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西へ撃ち出された弾丸に計画なんてない

店での営業を終え、そのまま新宿に向かった。
自粛も何もなく、短かったが、普通の日常が過ごせた日々だった。

かねてからどこかに行きたかった。誰も知らないどこかに行って、
何もない自分に戻りたかった…。

ってわけではなく、自分が関係してる店に向かっていて、
むしろ自分のことをとてもよく知ってる人が行く予定の所だった。

謎のお嬢様キャラをTwitterでやろうとしたけど、秒で飽きてやめてしまったの図。

きっかけ

きっかけはこの御二方のイベント。ちょうど何の自粛もなくてかつ暇であり、行けそうだったから夜行バスの予約を入れていた。

出発当日は店の客がいたものの早めにいなくなったため、余裕を持って行けた。なお、急に行けなくなる可能性もあったのであえて行くことはこの2人には伝えなかった。

出発まで

深夜の新宿駅構内を彷徨い、バスの停留所をようやく探し当てた俺は発車時間まで時間を潰そうと適当な飲食店を探す。どうせ新宿に来たし、
遠出で予算も余裕をもたしてるから、これを機会におしゃれなお店に入って写真でも撮ろうとした。

ところが開いてる店はなかなかなくて、
見つけたのは入っていいのかわからない見た目高級そうな店だけ。

中に人がいるから入っていいのかもしれないけど、
まず入り口がわからない!

あと客層が明らかにちゃんとした階層にいる人たちであり、自分みたいな地底人とは関わりなさそうだった。

これは入れないと観念して、駅から離れた場所を探す。

チェーン店ばっかりだったが、喫茶店は当然閉まっていた。
うっかり開いてる松屋に入りそうになったが、それはいつでも行ける。普段、行かない場所にしようと辺りを見回した。

そして、探した結果、

みんな大好きマクドナルドだった。確かに自分は普段行かない。
多分半年は行ってない。

でも、それ以上に入れる店がここしかなかった。
一番落ち着いてバスを待てる場所だった。

少しでもその悲しみをごまかすために限定メニューっぽいものを頼んだ。

1,000円のランチよりマックで500円以上使う方が贅沢だと思う自分にとっては大きな出費だった。

で、ハンバーガーを噛み締めながらも値段のことは考えないようにした。

この雰囲気と座って待てるというのが大事なのであり、味はサービスの一部なんだ。だから、これでいいんだ。

そう言い聞かせながら時間になるのを待った。

バス停留所の待合室は人で溢れていて、座る余裕などなかった。もしかしたらとは思っていたけど、こんなに人がいるのは予想外だった。他で時間を潰してよかった。

夜行バスをこの時期に使う人が多かったのは驚いた。

また受付や券売機は利用されている様子がなかった。ネットで予約をしているようだ。

夜行バスは初の利用で見たもの全てが新鮮だった。

場所を確認した時も丁寧に案内をされて感心した。
値段が値段だけにもっと雑な扱いになるかと思っていた。初めての利用だったから謎のハプニングが起きて乗車に手こずると考えていたが、そんなことはなくすんなりとバスに乗ることができた。

怖かったので、荷物は預けないで抱えて座席まで行った。

席は間違えてないか、隣に人が座らないかとずっと考えていた。
そして、席は本当に間違えていて、一個ずれていたので座り直した。

並んでいる人が座りきって落ち着いた頃に周囲を見ると、隣り合って座っている人たちはいなかった。どうやらそのように割り当てられているらしい。

値段に見合った劣悪な環境を想定していたので、ここでも感激してしまった。新幹線と比較して、この値段で本当にいいのかと。時間はかかるけど数時間で着くし、座り心地の差はよくわからない。
本当にいい乗り物だけど、上手く睡眠が取れなかった。

到着

数回の休憩を挟みながら、バスは名古屋に着いた。
降りるまで景色は見れず、トイレにも行かなかったので外に出たら東京じゃないというのが、とても不思議だった。

いざバスから降りて初の名古屋への第一歩を踏みしめたが、実感は薄かった。まぁ、国内なんだから当たり前なんでけど。

でも、コンビニ行っただけでもドキドキしたし、歩道を歩いても何をしても全てがそんなに東京と変わらないということだけでも興奮した。後に電車に乗った時に思ったことだが、まるで並行世界に来たような感じだった。

