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読書好き。 読んだ本の紹介や感想を書きます。 たまにMVや映画の感想を書くことがありま…

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読書好き。 読んだ本の紹介や感想を書きます。 たまにMVや映画の感想を書くことがあります。

マガジン

  • 乃木坂46

    乃木坂46のMVや曲の感想です

  • 雑誌『ゲンロン』

    雑誌『ゲンロン』に掲載されている論文や小説の感想です

  • ロシアとウクライナ

    ウクライナ戦争を考えるために、ロシアとウクライナに関する本を読んで自分の考えをまとめていきます。

  • 岩井俊二

    岩井俊二監督作品についての感想です

  • 東浩紀

    東浩紀の本の感想です

最近の記事

葛藤とは出会いのことだったー乃木坂46『考えないようにする』について考えてみた

2023年8月18日に乃木坂46「考えないようにする」のMVが公開された。 とても感動したので、忘れないように感じたことを書き残しておこうと思う。 歌詞MVを観る前にまず歌詞を確認する。 葉脈が美しい 植物は会話ができる まず、この歌は葉の歌であることが宣言される。 しかしシーンは唐突に人間界に切り替わる。 友人ふたりと過ごしているパーフェクトワールド。 その友人たちが付き合っていることを知って世界が崩壊しはじめる。 でも世界を守るために、好きにならないと決心する。

    • 出来事から発せられる複数の波ーアレクサンドル・エトキント「ハードとソフト」を読んでみた

      ここのところロシア関連文献を読んでいますが、今回はロシア文化史家アレクサンドル・エトキントの「ハードとソフト」(平松潤奈訳 『ゲンロン7』 2017年 収録)を読んでみたいと思います。これは大量虐殺の記憶についての論考です。世界的に健忘症が進んでいる今、たいへんアクチュアルな議論になっているのではないかと思います。 ハードとソフトそもそもテキストがそれ自体ハードとソフトの相互依存関係でできています。目にみえるイメージとしての文字と目にみえない意味によって成立しています。話し

      • 銀河帝国の誕生ーマルレーヌ・ラリュエル「運命としての空間ー地理と宇宙をとおしたロシア帝国の正当化」を読んでみた

        ウクライナ戦争、ロシア現代思想関連文献を読みつづけています。 今回はフランス人歴史家マルレーヌ・ラリュエルの2013年の論文「運命としての空間ー地理と宇宙をとおしたロシア帝国の正当化」(平松潤奈訳 『ゲンロン7』2017年に収録)を読んでみます。 ラリュエルはナショナリスト的言説の構築物たる帝国(ユーラシア主義)と、空間(地理と宇宙)の関係を明らかにすることをめざします。 そのために三つの構築物(ナラティブ)を分析します。 1)古典的ユーラシア主義 1920年代〜30年代

        • ふたつのタタールスタンー櫻間瑞希「国境を超えた結束と分断の狭間で タタール世界から見るロシア」を読んでみた

          ここのところロシア関連文献(政治、思想、サブカル)ばかり読んでいます。今回はロシアの周縁?に当たるタタールスタン共和国からウクライナ戦争を考える論考「国境を超えた結束と分断の狭間で タタール世界から見るロシア」(櫻間瑞希 2023年 『ゲンロン14』に収録)を読みたいと思います。 地域と民族、ふたつのタタールスタンロシア連邦は83の連邦構成主体から構成されていて、タタールスタン共和国はそのひとつです。タタールスタン共和国はタタール人の民族共和国。ロシアにおいてタタール人は民

        葛藤とは出会いのことだったー乃木坂46『考えないようにする』について考えてみた

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        • 銀河帝国の誕生ーマルレーヌ・ラリュエル「運命としての空間ー地理と宇宙をとおしたロシア帝国の正当化」を読んでみた

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        記事

          ウクライナ戦争下でのロシアのラッパーたちー松下隆志「ロシアをレペゼンするのは誰か」を読んでみた

          ワグネルの乱には考えさせられました。武力によって政権を打倒した場合、武力を使って統治していくことになるでしょうから、市民にとって事態はあまりかわらないのかもしれない、いやより不安定になるでしょうから、事態は悪化するかもしれないと思いました。ロシアのような状況になってしまうと、最悪の状態から抜け出すのは至難の業だと改めて思いました。 情報が出揃っていないワグネルの乱の分析については専門家にまかして、私の方は引き続き歴史や文化を学ぼうと思います。 ここのところ、ウクライナ戦争関

