見出し画像

ハンドメイド作家のインボイス対策



はじめに


令和5年10月より、インボイス制度が始まりました。
これにより、今まで納税の必要がなかった零細個人事業主も影響を受けることになります。
「なんかよく分かんないけど、税金が増えるの?」というような認識の方も多いと思います。
ここでは、個人で活動しているハンドメイド作家の立場から、インボイス制度について解説していきます。
他業種の方が読んでも参考にできますが、業種や事業規模によって制度の細かい部分が違っていたりするので、ご了承ください。
ここでは制度の仕組みや細かい数字の説明はできるだけカットして「何が変わるの?どうすればいいの?」という部分にしぼってお話ししていこうと思います。
また、インボイス発行事業者になるための手続き方法等についてもここでは説明していませんので、詳しくは国税庁のサイト等を参照してください。
手続きを進めるにあたってはマイナンバーカードがほぼ必須となるので、持っていない方は発行しておくことをお勧めします。
私自身は単なるハンドメイド作家で税制の専門家ではありませんので、間違っているところもあるかもしれません。
間違いがありましたら、ご指摘いただけるとありがたいです。

インボイス制度について「売上の10%を納税しなければならない。事務作業の負担が増える」と思っている人もいるようですが、それは大きな誤解です。
一般的なハンドメイド作家の場合は「最大で売上高の約2.7%」の税率となり、事務作業もそれほど増えることはありません
詳しくは、これから説明していきます。


開業届と確定申告について


インボイスについての解説の前に。
個人事業主としての開業届は出されているでしょうか?
個人事業主ではない場合、納税の必要はありませんのでインボイス制度についても気にする必要はありません。
開業届を出さずに作家活動を続けている方も多いと思います。
「本業の方が副業禁止なので開業届が出せない」という方もいるでしょうし、みなさんいろいろな事情があるでしょう。
私としては、継続して作家活動を続けていくなら、開業届を出して確定申告をする方が良いと思います。
まず「年間の所得が20万円以下」の場合は、確定申告の義務はないので、何もしなくても大丈夫です。
この20万円というのは「売上から経費を引いた利益」となります。
経費には、材料費の他にも販売イベントの出店料や交通費、さらに光熱費や住居費の一部も含めることができます。
ハンドメイド作家の場合、売上金額がかなり大きくても、利益では20万円に届いていないこともよくあります。
利益が少ない場合は確定申告の義務はありませんが、できればやっておいた方が良いと私は思います。
副業で作家活動をしている場合は、利益がマイナスでも確定申告をしておけば、本業で支払った税金の一部が戻ってくることがあります
マイナスの利益は翌年以降に繰越できるので、将来売上が増えたとしても課税金額を抑えることもできます。
確定申告に伴う事務作業は、はっきり言って面倒くさいです。
が、確定申告を行うことによるメリットもたくさんあるので、製作活動を続けていくならやっておいた方が良いと思います。


課税事業者になった方がいい?


さて、開業届を出して個人事業主になると、免税事業者か課税事業者のどちらになるかを選ぶことができます。
そして、課税事業者になると消費税を納税する必要があるため、インボイス制度についてもきちんと理解しなければならなくなります。
年間の売上が1千万円を超える場合は、選択の余地なく課税事業者になります
個人でハンドメイド作家として活動していてそんな売上がある人は、ごくわずかしかいないでしょう。
今までは、売上が1千万円以下なら課税事業者になる必要はありませんでしたが、インボイス制度の開始により、選択を迫られることとなりました。
ここで判断の基準となるのは「委託販売をしているかどうか」です。
イベントでの直接販売やネット販売のみで活動している方は、免税事業者のままで大丈夫です。
他の店舗で委託販売をしている場合には、課税事業者の登録を行い、インボイス番号を取ることを求められる可能性が高いです。
作家側がインボイス番号を取っていないと、委託店側の納税額が増えてしまうからです。
委託先が個人経営の商店の場合は相談の余地がありますが、ある程度の規模の企業相手の場合にはインボイスを求められる可能性が高いでしょう。
普段の販売でも、購入者からインボイスを求められることもあるかもしれません。
1回限りの取引でインボイスを発行する必要性は少ないので、こういうことはほとんどないと思います。
購入者側でも制度をきちんと理解していないこともあるでしょうし、いざというときにきちんと説明できるよう、免税事業者でもインボイスについての知識を持っておいて損はないと思います。


事務作業と納税額はどうなる?


前置きが長くなりましたが、ここからが一番気になるところです。
課税事業者になった後に必要な事務作業と、支払わなければならない消費税についての解説です。
事務作業については、それほど面倒なことはありません。
委託販売を行っている業者にインボイス番号を伝えるだけでオーケーです。
最初に番号を伝えて、請求書にも記載しておくだけで、それ以上の事務作業は不要です。
消費税の金額決定に関しても、事務作業は不要です。
売上高が5000万円を超える企業ではかなり大変な事務作業が発生することになりそうなのですが、一般の個人作家なら簡易課税という制度が使えるため、仕入金額に関係なく消費税額を決めることができます
消費税の税率は、売上高1000万円未満のハンドメイド作家の場合、「令和8年9月までは売上高の約1.8%、それ以降は約2.7%の税率」となります。
100万円の売上があった場合、最大でおよそ2万7千円の消費税となります。
令和8年までは「2割特例」それ以降は「簡易課税」という制度が使えるためです。
簡易課税の2.7%という税率はハンドメイド作家の場合なので、業種によって税率は変わってきます。
注意点としては、2割特例から簡易課税には自動では切り替わらないので、令和8年の時点で簡易課税の申請を忘れないことが必要です。
場合によっては、あえて簡易課税を適用しない方が得になることもあり得ますが、基本的には簡易課税を活用するのが良いでしょう。


最後に


インボイス制度に関しての基本的な内容は以上のようになります。
SNS上では、インボイス制度に強行に反対している方もよく見かけます。
反対するのは構わないと思いますが、制度の中身をよく理解しないまま雰囲気で反対しているように見える人もいるので、まずはきちんと理解してほしいなとは思います。
私自身も支払う税金が増えるので嬉しくはないですが、「このままじゃやっていけない!」というようなことはないです。
世間で言われているような「個人事業主を狙い撃ちにしている!」というようなことはあまり感じていません。
むしろ、大企業の経理の方が、事務作業に関して大きな負担が発生しそうで、こちらの方が問題になるのではないかなと思っています。
個人作家の立場での不安点としては、「今後、消費税の税率が上がるかもしれない」ということでしょう。
その場合には免税事業者に戻るというような選択肢もあり得ると思いますが、不確定な仮定の話で心配しすぎるのもあまり意味はないと思います。
「簡易課税は将来廃止されるのではないか」という意見も見かけますが、この点についてはそれほど心配の必要はないと考えています。
簡易課税がなくなると、税務署側の負担が大変なことになり大混乱に陥ることになるでしょう。
その割には税収が大きく増えるわけでもないので、簡易課税を廃止する意味はないと思います。
今後、いろいろな問題点も出てくるとは思いますが、状況に応じて柔軟に対応していけるようにしたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?