別に初めて東京から出たわけではないのだが、仕事でもなく1人で行ったのが初めてであり、ずっと暗いバスの中にいたから目の前に広がった景色が眩しく映った。

滅多に来ることもできないので、なるべく記憶しておこうと建物から案内板まで目に映るもの全てを見た。

朝に限りなく近い深夜に着いたが、眠気はなかった。しかし、身体に悪いので、ベッドで寝られる場所を探した。

いくつかホテルに当たったが、当日での宿泊ができるところはなかった。カプセルホテルみたいなのも探したが割としっかりしてる所しかなく、仮にあったとしてもこの時間では夕方からの宿泊になってしまうだろう。
ホテルに泊まってもいいという気持ちでいたのに、結局泊まることができなかった。

何とかなるだろうと思っていたが、流石にホテルは無理だったか…。
TV局とか見てはしゃいでるうちに朝になってしまったので、諦めて漫画喫茶に泊まることにした。

いくつか候補が上がったが、寝られそうな所はどこにでもある漫画喫茶だった。そこは目的の店がある大須商店街にあり、予定より早く近づいてしまった。

休息

実はこの漫画喫茶も利用が初めてだった。なので、会員登録に手間がかかり中に入るまで時間がかかった。そういう人は結構いるみたいで次に来た人も登録作業をしていた。

漫画が敷き詰められている本棚を横目に部屋へと向かった。とにかく睡眠を少しで多く取りたかった。カードキーで開けるタイプの個室ですごいと思った。

なかなか眠れず、PCを適当に眺めていたらポテト食べ放題の情報が出てきた。朝限定らしい。食事をとってなかったことを思い出し、早速向かった。

そして、調子に乗って取りすぎたポテトにいささかうんざりしながらも食事を済ました。コーラと一緒に摂取した朝は非常にジャンクだった。

眠れたかどうかわからないまま漫画喫茶を後にした。

商店街

名古屋で初めての夜を過ぎた後は初めての昼だ。人通りがすっかり多くなっている。聞いた話だと普段はもっと多く、週末になるとすごいらしい。

本当はホテルならそこでシャワー浴びたりとかできたのだが、銭湯に予定を変更した。漫画喫茶にもシャワーはあったのだが、浴びる気がしないのと浮いた予算で銭湯に行きたくなった。

とりあえず、石けんやシャンプーを買うため商店街にある薬局に向かった。シャンプーなどが設置されてない場合を考えた。

薬局から出て歩いてるとPCショップがあり、秋葉原を思い出させた。買いもしないけど、中に入って中古PCの値段をチェックした。これはただの習慣であり、特に意味はない。発売時期と値段を見て、相場と比較する。10万あれば、中古でも十分なのが買えると思った。秋葉原と違うのは服屋が多いことだ。安売りのチェーンなどではなかった。そこに向かうことはなく、商店街の出口を目指した。

出口付近には同人ショップらしきものがあった。アニメイトみたいなものだろうか。東京のサブカル要素を詰めた感じだ。アーケードの外に出てすぐ横に金色の龍がいるドンキがあった。

ここでようやく名古屋らしさを感じた。金のシャチホコと何か関係があるのだろうか?とにかく目立つ造形が好きということははっきり感じた。

銭湯というか厳密にはスパであり、河川沿いにある。なので、ゆっくり河川を見ながらいけると思っていたら、ただ建物が並ぶばかりで全くもって水面が見えることがなかった。代わりに巨大な宗教施設があり、とても栄えてるんだなぁと思いながら眺めてた。

商店街との差がすごくとてもメリハリのある構造をした地区だった。地図がなかったらここにスパがあるなんて思わなかったな。便利な時代だ。

商店街があれだけ栄えてるし、もっと観光地っぽく商魂たくましい店が多いのかと思った。しかし、そんなことはなくただ生活がそこにあっただけだった。堂々としていい感じだった。浅草の方がもっと観光客に媚びてるところはある。本来、観光地としては正しい姿勢なのだが。