          ウクライナ戦争下でのロシアのラッパーたちー松下隆志「ロシアをレペゼンするのは誰か」を読んでみた

          開戦前にバルスを仕込むー上田洋子「ネットとストリートの戦争と平和」を読んでみた

          ここのところ小泉悠のウクライナ戦争関連書や雑誌『ゲンロン』のバックナンバーに掲載されているウクライナ戦争に関する座談会やロシア現代思想関連論文を読んでおりましたが、一段落したので、最新刊の『ゲンロン14』(2023年3月)を読みはじめました。魅力的な鼎談や論考が多々ありますが、今回もウクライナ戦争に関する論文があるので、まずはこれから読みたいと思います。 今回読むのはロシア文学者でゲンロン代表の上田洋子の論考「ネットとストリートの戦争と平和 ロシアの反戦アクティヴィズムにつ

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          分業は疎外も連帯もうむーボリス・グロイス「アメリカの外ではスーパーマンしか理解されない」を読んでみた

          ボリス・グロイスを読みます。前回は論文でしたが、今回はインタビューです。 タイトルは「アメリカの外ではスーパーマンしか理解されない」。上田洋子訳で雑誌『ゲンロン1』(2015年)に掲載されています。 グローバリズム崩壊インタビュアーはロシアの状況を問い、グロイスは答えます。 世界中(ロシア含む)で同じ事態が起こっている。 冷戦が生んだグローバリズムは崩壊しようとしている。トルコではオスマン語が再導入され、中国では孔子に熱狂し、イスラム世界では預言者時代のイスラムへ回帰してい

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          平等は不死の夢をみるーボリス・グロイス「ロシア宇宙主義」を読んでみた

          ロシア現代思想関連書を読み続けています。 ナショナリストのドゥーギン(プーチンの脳と呼ばれている)、コミュニストのマグーンを読んだので、今回はリベラリストのボリス・グロイスを読みたいと思います。読むのは、「ロシア宇宙主義ー不死の生政治」(上田洋子訳 雑誌『ゲンロン2』2016年に収録)です。 ロシア宇宙主義ここでの宇宙とは調和がとれ、秩序がある状態であるコスモスを主に指していますが、宇宙旅行の宇宙の意味も含んでいるようです。そしてロシア宇宙主義とは、スティーブ・ジョブズなど

          平等は不死の夢をみるーボリス・グロイス「ロシア宇宙主義」を読んでみた

          連れてきたよファンタァジェンー岩井俊二『8日で死んだ怪獣の12日の物語』を観てみた※ネタバレあり

          YouTubeの岩井俊二映画祭チャンネルがアツい。 『四月物語』『花とアリス』に続いて、『8日で死んだ怪獣の12日の物語-劇場版-』(岩井俊二監督 2020年)が無料配信されました。 (無料配信は昨日5月28日まで) 滑りこみでしたが、観ることができました。 ざっくりとした感想は以下の通り。 まずは、なんだか不思議な気持ちになりました。 冒頭からカメラが上空2〜3メールのあたりをゆっくり浮遊していて、なんだかふわふわします。 そして演技力と演出力の賜物だと思うのですが、

          連れてきたよファンタァジェンー岩井俊二『8日で死んだ怪獣の12日の物語』を観てみた※ネタバレあり

          コミュニズムは訂正可能性のほうへーアルテミー・マグーン「コミュニズムにおける否定性」を読んでみた

          ロシア現代思想関連論文を読んでいます。 前回は「プーチンの脳」と言われているナショナリスト、アレクサンドル・ドゥーギンの論文を読みました。↓ 今回はコミュニスト、アルテミー・マグーンの「コミュニズムにおける否定性ー疎外のパラドクス」(八木君人訳 雑誌『ゲンロン6』 2017年 に収録)を読みたいと思います。 コミュニズムとは「コミュニズム」が現在の意味で使われるようになったのは、フランス革命期。当時の主流派であるジャコバン派のスローガンは自由、平等、友愛。「コミュニズム」

