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【直樹の日常.24U】寝なくてもええんです

目が覚める。
壁にかかっている時計に目をやるも、
今何時かわからない。
そのはずで、針は11時半を指していた。
なぜその時間を針は指しているのか、
理解できなかったのだ。
今まで何百、何千と見てきた針の位置とは違う。
9時のアラームで起きたのではないし、
外の明るさから、
せいぜい8時か7時くらいだろうと思いこんでいた。
何か起きたのか?
いや、何も起きてはいない。
ただ、昨日なかなか寝つけず不安を感じたので
テレビをつけっぱなしにしていたら、寝落ちしていた。
違う世界に生まれ落ちたような不思議な寝起きだった。

何年も、予定のない日も同じ時間に起きている。
一旦体内時計が狂うと、戻すのが厄介だからだ。
睡眠障害を抱えているものにとっては、
眠ることに対して、非常に敏感になる。
むろん、睡眠日誌もつけている。
テレビをつけっぱなしにするのは、
入眠困難時の不安を、テレビの音でかき消そうという試みだ。
健常者でもやっている人はいるんじゃないかと思うが、
これが結構使えるのだ。

テレビをつけっぱなすと言っても、
番組を流し続けたのではやがてその音で目が覚める。
中途覚醒は非常に不快だ。
しかもいったん目が覚めると、その後眠れない。
だからタイマーが必要になってくる。
しかし、このタイマーも厄介で、
寝れずに再設定を繰り返すこともある。
時間を区切ってしまうと、緊張感が増すようだ。
なので、録画している番組を再生する。
30分ほどで番組が終われば、
画面は録画番組一覧に戻って音声は途切れる。
なるべく面白かったトーク番組が良いのは、
いい感じに緊張がほぐれるからであろう。
直樹はそういった番組をいくつも、ストックしている。

主治医の中村仁一先生は言う。
「年寄りが眠れんから眠剤をくれいいますけど、
一日二日寝なくてもええんです。
もうすぐしたらずぅーっと目が覚めんようになりますから」

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