しばらく、するとそれらしき建物が。見上げて看板を確認するまで本当にここがスパなのかわからなかった。寂れたパチンコ屋なのかと疑ってしまった。自動ドアのガラス越しに中の様子を見てもエスカレーターしか見えず、少し入るのに勇気がいた。

実際に中に入るとチップの埋め込まれた下駄箱の鍵を利用して施設を使える、何だかハイテクでよかった。自分も初めて来たのに高齢の男性に下駄箱の開け方を聞かれて、教えることになったけど、無事に開けられた。中にはサウナに泡の風呂、肌に良さそうな白い風呂、露天風呂と色々あった。岩盤浴も入れる券を買ったので、全て入り放題だった。

サウナではTVを観て世間のニュースを久々に知る。東京は大変だなぁという話し声も少し聞こえた。そういえば、名古屋に来てるんだよなと暑さでぼーっとした頭で再確認した。

奥の方では横になってる大人が1人いた。

そこから水風呂に入り、露天に入り、よくわからん白いのに入り、またサウナへ。だいたいこんな感じのを1セット×3くらい行う。

血流をよくして、疲労を取る効果があり、交互浴とか言われてたと思う。体に悪そうだが、水浴びる時は足から少しずつかけたりして、体を慣らしながら冷やしている。本当は一気に冷ますから効果があるみたいだが、流石に心臓への負担が重そうなので、その辺りは気を遣っている。

シャンプーなどはリンスともども備え付けてあったので、ここぞとばかり使う。

2回目くらいのサウナの時、サウナ室で横たわっていた人がまだ横たわっていた。何だか心配になり、よく見ると、ちょっと動いてるので安心した。慣れると寝れるもんなんだろうな。

自分も無限に入れるような気がしたのだが、修練が足らず、10分が限界で、5分くらいで出ることが多いぐらいだ。
元々サウナは好きではなかったが、健康に効果があるらしいというのと一時ブームになったこともあり、意識的に入るようにしている。今では入らないと損かなと思うくらいだ。

多分、体も癒され、肌も良くなったはずなので出ることにした。

身体を拭いてドライヤーで乾かす。こういうところはドライヤーも無料で使えるからいい。この度の後に改めて思い知らされたのだが、普通の街の銭湯では無料ではなく、何故か小銭を取ってくる。女性だと大変だろうな。男だとそこまで使う人がいないからすぐに使えていいけど。

体の余計な水分を全て取り去り、ふと髪に手をやる。何だかゴワついてる。

リンスをたくさん使って、しっかり洗い流して、サウナ行って、また洗い流してるのに。
リンスをたくさん使ったからか。まずそれだ。後はサウナで固まったか。

ちくしょう。せっかくふわっふわにしようとしたのにゴワゴワしやがって…。こうやって強欲は戒められ、節度と限度と適切な方法を学習して風呂を出るのだ…。

髪は悲しいことになったものの浴場の外に出ると定食から漫画読んで寝られる所まであった。
すごい、天国だ。地元にもこんな感じであればいいのに。あるけど高いし、あまり寝られないんだよね。

というか、最初からここに行けばよかった。朝5時からサービスしてるじゃん。マジか。すっごく学びの多い銭湯だ。今度から夜行バスでの旅はホテルでも漫画喫茶でもなく、スパを探そう。余裕で寝られる。

本当に反省した…。でも、スパなんて寝られるなんてイメージなかったし、そもそも開いてるだなんて思ってなかった。そんな早朝から頑張ってるだなんて。

飯へ

とりあえず、さっぱりしたところで食事をとることにした。
ここまできたらいよいよ名古屋飯と言われる郷土ならではの料理をいただきたい。これが名古屋に来た目的の一つでもあった。それこそ東京にあるものを食べて帰ったら、悔いのあまりに壁に頭を打ちつけて血だらけで涙を流すだろう。
何が何でも名古屋っぽい何かを食べて帰りたかった。

しかし、名古屋は市民たちの街であり、別に観光客のための街ではない。住民優先なのは街としては基本的なことだ。それがしっかり守られているのはいいことだ。でも、もうちょっと名古屋を強調した飯がすぐに見つかるくらい地元を主張してもいいと思った。本当になくて困ってしまった。

