ボタン雪》が、別れの宴のように降ったというお伽話を
語り継ぐ者もいない。ましてや酷寒の中で舞う【粉雪】のことなど
記録にさえ残っていない。

焦土のような地表には文明の痕跡さえなく、捨てられたその地には
呼吸することも叶わぬ熱風の嵐が吹き荒れている。

そんな地に降り立った。

厳重な防護服を通しても過酷な空気を感じる・・・


「本当に・・・来てくれたのね?」

姿の見えない彼女の声が伝わった。


【会員】になることと引き換えに 死を迎えた俺が
意識を失う一瞬前に聴いた彼女の声と一緒だ。

迷わず防護服を脱ぎ捨てる。何も問題はない・・・☆

☆☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆ 


白一色に覆われた大地に立って
呼ばれた理由を彼女に問う。

「ただ、貴方に来て欲しかっただけ・・・!」

白い衣装に身を包んだ彼女の姿は美しい・・・

悠久の時の中で孤独なままであったろう
かつて【雪女】と呼ばれた彼女の
微かな笑みが嬉しい。 

来て・・・よかった!!


黄泉の大地に立つ二人を愛でるように
粉雪が舞い続けた・・・・・・☆


【了】



*こちらに参加させて頂きました。
【会員制の粉雪】
【怪人制御冷や麦】(裏お題)

#毎週ショートショートnote




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