見出し画像

「今でも愛してる、だからいつかまた逢いましょう」

「ウエディングドレスをみっちぇるに作ってもらいってお母さんが言うてるねんけど、どう?作ってくれる?」

大学時代のサークル仲間まゆうから弾んだ声で、でもちょっと困惑してる声で電話があった。
ご両親に結婚の許しをもらう最中の電話だったらしく、お母さんは結婚の許しの返事の前に彼女のドレスが気になってその場で電話をさせたとのこと。体も小さく、度重なる手術の跡もある彼女の体には既製品のドレスは無理だと、気掛かりだったみたいだった。

大切に育ててくれた親元から旅立つ時のドレス。

初めてのドレス作り、素材を集めるところから始まって、カバーしたいところ、好みの雰囲気など彼女の体に合わせて、二人で形を作っていった。
色を使わない織り。でもさをりらしく私らしく、彼女らしいものにしたい。自分の中の引き出しをひっくり返して織り上げた。
何度も手入れをして、織り足して、また外しての繰り返し。
リビングのパニエを着たボディが半年間のつーさんのかくれんぼ場所。
赤ちゃんの頃からよく面倒を見てくれていたまゆうのドレスが出来上がるのを、つかさも楽しみにしていた。

結婚式での彼女は本当に幸せそうで、ドレスもステキに似合っていて、横にいる彼も終始ニコニコ。彼女の大事な時間を一緒に彩れたことの幸福感に私も包まれた。
「誰かのためにその人を想いながら洋服を作りたい」
さをりでドレスを作るというそれからの私の作品作りに自信をくれた。

そして、昨日の夜、
大好きな人の元から旅立つ時の服を縫った。
あの日のドレスの布を使って。

仕事もプライベートもいつも二人。
結婚10年を過ぎてもバカップルな二人。
「彼女は私のすべて。
彼女は妻であり、私の最高のパートナーでした。」
そんな大好きな人との突然の別れ。
告別式の会葬礼状には彼の妻まゆうへの想いが綴られていた。
題には「今でも愛してる、だからいつかまた逢いましょう」
こんなに思い想われる人に出逢えたってほんとに幸せだよね、まゆう。

ありがとう。
私もあなたに出会えてほんとによかった。
言い尽くせないほどの感謝の気持ちと
突然の別れの切なさでいっぱいだよ。
今回の洋服はまゆうの好きなちょっと甘めな形にしたよ。気にしていた背中と腕も出してみた。もう気にしなくていいよね。
好きなオシャレを思いっきりしてね。
そして
いつかまた逢おうね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?