その味噌はおそらく北海道で有名なタイプなのよ。ラーメンね。のちに聞いた話だとこの辺りはラーメン激戦区らしいのだが、そうであったとしても、ラーメン屋は大体どの店もそこにしかない。それは東京でも同じなのだ。名古屋だから特別という感じではない。もっと名古屋を訴えかけるような料理を。

急に出てきたインドらしき店。確かに名古屋のご飯に飽きたらインドのお食事もいただきたいかもしれない。ただ、こっちは1㎜も名古屋に触れてないんじゃ。ちょっとインドっぽい店には引っ込んでもらおうか。

新手の天罰か!何で西の地域に行ってまで雪に見舞われなきゃならんのだよ。そんなもん北でひっそり降っとけよ。俺は雪を浴びにきたんじゃない。名古屋飯を食いにきてんだ。

おや、どこかで聞いたような店名だが「パーラー」ペコペコさんなのね。この時は閉まってたし、開いてたとしてもそこに名古屋はあるんかい。たびたびおしゃれな店は見つかるが、目的の店では決してないだろう。

ちなみにマキシマムザホルモンのファンたちの呼称もはらぺこだったような気が。

もう飯関係なくなっちゃったよ。綺麗な店だと思ったら家族葬を受け付けてる施設だったし、道路向かい側にはドローン受講の案内が。なぜでしょう。
探せば探すほど本来の目的から離れていってる気が。名古屋飯は脚でも生えているのだろうか。

ツイッターでやばとんが良いと言われ、そのまま向かったら準備途中だった。思い通りにいかない。人生だ。大体何が起こっても人生だけど。

本当に見つからなくて困った。パスタがあったと思ったらCoCo壱のパスタバージョンというレアなものだった。確かに行ってみたいが、絶対にそうじゃない。今行くべきところではなかった。
すっかり夕日が見えるかどうかくらいの時刻になり、下校途中の高校生らしき集団とすれ違う。トヨタのお膝元だけに工学系の教育には力が入っているのだろうか。工学好きとしてちょっと気になる。でも、考えたところでボルトやナット、ギアは食べられないので、そろそろ必死に飯屋を探す。歩いてたら適当に見つかると思っていたけど、名古屋はそんなに甘くなかった。
何だかまた商店街に近づいてるが、結局、頑張れば東京にもありそうな店で妥協してしまうのだろうか。
不安をよぎらせて信号を待っていると、綺麗な感じの店構えが見えた。

名古屋飯

おしゃれなパスタ屋か。喫茶店よりはスパゲティに力入れているようだけど、日本人が作る街のパスタって感じだろ。
しかし、あんかけ…って、なんだ?

店内はすごくすっきりしていて綺麗でいつも自分がいる店とは大違いだった。何より圧巻なのが、表のディスプレイにもあったようにメニューの多さだ。肉からほうれん草、オムレツにスパム、ツナなど重そうな材料をメインにたくさんある。気合に質量を感じた。

サイズもダブルとトリプルがあり、追加料金で選べた。もちろんここまできたらトリプルをいただき、ついでにトッピングはエビフリャーで有名なのでエビフライを追加した。もうこの時点でどこでも食べられるものじゃない料理が来ることがほぼ確定して、胸のざわめきが止められなかった。来い、名古屋。喰らい尽くしてやる。

「お待たせしました」
メニューを運んできてくれた店員さんがやってきた。
丁寧な仕草で穏やかに料理をテーブルの上に乗せるが、目の前に現れたみたこともないスパゲティは全く穏やかな代物ではなかった。
あんかけが海のように広がり、マヨネーズがハイカロリーを信仰しているかのように広がり、揚がったエビが「俺が食いたいんだろ」と言わんばかりに存在感剥き出しで添えられていた。

