私と本 その4「会うまでの時間」
私と本。4冊目は
俵万智「会うまでの時間」
高校生のころから好きな歌人俵万智さんの自選歌集。
私の青春バイブルのような一冊。
万智さんの名を知ったのは、ミスタードーナツのCM。
『潮風に君のにおいがふいに舞う 抱き寄せられて貝殻になる』
女子高生には衝撃的だった。そして、あの有名な歌
『「この味いいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日』
短歌という私の中の固いイメージを、万智さんはさらりと一掃してくれた。
まさに俵万智による「チョコレート革命」。
私もだんだんと大人になっていき、万智さんの歌もどんどんと大人の世界になっていく。少し先を生きている姉さんの背中を見ているような気持ちで歌集を読んでいた。
『会うまでの時間たっぷり浴びたくて 各駅停車で新宿へいく』
私は映像よりも活字が好きだ。行間を想像できるところが好き。
詩や歌はその「間」に見える風景に想いを馳せるのがいい。
特に短歌はリズムにおさめる感じが心地よい。
俳句ほどは切り取りすぎていなくて、散文よりもエッセンスを詰め込んだような。そんな頃合いがすき。短歌は575のあとの77がちょっと引きづる言い訳のようで。私はすっぱり言い切る俳句より、ちょっと引きづっている短歌が好き。
「会うまでの時間」にはそんな私の好きなリズムと言葉と間がぎゅっと詰まっている。
さをりの作品を織るときはこの感覚と近い感覚になるのね。
リズムと色と間
さをり織りもまた、カタチになっていない部分を感じ取るもの。
これは私のものづくりのベースにある感覚なのだろうなと思う。
『何層もあなたの愛に包まれて アップルパイのりんごになろう』
『「寒いね」と話しかけられれば「寒いね」と答える人のいるあたたかさ』
『愛人でいいのとうたう歌手がいて 言ってくれるじゃないのと思う』
『ふうわりと並んで歩く春の道 誰からもみられたいような午後』
『愛された記憶はどこか透明でいつでも一人いつだって一人』
また、感じたものを書いてみようかな。久々にそう思った。
『豌豆をむく手がとまる昼下がり たまに言い訳していいじゃない』
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