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旅とタバコの想い出 / マラケシュ

旅であったり素晴らしい景色を見た際にタバコを吸いたくなる。

幾度も禁煙に挑戦し、
思い返すと多くの禁煙失敗は旅行中に訪れた気がする。

そんな禁煙失敗のエピソードを一つ。


学生の頃、卒業旅行だなんだとかこつけ、当時付き合っていた彼女と1ヶ月ほどヨーロッパから南アフリカのモロッコへ抜ける旅行をしていた。

絶賛禁煙中で、スペインの素晴らしいタパスの群やエスプレッソを好きあらば飲んでいたが、喫煙欲求は起こらなかった。

タバコの事など忘れて旅を続け、終盤に差し掛かった頃、モロッコはマラケシュに到着。

旧市街と呼ばれるメディナと新しい市街が混じり、移民により、イスラムやキリスト教文化もミックスされ、神秘的な街並みが並んでいた。


サハラ砂漠を旅したり、フナ広場で浴びるようにオレンジジュースを飲んだりと歩き回っていたある日、彼女をホテルに残し、深夜のメディナを探索していた。


決して治安は良く無い。
舗装されていない道や、石畳の小径により形成され、このまま町に飲み込まれてしまうのではないかと思わされる。


ふと、タバコが一本売りされているのに気付いた。
禁煙中、ということも忘れて、物売りのお婆さんから見たこともない銘柄のタバコを一本買う。
ワゴンにつけられたライターで日をつけると深く肺まで吸い込む。
夜中にも関わらず、広場でサッカーをしている子供達を横目に、吸い込んだ煙を吐き出す。
久しぶりに吸ったタバコは不味く、当然のように足元がふらつく。
それでも「これだよこれ」と意味のわからない言葉を自分に言い聞かせ、また深く肺まで吸い込み、夜に溶けていく煙を眺めていた。

根本まで吸い込み、ありがとう、と声をかけホテルに戻った僕は、当然臭いで彼女にバレ、こっぴどく叱られた。

今でも思い出す、神秘的な夜の一本のタバコである。

フナ広場のエスカルゴ

肉も豪快に売られている。

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