量ではなく、この思想にプレッシャーを感じた。特盛にしたら食べきれないような店で感じるアレだ。しかし、食べきれるかどうかは結果論に過ぎない。どうしてこういう料理を提供しようと思ったかだ。満足感にフォーカスした結果、こうなったのだ。その満足感に対する貪欲さに恐れを感じるのだ。こう言っては何だが、普通の店は味を繊細に追求するものであり、それが家庭の味とは一線を画すのだ。何より食えるかどうかの満足感を与えられて、それで満足しきってしまって来なくなったら意味がないだろう。
それを!躊躇なく!出すという思想!!そこいらの店にはないものだ。
この圧に打ち勝ち、全力の飯を喰らうべく、MAXのサイズを注文した。
いくぞ。

とても和風の風味だった。口の中には深く豊かな香りが広がる。スパイスでアクセントがついていて、食べても食べても飽きが来ない。
本家洋風のスパゲティと違って、華やかで広がって残るような風味はない。その代わりキレのある味を楽しめる。幾度、口に入れてもキレは衰えない。何だこの無限に美味い食い物は。これがあんかけスパか。ツナとマヨネーズで重さも追加してある。他にもデタラメなトッピングがあるので次があるならば試してみたい。

洋風のものを和風で仕上げるとちょっと中華っぽくなる感じがしたのも発見だった。このソースはかなり作り込まれていて、材料と時間が膨大に費やされているので、食べたければまた行くしかない。ちなみにシングルだとなかなかお手軽に食べられるので、普段行くのもおすすめだ。いやぁ、名古屋飯だったな。ちゃんと説明にも名古屋発祥みたいなこと書いてあったし。たしか。

店を出て、名残惜しく振り返る。黄色い看板に黒文字の丸ゴシック体風で書かれた店名。何故だか胸騒ぎが…。

名古屋城

最後に巡る名所として名古屋城へ向かうことにした。(飯ばかり探して、名所はここくらいしか行く予定なかったけど)
何だかまっすぐいけば着くみたいんだから歩けば、何とか着きそう。

迷ったりしないし、これは行けるだろう。意外と近くにあるもんだな。
一体どのくらい大きいんだろうな。楽しみだ。

今まで通った道にあった店とは違う飲み屋や喫茶店、神社や科学館などたくさんあった。宗教もサイエンスもさっぱりなので、自分が見ても「すっごくおっきい建物」以外の感想が抱けなかったけど。教養大事。こういう時、詳しい人と行くのがいいと思った。

科学館を過ぎるとビジネス街っぽく居酒屋からラーメン屋まで色々あった。容赦無く、飲食が誘惑してくるな。沖縄に少し行った時も感じたけど、この街も絶対に住んだら太る街だ。この町で痩せてる人は修行僧に違いない。

しかし、ビジネス街エリアを歩いても歩いても城は一向に小さく見えるだけで、近づいてる気配がない。街の風景は東京の大手町、日本橋あたりを彷彿とさせた。
このまま歩いて着いたとしても帰りに店に間に合うのだろうか?着くころには店のイベント終わってたりしない?
見える景色に東京を重ねてしまって、ちょっと旅行気分に浸れなかった。もちろんこれは夜行バス弾丸をかましてるせいで精神的に落ち着かないのもあるけど、本当に非日常レベルの異世界を味わいたかったら、外国に行くくらいじゃないとダメなんだろうな。だから、芸能人とか資産家とかはワイドショーに空港まで張り付かれても海外に行くんだろう。

ほ、本当に着くのか??
しかし、小さかった城は少し大きく見えてきてるし、暗くなるほど頻繁に見る地図アプリも近づいていることを示している。無限に続く道はないんだ。きっといつかたどり着くはず…。

ちょっとビルが少なくなってきて、辺りが閑散としてきた。
すっかり夕暮れは夜空になり、空一面、闇が広がっていた。

えっ!!!城って閉館の概念あるの!!???
確かに中まで入ろうなんて思ってなかったけど、門ぐらいまでは行けるって思ってた。いや、いくら何でも城と俺までの距離遠過ぎない!?そんなことある!?何だ、この片想いの距離は。俺の思っているより君からみた距離はずっと遠かったってか?な、なめんな‼︎誰がお前なんか。別に城が好きできてるんじゃないんだからね!飯を食うために昼はうろついて、そのついでに見に行ってやっただけなんだから。見れたらいいくらいで別に見れなくたって何とも思わないんだから。…帰る!次は商店街に戻って店に行って、最終目的を果たしに行くから。
………城、めっちゃライトアップされて綺麗。

