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マガジン

  • 禅語の前後

    禅の言葉をテーマに何か書いてみよう、という試み。

  • 百年前のパンデミックと比べてみた

  • ぼくたちのささやかな普請道楽

    中古マンションに買い換えてフルリノベーションの最中にいる、ぼくたちのささやかな普請道楽について、あれこれ悩んだことをここに残しておくのも、何かのお役に立つとよいなと思うています。

最近の記事

般若心経(はんにゃしんきょう)

 こんなことを書くと罰当たりなのかもしれないけれども、般若心経は冗長的だと前から感じていた。  この拙稿では、般若心経のコアな部分に焦点を当てて読み込んでみたいと思う。  般若心経は、「西遊記」でお馴染み玄奘三蔵が、天竺から持ち帰って翻訳したお経である。400字詰め原稿用紙いちまいに納まる分量だけど、ポイントになるフレーズはさらにコンパクトで、たった四文字。  「色即是空」。  すべては空っぽだ、というフレーズである。 ざっくり全体 般若心経の流れを、ざっくり説明すると、

    • 懺悔文(さんげもん)

       うちの実家の法事で聞いたのが、みょうに格好よくて耳に残ったので、調べてみた。御住さんの声が良かったのかもしれない。  一般に「懺悔文」と呼ばれるこの四節は、「華厳経」という長いお経、弘法大師空海と同世代の中国僧が翻訳した四十巻版のなかに記されている一部分からの抜粋にあたる。  一切我今階懺悔、ようするには「私のすべての悪行をただ今このときに悔い改めます」という宣言、なのだけど、この「すべて」の範囲は実のところ、とてつもなく広い。  華厳経は時空を超えた全ての仏、過去・現

      • 映画感想つぶやき:君たちはどう生きるか

        宮崎駿の映画「君たちはどう生きるか」を観てきた。 映画の封切りからまだ間もないので、ネタバレ回避のために、呟きたいことをここにまとめておく。 戦争のこと ・戦争については、うすぼんやりとしか描写されない。東京からの疎開・出征してゆく中年男性・軍用機の風防・食事時に語られるサイパンの陥落、それらはいずれも背景でしかなく、主題とはならない。潔い。それはもう十年前にやったから、ということなんだろうか。 ・インコ大王の大叔父への憤り、帝国に対する裏切り云々のくだりは、「日本のい

        • 村上春樹の様々な「街」

          (23-05-12:阿美寮について末尾に少し追記) 村上春樹の新刊「街とその不確かな壁」は、めずらしく後書きが付いてて、その中にこんな一節があった。 村上春樹にとっての、この「手を変え品を変え」というのには、思い当たる節がいくつかあったので、メモ書き代わりにここに残しておく。 特に結論めいたものは、ここにはない。相応のネタバレは含んでいる。  村上春樹の小説群には、現実世界から異界に行って戻ってくる、入れ子の構造が使われることがある。  例えば「世界の終わりとハードボ

        般若心経(はんにゃしんきょう)

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        • 禅語の前後
          47本
        • 百年前のパンデミックと比べてみた
          8本
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          9本

        記事

          禅語の前後:一華開五葉(いちげ ごように ひらく)

           花びらの数が5枚の花は、統計的に多いのだという。  なぜ5枚なのか、世の中にはいろんな説があるようだ。黄金比。フィボナッチ数列。凹型の空間を効率よく埋める比率。全方位から虫を集めるために最適な形状。  僕たち人間の指も5本だ。日曜日の朝にテレビでやってる、なんとか戦隊なにレンジャーとかも、たいてい5人組のようだ。何かしら5という数字には、自然と使われる丁度よさがあるのだろう。  禅宗の初代達磨が、二代目慧可に伝えたという言葉にも、5が出てくる。  インドからこの中国の地

          禅語の前後:一華開五葉(いちげ ごように ひらく)

