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ご自由にお持ち帰りください

家に家主が居なくなったとき、家の家生も終わるように思う。祖父母の家も家主を無くし、集められたモノたちも時間を止めて静まり返っている。
捨てるにはもったいないくらい、いいモノたち。まだ使えるモノがこのまま捨てられるのはとても辛かった。だから、もう一度家具や食器に次の居場所を見つけたいと思い「ご自由にお持ち帰りください」をやりたいと父に提案してみた。

もともと、私も父もモノを捨てるのが苦手だ。特に大きな家具や布団などは捨てる度に涙が出るほど辛い。それくらいモノに思いを乗せて生活をしている。だからモノに次の居場所を見つけるために「ご自由にお持ち帰りください」を提案した時、父も賛成してくれた。

紙に「ご自由にどうぞ」と書き、家の前に物を置く。声かけ不要、欲しいと思ったらどうぞ、ご自由にお持ち帰りください。お金は結構です。

ちょうど私の実家は玄関の前が小上がりになっていて、歩いていても視線が止まりやすい。大学が近くにある事や、バス通りに面してることから人通りも多い。早速、家の前に物を並べると面白いほどにモノが無くなる。しゃがみこんで吟味する人、一度通り過ぎて時間をずらしてくる人、車を用意して取りに来る人、夫婦で散歩しがてら見に来る人などもいた。見た後は、みんなちゃんと整頓して帰って行く。箱ごと出したら箱も持って帰ってくれる。荒らされたことは一度もなかった。一番人気だったモノはガラス製品だった。まとめて20~30点ほど出しても2~3日後にはすべて無くなるのだ。使い道がわからないような物も必ず無くなっていた。新しい主人はどんな人でどんな家に連れて帰ってもらったのかを想像すると、それだけで心が温かくなり、幸せな気持ちになれた。

古道具市に出さないんですか?
こんなにいいモノを無料でいいんですか?
いいモノをありがとうございます。

ご自由にお持ち帰りくださいは、出す側も、持って帰った側も、モノまでもがうれしいSDGsだ。

家主を無くした家は今、新しい姿に生まれ変わろうとしている。新しい家主を見つけて家も喜んでいる。

未来のためにできること、それはモノを大切にすることだ。



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