いろんな案内があって、昼に行けば、城についても色々わかるし、街中とは違った雰囲気が楽しめていい。流石にお城の周りはオシャレにできてると感心してしまった。でも、城も歴史もわからないからすっごく広い以外の感想抱けなかったので、絶対に勉強はしといた方がいいってわかった。勉強してるとね、思考力もそれなりにつくし、働いてても旅行に行っても少し楽しみが増えるんだよ。特に歴史のある土地に行く時は学習がモノを言うな。今度は調べてから行こうか、せめて。色々と…。

改札のようなものがある建物を見つけ、帰りは電車で帰ればいいと思った。今更と思うが、それまでは歩いて帰ろうとしてたから。全く電車の発想がなかった。そもそも旅行先で電車を使うって考えないタイプなので。そんなタイプあったらたまらないので、本当に交通機関くらいは抑えておいた方がいい。使わないにしろ、使う時のために。(当たり前の考え)
移動はいざとなったら足があるという考えがよくないんだよな。無駄に体力が尽きないため、全然、文明に頼る気が起きない。しかし、旅行は実は時間との勝負なので、ちゃんと使えるものを使って効率よく巡ろう。(固い決意)

あと、この改札みたいなのがある建物。普通に役所だった。お仕事帰りの人たちに、券売機を探してる俺の姿を見られて、すっかり不審者だった。
よく見たら道路の向こう側に地下鉄へ向かう階段があった。
いい加減にこのRPG感覚で旅するのやめた方がいいな。

券売機に向かうまでの広告も新鮮に見えた。設備なんて丸の内線のそれとそんなに変わらない。広告と路線図のわずかな色合いの違いだけが異境の地にいることを感じさせた。
地元で遊んだ帰りのように改札を通り、電車に乗った。再び、電車内で路線図を見ると地元の路線の色と似ている線が、これまた似たような位置にあった。でも、ここは名古屋であり東京ではない。

まるで別の未来を辿った東京のようだ。国内だからあながち間違いではないのかもしれない。並行世界に行ったような不思議な感じだ。がっつり旅行というほどの時間も余裕もないし、東京でいつでも会える知り合いに会いに行くというのもあるからか。だが、並行世界の感覚はここで終わることはない。

エデン名古屋

店に行く前に薬局を探した。行きには商店街にいくらでもあったドラッグストアも何故か見つからず、vdrugしか見つけられなかった。主催者が誕生日近かったから邪魔にならなそうな消耗品を探した。

店の場所を探して、何度も位置を確認した。どう考えてもこの階段の先にあるのがわかった。しかし、間違えてたらちょっと怖い雰囲気ある。
しかし、看板もあるし、大丈夫だろう。エデン名古屋とはっきり書いてある。

ドアを開けると思ったより中は広かった。むしろ、こんな空間が広がってるなんて素晴らしい。階段の陰鬱さとのギャップがすごかったが、それがなくても楽しい空間だ。これは開けて5秒で思った感想だ。その間にまた来ようって思ったけど、まだ注文どころか会話するちゃんとしていない。
この時点でいい店なのはすごいし、ずるかった。

店長の塩(si-o)さんに丁寧な案内をしてもらい、客席へ。
何も知らせてないで来てるので、主催者は「何か来た」と困惑。俺も本当に来れたことにびっくりしてる。ツイートはしたけど、東京の似たような風景なのではと片付けられそうになったらしい。知り合いが遠くから突然来るとこんな気持ちになるんですね。そりゃそうだ。

黒を基調として壁面、モニターにPC,漫画、奥行きのあるカウンター、カラオケ設備。広い店に十分な機能が搭載されている。
比べ物にはならないが、自分のとこの店を思い出す。

