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女性活躍社会

人材紹介会社に勤めていたころの話です。あるコンサルティング会社から女性の管理職の求人依頼がありました。1年以内に見つかった場合の手数料は通常30%のところ50%お支払いするという話でした。

経営コンサルタント会社は自分の会社をモデルとして話を進めるケースが頻繁にあります。その時、自社の女性管理職が10%では具合が悪いわけです。

女性の社会進出が叫ばれています。単純な就労人数で言えば、男女差は随分と小さくなりました。ところが管理職に限ってみるとまだまだ大きな差があります。欧米の平均値が40%なのに対し日本は10%に過ぎません。役員会議では女性の姿は珍しいというのが実情です。

性別、高齢者、障害者、マイノリティーなど、何かの理由で就学や就労が阻まれているケースはまだまだ存在します。実力以外の理由で阻む仕組みがあるのなら、いい社会とは言えません。それは是正しなければならないことですが問題はその方法です。

人材の良し悪しは点数だけでは測れません。そこで、採用担当者の裁量となるのですが、人間の判断には偏見がついて回ります。

偏見はいけないことだと言われますが、人の思考から偏見を取り除けるものでしょうか。判断をするには「ものの見方」が必要です。「ものの見方」とはある意味で「偏見」です。偏見を完全になくすためには一切の見方や見る角度をゼロにする必要があり、凡人には無理というものです。

そこで取られる施策が数字目標です。数字を掲げるのは効果があります。「公平な社会を」というだけでは変わりません。「女性管理職を10%から40%に」とすれば何をどうすべきかが具体的に見えてきます。

ただし新たな問題も発生します。女性を40%にしたのはいいのですが、増えた30%に実力があるかということです。

「げた」を履かせたのではないか。結果として実力のない管理職を増やしてしまったのではないか。ひいては逆の不公平を生みだしたのではないだろうか。逆不公平感。そうした不満が出てくるのは無理はないと思います。

しかし、改革には痛みが伴うものです。上司が女性であることが普通である社会。そこに日本はまだまだ至っていません。その理由は、風潮です。組織は男性がコントロールするもの、という意識が社会基盤にあるからです。それを変えようとすれば痛みが伴うのがむしろ当然でしょう。

まずは風潮を変えることです。実力はその先。女性の社会進出という風潮が出来上がれば、そこから実力競争が始まるはずです。数値設定の弊害が取り沙汰されますがスローガンだけでは何も進みません。「一億総活躍社会」「男女共同参画」そうした言葉は耳障りがいいのですが、言うだけ意味がありません。行動できる目標を立ててより良い社会を作っていきたいものです。


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