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スタートライン、上京したあの日あの時

新年度が始まった。3月末で社会人になってまるっと10年が経ち、今日から11年生だ。

10年というと小学生が成人になるくらいの期間で、学生の頃はとても長く感じていたけれど、仕事を始め慌ただしく過ごしていると、意識の外であれよあれよと時が経っていく。確かに入社式なんて随分前に感じるので長い間働いてるんだなという感覚はあるけど、10年といわれるともうそんなに経つのかとも思う。とはいえ、鏡を見るとちょっと(かなり?)深みが増した自分の顔に気づき、そっか、10年経ったんだな、と改めて実感するのである。

自分の10年間のキャリアでは、最初の4年半は日本で過ごし、後の5年半は海外で過ごしている。とうとう海外勤務の方が長くなってしまった。

日本にいた頃は1年間の営業実習に始まり、2年目にはPSI管理の仕事を経験し、3年目からは新商品を立ち上げる部署に配属された。その後オランダに赴任となってSCMの仕事を経験し、3年を経てイギリスで販売会社の業績管理の仕事をしている。我ながら色々な仕事を経験させてもらっているなと思う。逆にいうと一貫性がなく専門性に欠けるキャリアを歩んでいるのだが、色々なバックグラウンドを基盤に業績管理、経営企画、事業企画といった分野で自分の価値を発揮していくのが今後の目標だ。

タイトルに「スタートライン」とつけてみたのはNoteからのお題によるものだけど、自分のスタートラインはどこかというと、関西の大学を卒業して東京の寮に入ったあの日だと思う。今思えばあのとき自分は学生であった過去と決別して、新しい世界に入っていったのだなと。ずっと関西弁の地域で育ってきたので、当時は電車の中で女子高生が話す標準語の会話ですら違和感を持って感じていた。そして、あの頃は働くとは何か、ということも全くイメージ出来ていなかった。就活の志望動機の常套句は「人々の笑顔をつくるような仕事がしたい。」。間違ってはいないけど、働くというのはそんなシンプルなワードでは表現できないなと10年経って思う。

業種柄もあるかもしれないけど、実際に仕事をしてて、人々の笑顔を連想することなんて一切ない。それでも自分がなぜ働いているのかというと、

1. 生活維持
2. 自己実現
3. 社会貢献

の3つだろうか。

1とはつまり、お金をもらうためである。元も子もない話だが、給料をもらえないと生活が出来ない。家族も養えない。就活の志望動機で「給料が高いからです」なんて口が裂けても言えないんだろうけど、実際どれくらいお金をもらえるかというのはライフスタイルを決める上で極めて重要だ。自分の年収は相対的に見てどれくらいの水準にあって、理想とするライフスタイルを維持するためにはどれくらい稼がないといけないのか、というのは常に意識する方がいい。若い頃は今一ピンと来なかったけど、結婚して更にそれを感じるようになった。

2についてはちょっとバイアスもあるかもしれないけど、自分にとって仕事は「なりたい自分」を実現させるものでもあり、「自分の努力を組織に還元して自己を満足させる」ものでもある。要は仕事頑張ってみんなから褒めてもらえたり昇進したり、自分に課した課題が達成できたりすると楽しくね?ということだ。自分の場合、会社のために身を捧げているという感覚はあまりなくて、自分のために最大限のパフォーマンスを出せるように頑張っている。だから楽しい仕事は喜んで夜遅くまでやるけど、これは自分のためにならないと思う仕事は6割くらいの力でこなしている。この「自分のために仕事をしてる」という感覚は意外に大事だと思ってて、常に判断軸を自分に置いておくと、例えば転職のタイミングも適切に見極められるだろうし、理不尽な上司にも耐性がつくと思う。サラリーマンだってもう少し自己中になっていいのかと。

最後に3について。結局仕事って、それがどのような仕事であっても最終的には社会につながっていく。企業というのは社会のパーツで、売上はパーツの大きさだったり、重要度であったりする。そしてそこで働く我々はいわば子部品、よく言うところの歯車である。歯車って聞くとネガティヴな印象を持つ人が多いと思うけど、メーカーで働く自分から言わせると、歯車がちゃんとしてないと製品不良ばかり出て売上あがったり、お客さんにだって大迷惑をかけてしまう。歯車があるからこそ機械は動くし、歯車があるからこそ社会も回る。我々誰かが欠けたら社会が回らなくなるわけではないけれど、全てのパーツが機械を支えているように、我々の活動は全て社会につながっている。そうして自分の付加価値を社会に還元して、個々の貢献が循環して築かれていく、それがこの社会なのではないだろうか。今、自分はこの任務を全うするために働いている。イーロン・マスクやジェフ・ベゾスみたいにどデカイキーパーツにはなれないけど、自分に誇りを持ちながら楽しく仕事をしている。

最近Twitter界隈で新社会人へのアドバイスが流行ってて、自分も何かアドバイスできることってあるのかなと考えてみたけど、きっと何かアドバイスしたところで実際に経験してみないとピンと来ない人がほとんどだと思う。だから、新社会人の方々は存分に今を楽しめばいいと思う。目標がある人はそこに向かえばいいし、やりたいことがない人はそれを模索しながら淡々と今の職務をこなしていけばいいと思う。自分は後者だったけど、10年経ってようやく向かうべき方向性みたいなのが見え始めたところだ。

気がつけば、スタートラインからは随分と先に進んでしまった。残念ながら今まで進んできた道はすでに封鎖しれてしまっていて、決して戻れはしない。でもそれでいい。時に昔を振り返って感傷に浸りながら、自信を持って今を生きていく。今いる道が地味なのなら、ちょっとずつ装飾して彩りをつけていく。進むべき道が間違っていたら、また新しいスタートラインをひいて再出発する。迷ってしまった時は、いったん立ち止まって、地図をみながら仲間と相談してみる。人によっては、多少不満があっても、安定のために現状に甘んじてその道を進み続けるのもいいだろう。そこに正解なんてなくて、一人一人が自分の価値観に従って正しいと思う方向に進めばいい。最終的にそれらは社会という大きな枠組みの中で交わって、他の人を支えていくはずだから。

以上、新年度によせて。今年度も頑張ろう。

P.S. ヘッダーの写真は大学時代に頻繁に通っていた駅。自分の人生の転換期という意味では、ここがスタート地点でもある。

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