知り合いがいるとは言え、完全アウェイのお店で振る舞い方がわからないため、大人しく店内を眺めている。ビールがうめぇ。
店長であるという身分を生かした店長的な会話をしながら、ゴスロリとか着物とかドローンを見ている。カオスとカオスが集合してしまった図がこれなんだろうなと思いながら見ていた。この懐の深さも思うところがあるし、いいとこだなぁ、デカくしたウチみたいな店だ。すごく整ってるけど。あぁ、ビールがうめぇ。問題はリンスが固まって絡まった髪の毛だ。全然、会話に集中できない。坊主の店長を羨ましくも思ったが、絶対に髪は切らない。というか、これで坊主という選択肢はなくなった。坊主被りはしたくないし、店長=坊主って世界観を広めてはいけないと思ったから。

そもそもにこんなものが目の前にある時点でただならぬ事態なんだよ。何かあったらと思うとドキドキするし、迂闊に酔って不手際できない。
頼むから、もっと他に気をつけてほしい。無造作にすごいものが置いてある。貴重な経験になったけど。この後、ブンブン飛んでて、見てて楽しかったけど、着物着た操縦者ってこれから見ることないんじゃないかな。
いやぁ、ビールがうまいな。おかわり頼んだ。

黒い壁とかいろんな設備を見て、自分の店を思い出して、ここまで地元を想起させるものがあると本当に奇妙な感覚になる。そういう意味でも貴重な体験になっている。似た世界に急に飛ばされるってこういう感じなんだな。

今回は時間もなければ、店の位置以外は下調べを全くしてないので、ちゃんと地元の人とか詳しい人に話を聞いてみたい。もっといい場所もあるかもしれないし。何より昔の姿を聞きたい。旅行は行ったところで現在の姿しかわからないのだ。昔はどのようなものがあり、周辺はどんな感じなのかを聞いてみたい。

これに尽きる。ってこともないけど、広いのはひとえに羨ましかった。広ければ、スペックあげられるなんてことはないけど、余裕はできる。イベントの幅も物理的に広げられていい。こればっかりは願望だし、次に店やるならそうしてみたいけど、難しいだろうなぁ。

この広さを利用して、クリエイターのためのスペースとしても使われている。自分がいた後にコワーキングスペース・おークリが閉店になったが、この空間は現在も利用されているし、主催も近くで活動をしている。

クリエイティブ、文化にとても優しく、強い店だった。そして、それは名古屋らしかった。自分の所も文化寄りなところには位置しているけど、あくまでビジネスの中でカルチャーに近いというだけであって、全力で文化振興に力を注いでるのとは違う。本物と比べればだいぶイミテーションなんだけど、少しでも本物に近づけられるように見習いたいと思った。

イベント後、店長達と会話をして帰った。
「大黒柱の役目を果たせる店長っていいですよね。僕も店を支えてるかもしれませんけど、どっちかっていうと床なんですよね。踏まれても文句言えない」
「床…」
俺は自分が東京の床であることを表明して、1日を終えた。

帰路

だから、雪って何だよ‼︎わけわかんねぇよ。流石に天候には文句言うわ。
しかも、ダイレクトで悪天候に見舞われるってどういうことなんだよ。確かに巡ってる時にずっと雨とかよりはいいんだけど。雪はないだろ。
帰りに想いに浸りながら、文章の締めくくりを考えようとも思ったけど、これは無理。最後の感想?雪。雪しかない。名古屋に来てまで雪に降られた。目の前が白い。それだけよ。雪山で遭難して自力脱出した感想と変わんないじゃないか。

帰りのバスの予約をその日の夜ではなくて、翌日早朝にしたのは賢かった。値段も変わんなかった。そして、少し丁寧な対応だった。夜も丁寧だったが、ことさら丁重に扱われた。流石に朝は人が多くて、隣に乗客がいた。

この費用に対して、この時間が過ごせたんならだいぶ得だ。想像以上にいい場所だったな、エデン名古屋。この後にうちの店の人も行くことになったし、予定もあるのでこれからより深い関係性を築きたい。名古屋自体ももっとちゃんと行ってみたいし、土産くらい買う余裕も欲しいな。

あと、絶対に太陽の出てるうちに名古屋城に行く。そんな興味ないけど、絶対に行く。着いたら真っ先に行く。興味ないけど。



読んでいただき、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。 ところでこの「さぽーと」って何ですかね?神が使う魔法かなんかですかね??良くわかりませんが、これ使う人は人間以上の徳がある人なんでしょうね。