見出し画像

【直樹の日常.28E】船乗りの気持ち

ナスを6本。
炒める前はその大きさで、置き場所がなかった。
-しまった、買いすぎたか。
もともと作業台は広くはなく、
A5サイズのまな板を2枚置くのがやっとだが
火を入れるとその大きさは
しぼんで楽々スペースに収まる。
なるほど、体積のほとんどが水分なのだと解り、
レシピ本を叩きつけずに済んだ。
ナスとホタテの南蛮漬けサラダを作りたい。
直樹は酸っぱいものが、大の好物なのだ。

水曜日に3~4日分の食べ物を
作りおきするようにしていて、
今日買い物に出ると、3000円くらいかかった。
食費をできるだけ一日1000円以内に収めたいのは、
間食が別にお金がかかるからで、ギリギリの計算。
最近は涼しくなってきたので、間食も
アイスから果物にシフトしてきている。
果物はお金が高いうえに、賞味期限があり
その上当たりはずれがある、
何ともリスキーな食べ物だと思う。

食べ物を選ぶとき、
直樹は自分の舌をリベラルだと感じている。
縄張りの外に行かない限り、
一定の満足は保証されるが、それではつまらない。
もっとおいしいものがあるはずだ。

昔の船乗りも、同じことを考えたに違いない。
海は不気味な存在だ。底が透けて見えるくらいきれいな
ところならともかく、水深が深くなり色も濃くなって
底が見えなくなると、途端に何がいるかわからないという
得体のしれない不安に襲われる。
さらにエンジンがなく風向き次第でどこにいくかわからない、
また、壊血病の存在すら知らず、
長い航海では船乗りがバタバタと死んでいく。
そんな大きなリスクを冒してまで
なぜ海に出たのか不思議でならないが、
案外「もっと美味しいもの、あるんじゃないか」
という単純な動機だったようにも思える。

この記事が参加している募集

今日やったこと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?