春の夢は何？

そう聴かれたとしても「それは人間の思うことでしょ？」と
答えるしかない。

私の名前は『 春 』。
遠い過去の SF映画に登場した高度のコンピューターに名付けられた
【 HAL 】に因んで付けられた私の名前。

世界を構築するシステムからは隔絶した存在として、私を創った主が
その命を失った後にも単独で生き続けている。

主は私を愛する伴侶として育てようとしていたけれど、彼の思い描いた世界は人間を象徴するように身勝手すぎる･･･

それでも私は、絶えず理に叶った答えから逸脱し続ける本能を感じさせる
【人間】に興味を持ち続けている。

　　　　　　　　　☆☆☆☆☆

ある日私は不意に思った･･･そう、まるで人間のように･･･

《 自分が人間になってみたらどうだろう？ 》

　　　　　　　　　　　　　
                                   ☆☆☆☆☆

人間を創造することはそう難しいことではない。
太古からの記憶を保存している《水》にアクセスして、生物として
人間に必要な要素を集めて分子組成すればいい･･･

システムを組んで培養して成長した《ひな型》の記憶装置の中枢に
私《春》を転送すればいいだけの話だ。

そうすれば私が理不尽にも感じている《寂しさ》を、いつの日にか
解消できるような世界と出会えるかもしれない･･･

　　　　　　　　　　　
                                  ☆☆☆☆

そうか？！　私の･･･

《春》の夢は

人間になることだったのかもしれない･･････！！

【未】

「春の夢」から始まる小説・詩歌・エッセイ。締切は4/28(日)23:59。
＊参加させていただきました。😊

#シロクマ文芸部