店に関わる前とどう変わったか。とは言え、もう店を任せられてから
だいぶ経ってしまい人に会う必要のなかった日々も忘れてしまった。
だから、この会い続けてる日々が日常になり、
会わない方が非日常になった。すっかり感覚が変わってしまった。

だけど、はっきり言えるのは会話の反射速度は上がったとは思う。
とは言え、元の頭がいいわけでもないし、そこに変化はない。
気の利いた返しや含蓄のある返答ができるようになったわけではない。

少しは経験値を積んで知能にも影響があっただろうけど、
そこよりも圧倒的に変わったのはテンプレートが増えたことだ。
多く会話をこなすことでパターンが練り上げられてきた。
会話の質とこちらの調子によっては一言目で着地点まで読める。

それを最後まできれいに流しきるかあえて変化をつけるかこちら次第だ。

店をやって変化したことは酒の知識や料理なども過去の自分と比べれば、
変化は多いが、人と会ってということに着目すれば、やはり会話か。
そして、人の間に流れる空気のようなものを捉える力か。

ここまで言うとコミュニケーションが強いように見えるかもしれないが、
逆に一手一手の返しは得意ではない。
読むことはできるのだが、読み込みが遅く、
返す頃には一手過ぎてから返すとかになってしまう。
雑に全体的に落ちる結論は見えたりする。
この話とその話はこういう結論で帰着するだろうと。
だから、気の利いた返しはできないのだ。

あるいは色々言ってるけど、性格と心理的にしてほしい返しを導いて、
そこにくっつけることはできる。
が、それはある程度見知った仲でできるテレパシーのようなものだ。
信頼が紐づいている有線式のテレパシーだ。

だから、初めて会った人間に通用する能力ではない。
そのあたりは店ではなく学校や職場ですでに築き上げられた能力だ。
挨拶から社交辞令など培ったものを型通りに
初対面の人とのコミュニケーションをぶつけて、
そこから探って深く繋がっていく。
うまくいけば、見知った人間と同じようにコミュニケーションが取れる。

確かに多様な人種が多くいる環境ではあるが、
店繋がりの人間関係という限られた環境ではある。
店から距離が遠いほど、店での経験は生きなくなってくる。

全く無駄であるわけではないのだが、
変な自信をもって初対面の界隈に突っ込むと、
場をかき乱す迷惑な存在となるので、そのあたりの戒めが必要だ。

むしろ、普通とは違う生き方をし、
普通では会えない人たちと出会ってる日常を送っているため、
多くの人間に通じると思わないようにしている。
一人一人、考えて距離を縮めすぎないようにしている。

わりと過剰なまで発言に気を付けて、距離を取るようにしている。
そのため、何も残せない会話をすることも多い。
その場合は縁がなかったものであるとして切ってしまう。
普通は連絡を取ったり、追って話をして縁を深めるのかもしれないけど、
俺はそれをやらない。それが当然のコミュニケーションになるのか深追いになるのかがわからないからだ。

気にしすぎなのかもしれないが、どうしても自分の精神がもたない。
そこで追ってしまうのであれば、
その分、別の新しい人との出会いや既存のコミュニティを大事にしたい。
強いて言えば、
コミュニティの取捨選択の早さが上がった点は変わったところだ。
正しい選択をしてるかは不明であるが、時間は大事にできている。

人と多く会うと人を学習していくので、
ある程度で過去に会った人たちと照らし合わせて、
人格を判断することができる。その判断は間違っているかもしれないけど、
自分の中で迷いをなくすことができる。この人は気の合う人なのかどうか。
そこが分からないと趣味の話をしたり、
相手の話を聞きだしてもっと理解をしようと
頑張ってしまうが、先に違うなと思ったらそれは防げる。

コミュニケーションで無理をしてしまうと、
関係が悪化してしまい周囲の空気も悪くなってしまうこともある。
自分は話をうまく持って行って良縁にするような器用さはない。
だから、最初からうまくいきそうな人とだけ接するようにしている。
これは今後の課題でもあるけど、
もしかしたら一生治るものでもないかもしれないので、
引き続き狭いコミュニティを維持しながらやっていくほかない。

よく知らない人や外国でもいきなりうまくやれるような人は
本当にコミュニケーション能力が高いのだと思う。
しかし、自分がそれをやるのは急に飛ぶような話で、
うまくやれる気がしない。
本当は社会でやっていくのにそれではだめなのだろうけど、
自分は着実にやっていくしかないので、仕方ないと思っている。
無理をしてうまくいかないのも、
中途半端に今までにないコミュニティを築こうとして
今いるコミュニティをダメにするくらいなら
今いるところをしっかり守っていく方が大事だ。

人とたくさんあったことでそれを強く思った。
それと同時にこの保守的な方針をどこかで崩さないと
何も得られなくなってしまうのも感じている。

人と出会うほどに課題が見えてくのはいいことだろう。