ご近所との交流

日曜日なのに、雨だった。日中は妻が用事で出かけて、私は子ども2人とお留守番をした。ずっと家にいると息が詰まる。お兄ちゃんのリクエストでウルトラマンのテレビ番組を一緒に観たが、40歳にとっては楽しくない。そんなとき、1歳の娘が、「いぐ」といって靴を取り出してきた。いやいやあやちゃん、外は雨でね、、、といいかけたところで良いアイデアがひらめいた。一階の共用部分で遊ばせよう。

小さな我が家のマンションには、ささやかな一階のエントランスロビーがあり、4人だけ座れる小さなソファと小さなテーブルがある。テーブルには道端でつんできたような小さな花が飾ってある。管理組合の理事会以外で使われているところを見たことがない。とにかく殺風景すぎて、誰も足を止めたいとは思わない場所だ。

それでも子どもをここで遊ばせてみようと思ったのは、車などの心配をしなくても大丈夫で、雨に濡れる心配もない。すぐに自宅に戻れる気楽さもよい。そんな機能面とは別に、もうひとつ、マンションのほかの住人たちとのささやかな交流もしてみたかった。

マンションの人間関係が希薄なことは、すこし前から気になっていた。同じ世代の人は少なく、ご年配の方が多い。共通の話題があるわけでもないので、互いに無関心で接点の少ない関係になってしまっている。でも、子育てをしていると、コミュニティに無関心でいるのには限界がある。なにかあったときに周りが手を貸してくれるような関係はつくりたい。同じフロアのお年寄りたちも、独居の方もいたりして、小さな交流の接点を作っておくことは、互いにとってメリットがありそうな気がしていた。

親子3人で、1時間ほどロビーで過ごしてみた。出入りする大人たちの反応は面白かった。子どもをみて挨拶してくれる人も、見向きもせずに通り過ぎてしまう人もいるが、前者のほうが多い。幼児や赤ちゃんは、コミュニケーションの達人だ。存在だけで、大人を和ませてしまう。

お兄ちゃんは、外から帰っきた人たちのために、中から自動ドアを開けてあげるのが面白かったらしく、傘や荷物で手がふさがっている方たちから感謝されていた。妹もニコニコ笑って愛想を振りまいていた。あるおばあちゃんは、家からわざわざ戻ってきて、小さなお人形さんを娘にプレゼントしてくれた。

マンション暮らしだと、ご近所への意識はどうしても薄れてしまいがちだけど、ささやかなご近所づきあいの機会を子どもたちに持ってもらえて、有意義な時間だった。雨の日限定で、またやろうと思えた。もうすこしだけ、殺風景な空間が改善されるとなお嬉しいのだが。

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