          AIについてChatGPTに聞いてみた

           夜中にChatGPTに「なにかSFを話して」と送ってみたら、人類とAIの未来に関する面白い会話ができたので、ここに記録しておくことにする。 (こういうときは英語のほうが、この子は聞き分けが良いように思える。) ※このSFは「めでたしめでたし」で終わる。この記事の本筋からは外れるので、途中経過は端折る。 ※この架空のAI「ノヴァ」のことを、ぼくは”She”(彼女)と言ったが、ChatGPTは”It”(それ)と言い換えている。AIは道具に過ぎないと、この子は主張しているか

          AIについてChatGPTに聞いてみた

          ChatGPTに業務システム移行について聞いてみたメモ

           巷で流行りのChatGPTについて、仕事につかえるかどうか試してみた。 使えるところ・使えないところがありそう。  一般論のやりとりでは問題ない。専門的なコーディングに関しては相当の技術力を誇る。けど、指示の仕方が悪いと、どんどん変な回答をしてくる。今のところはまだ、指示出しという観点で、人間さまのエンジニアの仕事はたっぷり残っていそうな気はする。 ※ヘッダ画像は、「基幹業務システムの移行作業のことをAIに聞いてみた」というお題で、AI(DALL-E)に作ってもらった。

          ChatGPTに業務システム移行について聞いてみたメモ

          禅語の前後:無影樹下合同船(むようじゅ げの ごうどうせん)

           もう10年以上も前の話、独りでパリに行ったことがあった。  セーヌ川の観光船で乗り合わせた、韓国から来た団体旅行中のおばさんたちのひとりに、英語で話しかけられた。当時の僕はまだ独身で、2年に1回くらいは独りで海外に行っていた。そんな話を僕がすると、あなた人生を楽しんでいるわねぇ、と彼女は笑って言った。  その彼女との会話は、なぜだか不思議に、僕の中に消えずに残っている。船から見たセーヌ川の景色のほうは、まるで憶えていないのに。  当時の僕には意味がよく分からなかったけれ

          禅語の前後:無影樹下合同船(むようじゅ げの ごうどうせん)

          映画「すずめの戸締まり」を観てきた話

          縁があって何度か、津波の後片付けのお手伝いをしたことがある。2011年の秋から、2012年の夏ごろまで。 いろんな景色を見て、いろんな話を聞いた。 この家をきれいにしてまた住みたい、けど一階が津波で無茶苦茶になってしまった、あの日以来うちの子が怖がって家に帰ろうとしない、だから、もうピカピカにきれいにして、家族でまたこの家に帰りたい。 家主さんの話を聞いて、みんな総出でスコップとかほうきとかブラシとかてみとか台車とか高圧洗浄機とか、防刃手袋つけた両手だとかで、泥や瓦礫を片付

          映画「すずめの戸締まり」を観てきた話

          禅語の前後:祖仏共殺(そふつ ともに ころす)

           僕の四国の実家には、居間の仏壇のなかに大柄な回出位牌があって、戒名や没年を書いた小さな木札が二十枚くらい収まっている。いちど調べてみたら、いちばん古い年の木札は天正六年となっていた。これは戦国時代、利休さんと同年代になる。我らがご先祖さまは、そのころに四国の山奥にまで落ちのびてきたようだ。  朝夕まいにち、子椀ふたつの御飯と、湯呑ひとつの茶とをお供えする。誰かから土産にお菓子などをもらったら、まずはとりあえず箱ごと仏壇のご先祖様にあげる。ばあちゃんは毎朝、般若心経をひととお

          禅語の前後:祖仏共殺(そふつ ともに ころす)

          百年前のパンデミックと比べてみた(2022年07月末時点)

           去年の今頃から比べてみると、世間はより、この疫病に飽いたように思える。  世界人口の6割がワクチン接種を完了し、2022年2月をピークに感染者数は世界的に減少傾向にある。ワクチンの効果もあって致死率は明らかに低下しているが、この一年間だけでも全世界で100万人が命を失った。ワクチンが効きづらい亜種が隆盛し、これまで亜種の感染歴が低かった日本や台湾では過去にない感染拡大が起きている。  この記事では、パンデミック被害の相対化を目標として、100年前の「スペインかぜ」と、現代

