拡張型心筋症と診断されてから一年以上が経過した。外科的アプローチ、内科的アプローチや生活改善によって状況はかなり改善した。相変わらず摂生の毎日だが、仕事含む日常においては病気を意識する機会が激減した。

すこぶる調子が良い。不整脈もほぼ出ていない。

とはいえ、「治りました！」ではないのがこの病気の困ったところ。今は良くてもいずれまた増悪し、徐々にQoLが下がっていく。心臓病の恐ろしさは予後不良にある。

いつかはわからないけど、いずれ死ぬ。そんな当たり前のことを幾度となく考えた。生きる意味ってなんだろう。どんな想いで死に際を迎えるのだろう。後悔の無いように生きるっていうけど、多分そうじゃない。自分の人生に納得できるか、それが一番大事。

納得をひとつ増やすために、週末を利用して海外旅行に行くことに決めた。子どもには世界の広さや多様性を教えたいのだ。新型コロナや円安もあって気軽に行けなくなったけど、体が動くうちに海外武者修行に連れていきたい。

行き先は香港。家族みんなに声を掛けたが、結果的に長男とのふたり旅。思春期真っ只中の高校生とのふたり旅はおそらく最後の機会だろう。かけがえのない思い出になりそうだし、私が子供にしてやりたかったことのひとつが実現できる。「やるべきことはやった」納得がひとつ増える。

飛行機のチケットをとり、現地ホテルを押さえた。期限切れになっているパスポート更新手続きをする。マイナンバーカードで簡単になったかと思いきや、パスポートセンターに行った方が全然早いぐらい時間がかかる。週末トリップだけど翌日学校を休んでも致命傷にならないかを確認する。キャンセルは避けたい。海外旅行は決めることも多いし、日程変更も容易ではないので相当な準備が必要。その分、調べ物や調整を念入りにするのだけども、これがとにかく楽しい。

飛行機が発つ２時間前には空港に着くように移動手段を決める。現地到着後、一泊二日をできるだけ有意義に使えるよう、回りたいところや食べたいものを整理し、ざっくりとスケジュールを組む。移動手段も目処をつける。行き当たりばったりの旅も悪く無いのだけど、今回のように弾丸旅行で自由時間が限られている時には、きっちり予定を組んでおいて、現地で多少の組み替えをする程度にする。でないと海外旅行の機会をフイにした後悔が増えるから。そんなこんなで情報収集をしまくったので、香港事情にかなり詳しくなった。香港の場所も危うかった一週間前の自分とは確実に違う。まだ訪れたこともないのに、何度も訪れたくらいの香港通になった。

楽しい。目的に向かって能動的に調べ物をし、インプットを頭の中で整理していく作業がとにかく楽しい。毎日遅くまでガイドブックやネットの口コミをみて、どのお店で何を食べるかシミュレーションする。食べてないのに食べたような気になってくる。楽しい。毎日が模擬旅行だ。

いざ旅行当日になると、慌ただしいスケジュールに追われて、ひたすら予定をこなすのだろう。疲れるが楽しい経験になるはず。海外旅行の楽しみは、本番よりも計画段階にある。ツアーよりも個人手配旅行の方が自分で決めること調べることが多く、より楽しめる。

そんな訳で、ここのところ毎日イキイキしている。