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ロシア周辺各国、過去20年の軍事費累計

 このところ世間が騒がしいけれど、軍事も国際政治も素人な私には、せいぜい数字しか見れない。
 ストックホルム国際平和研究所の軍事費データベースから、ロシア周辺各国の過去20年の軍事費累計額を見比べてみることにする。

ロシア周辺各国、過去20年の軍事費累計

グラフ1:軍事費20年累計の推移(ロシア周辺各国)

 軍事的なB/Sの大きさと言うか、「軍事資産」的な金額の推移を見たかったので、単年の軍事費ではなく、過去20年の軍事費を累計した額の推移を見ることにした。縦軸の単位は10億ドル。グラフ上の「1」で、小さめの軍艦ひとつ買えるくらいの金額になる。
 ロシアの軍事費の積み増し具合は圧倒的で、他国が目立たなくなっているが、周辺国も右肩上がりのようだ。特にウクライナは、この10年で「軍事資産」が約2倍になっている。

世界各国(除く米国)、過去20年の軍事費累計

グラフ2:軍事費20年累計の推移(世界各国 除く米国)

 周辺国を同じグラフに当てはめると(米国を除いた件は後述する)、今度は中国の積み増し具合が他を圧倒している。ロシアの積み増し具合も相当のもので、日仏を抜き、英国に迫る勢いである。

世界各国(含む米国)、過去20年の軍事費累計

グラフ3:軍事費20年累計の推移(世界各国)

 米国を含むと、米国が圧倒してしまう。あまりに差がありすぎるので、グラフではトップランカーだけに絞り込んだ。冗談みたいな差だ。(よくも往時の日本は、こんな国にケンカを売ったものだと思う。)

…ただ、この数字には罠がある。国が違うと、1ドルの価値も変わる。特にロシアについては、単純にドルベースで比較してしまうと、過小評価になってしまいかねない。

補足:ビックマック指数

 2022年2月時点、マクドナルドのビックマックは390円である。本国の米国では、同じビックマックが5.81ドルで売られている。ビックマックを基準に計算するなら、1ドルは(390円÷5.81ドル=)67円12銭で取引されなければならないはずである。ところが、現実の通貨レートは現在115円38銭である。
 この差について、いろんな考え方があり得るが、この場ではビックマックを信じて、円がドルに対して過小評価されている、つまり「日本の資産の金銭的な価値は本来もっと高い」と考えることにする。具体的な数字にすると、ドルで評価した日本の資産は、(115円38銭×5.81ドル÷390円=)1.71倍にすると、本来の価値に近いものになる。
 ふざけてきこえるかもしれないけれど、この「ビックマック指標」は、米エコノミスト誌が30年以上にわたって分析対象にしてきた経済指標である。最新の数値は今回、こちらから取得した。

ビックマック指数を加味した、過去20年の軍事費累計

 「ビックマック指数」をあてはめると(いまやロシアにだってマクドナルドがあるのだ、)ドルで計算したロシアの資産の、本来の価値は3.33倍になる。同じ調子で、各国のビックマック指数を、さきほどの20年間の軍事費累計に乗算してグラフ化してみる。

グラフ1b:軍事費20年累計の推移(ロシア周辺各国)
ビックマック指数による購買力平価を加味

 ひとつめのグラフには、あまり印象に変わりはない。ロシアが周辺国を圧倒している。ウクライナが、少し目立って見えるようになったかもしれない。(ビックマック指数を取れなかった国については、グラフから割愛した。)

グラフ2b:軍事費20年累計の推移(世界各国 除く米国)
ビックマック指数による購買力平価を加味

 ふたつめのグラフは、だいぶん印象が変わって見える。近年で中国に追い抜かれはしたが、ロシアは相変わらず世界3位の軍事国家で、欧州の個別国を大きく上回る存在感を示している。(この計算をすると、米中露についで日本が世界4位にランクアップしてしまうのは、ちょっと意外だった。)

グラフ3b:軍事費20年累計の推移(世界各国)
ビックマック指数による購買力平価を加味

 3つめのグラフ、相変わらずトップをかっ飛ばしている米国がいるが、ロシアの存在感は単純なドルベースよりも上がって見える。
 おそらくはこの数字感が、現在の各国の軍事力として、より現実に近いものだと考えてよいものと思う。