          コミュニズムは訂正可能性のほうへーアルテミー・マグーン「コミュニズムにおける否定性」を読んでみた

          Wセンターの間には齋藤飛鳥と視聴者が座るー乃木坂46『人は夢を二度見る』MVについて考えてみた

          乃木坂46が3月にリリースした『人は夢を二度見る』。 三期生〜五期生で編成されているのですが、5月18日の齋藤飛鳥卒業コンサートで、一期生の齋藤は久保史緒里と山下美月のWセンターの間に立ったのでした。齋藤、久保、山下のトリプルセンターになったともいえるし、齋藤が真のセンターになったともいえますが、このフォーメーションのおかげで、傑作『人は夢を二度見る』のMVの深みがさらに増したので、それについて書きたいと思います。 『人は夢を二度見る』のMV↓ 空席には誰が座るのかMVに

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          「プーチンの脳」の哲学ーアレクサンドル・ドゥーギン「第四の政治理論の構築に向けて」を読んでみた

          ここのところウクライナ戦争、ロシア思想関連文献を読んでおりますが、今回はいよいよ「プーチンの脳」と呼ばれているアレクサンドル・ドゥーギンの論文です。 読んだのは「第四の政治理論の構築にむけて」(原文 2014年、訳者 乗松享平、2017年 雑誌『ゲンロン6』収録)。 第四の政治理論ドゥーギンは四つの政治理論があるといいます。第一がリベラリズム。第二、コミュニズム、第三、ファシズム、そして第四、非リベラルな保守主義。 まずリベラリズム。この説明が興味深い。 これ東浩紀が

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          株価チャートは群集心理チャートー窪田剛『株の学校』を読んでみた

          金利は増えないのに物価は上昇しつづけている。それなのに預金し続けている私は、もしかしたらアホなんじゃないかと思い、投資について勉強してみようと思ったのでした。 まず読んだのは漫画『インベスターZ』。 その感想↓ この中でもっとも印象に残ったのは、投資とトレードはまったく別のゲーム(構造)であるということでした。投資とは企業の成長に対して資金を投じること。いっぽうトレードとは市場参加者の心理を読み、過去のパターンを参考に売買を判断していくことです。そして私はトレードの方によ

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          石油と独裁ー乗松享平「敗者の(ポスト)モダン」を読んでみた

          ウクライナ戦争の開戦の動機を調べていたら、いつの間にかロシア現代思想に興味がわいてきました。動機と思想は直結していると思うからです。 まずはプーチンの脳と呼ばれるドゥーギンの論文を読みたいと思うのですが、その前に、ロシア思想研究者である乗松享平の論文「敗者の(ポスト)モダン」(2017年 雑誌『ゲンロン6』に収録)を読んでロシア思想を広く整理しておくことにしました。 日本の敗戦浅田彰は早くも1987年には、日本のバブル景気と一体化したポストモダニズムの流行について、「子供

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          嘘が現実を拡げるー岩井俊二監督『花とアリス』を観てみた※ネタバレあり

          youtubeの岩井俊二映画祭チャンネル、『四月物語』につづいて、『花とアリス』を無料配信。 さっそく観ましたよ。 超あらすじハナとアリスと記憶喪失かもしれない少年の物語。 少年をストーキングするハナ。ハナがストーキング中、シャッターに頭をぶつけて気を失った少年。その少年に、自分は少年の恋人である、覚えていないのは記憶喪失だからだとムチャクチャな嘘をつくハナ。それをなんとなく真に受ける少年。 その嘘がバレそうになった時、さらに嘘をつくハナ。ハナの親友アリスを、少年の元カ

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          アメリカはロシアだー座談会「ロシア思想を再導入する」を読んでみた

          ウクライナ戦争の開戦の動機を探っていたら、だんだんロシア現代思想に興味が湧いてきました。 今回は座談会「ロシア思想を再導入するーバフチン、大衆、ソボールノスチ」(雑誌『ゲンロン6』2017年に収録)を読んでみました。 参加者は貝澤哉、乗松享平(ロシア文学、思想研究者)、畠山宗明(映画理論研究者)、東浩紀(思想家、ゲンロン編集長)の4人。 問題設定まずロシアと日本のざっくりとした共通点が確認されます。 両国とも近代に遅れて参入し、近代の超克をめざしました。ロシアでも日本の

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