          百年前のパンデミックと比べてみた(2022年07月末時点)

          禅語の前後:放下着(ほうげじゃく)

           村上春樹の短編にこんな一節がある。「夢みたいにぴったりとくる万年筆を作ってくれる」という店に行ってみた。店主に服を脱げと言われる。シャツを脱ぎ、ズボンを脱ごうとしたところで、いや上だけでいい、と止められる。店主は客ひとりひとりに対して、シャツを脱いだ本人の背中に手を当てて背骨のかたちを確かめてから、それにあった万年筆を作るのだ、という。  ところで、放下着という禅語には、べつに「ズボンを脱げ」というような意味はない。  ここで出てくる「着」には「着ているもの」という意味合

          禅語の前後:放下着(ほうげじゃく)

          祖父の右手の二本の指のこと

           僕の祖父は傷痍軍人で、右手の二本の指、親指と人差指とが無かった。  なんでじいちゃん指ないの? と尋ねる幼い僕に、彼は笑って、こんな与太話をしてくれたものだった。「覚えていないのかい、わしが寝ている間に、この指はお前たちに食べられちゃったんだよ。まだお前たちが、今よりもっと、ずうっと小さかったときにな。」  それは彼のお気に入りの話らしかった。とても楽しそうに、その話をしてくれたものだった。  あるいは僕が子どもの無邪気さで、その与太話を大笑いしながら聞いて、しかも何度

          祖父の右手の二本の指のこと

          禅語の前後:向南見北斗(みなみに むかって ほくとを みる)

           北斗七星は目立つ星座なので、古代からいろいろと言い伝えが多い。中国などでは昔から神さま扱いされていて、例えば三国志演義で赤壁の戦いを前にした諸葛亮孔明が、祭壇を設けて風が吹くように祈る、その祈っている相手が、この北斗七星なんだそうだ。  その名の通り、この星座は夜空の北に見える。  柄杓に例えられるその星座の、一番目と二番目の星を繋いだ線を先に延ばせば、北極星に当たる。とうぜんながら、南を向いては北斗七星は見えない。 「されど禅学者は」というくだりが、実にパンクロックし

          禅語の前後:向南見北斗(みなみに むかって ほくとを みる)

          ロシア周辺各国、過去20年の軍事費累計

           このところ世間が騒がしいけれど、軍事も国際政治も素人な私には、せいぜい数字しか見れない。  ストックホルム国際平和研究所の軍事費データベースから、ロシア周辺各国の過去20年の軍事費累計額を見比べてみることにする。 ロシア周辺各国、過去20年の軍事費累計  軍事的なB/Sの大きさと言うか、「軍事資産」的な金額の推移を見たかったので、単年の軍事費ではなく、過去20年の軍事費を累計した額の推移を見ることにした。縦軸の単位は10億ドル。グラフ上の「1」で、小さめの軍艦ひとつ買え

          ロシア周辺各国、過去20年の軍事費累計

          日本帝国陸軍 山砲兵第29連隊

           表紙写真はWikipedia、ニューブリテン島(ニューギニアの戦い)で破壊され、アメリカ海兵隊によって検分される日本陸軍の山砲。 山砲兵「山砲」は大砲の一種。分解すれば馬や人でも運ぶことができるサイズの榴弾砲。第二次世界大戦ごろまでは、特に山がちな日本などでは需要の多い兵器だった。「山砲兵」は、この兵器専門の兵種になる。  ヘリコプターなど山岳地への運搬手段が発展した現代では、この兵器も兵種も、すたれてしまっているようだ。 山砲兵第29連隊 僕の父方の祖父の軍歴で、彼が

          日本帝国陸軍 山砲兵第29連隊