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介護の話 苦手な業務

 最初に働いた施設で、介護保険の導入を迎えました。

 法人としては、選んでもらえる施設を目指して、介護保険前よりどこから持ってきたのかは知りませんが、訪問入浴車を施設に運んできて、訪問入浴事業をはじめました。

 その頃私はデイケアに所属しており、「へー大変そう。やりたくないなぁ。」という他人事な感想しか持っていませんでした。

 しばらくして、訪問入浴事業の業績がよろしくないということで、その時絶好調のデイケアと部署が合併することになってしまいました。

 ということで、業務の一つとして「訪問入浴」が始まりました。

 まさかの展開でした。

 地域的に階段のない団地が多く、縦にして横にして斜めにして、狭い階段で浴槽を運び、周りを濡らさないように浴槽にお湯をはり、入用介助をしなければなりません。

 浴槽を設置するために、部屋の真ん中にあるこたつを動かそうと、天板を持ち上げました。

 その時、黒い悪魔が大量に出てきたときは、悲鳴を上げました(笑)。

 何度かお湯を入れる時、シャワーの時に失敗して、平謝りしたこともあります。

 ご家族は優しくおおらかな方ばかりで、苦情を申し立てられたことはありませんでしたが、苦痛でしかありませんでした。

 当時は経験なく、技術、知識もまだまだだったこともあり、面白さがわからず、特にそう思ったのかもしれません。

 訪問入浴で一番思い出に残っているのが、気難しい方の訪問時、わりと強い雨が降っているなか、ご自宅の2階に入浴の準備をしていました。

 垣根の間からコードやホースを通し、私は自宅で機材の設置をしようとインターホンを押しました。

 奥様が出てこられ、「主人がお風呂を嫌がっていて、何度言っても聞かないからお休みしようかしら。」とお話されました。

 それならば、外回りの準備をしている職員を止めなければなりませんが、奥様の話が止まらないので、ひとまず同行の看護師に報告に行ってもらいました。

 その後も、奥様の介護の相談などに発展したお話を止めることができず、話を聞いてできる限りの助言をさせていただきました。

 しかし、奥様の立っているところは屋根があるのですが、私の上には屋根がなく、ずぶ濡れで持っていた発泡スチロールの箱には、雨水がドンドン溜まっていました(笑)。

 あまりにも帰ってこないので、同行していた上司が見に来てくれて、ようやく開放されました。

 このあと、施設に戻り片付けをしていると、窓から私達を見た事務員さんが、タオルをもって走ってきてくれました。

 上司は泥まみれで、私がびしょ濡れになっていましたので、事務員さんは何かあったのかと思ったそうです。

 上司はすぐに着替えに行かせなかったことで、事務長や事務員さんたちにこっぴどく叱られるという、申し訳ない状況になりました。

 ユニホームの予備を持っていなかったので、事務員さんが用意してくれたユニホームに着替えて、温かいコーヒーを頂きながら残りの業務を終わらせました。

 というように、いい思い出のない「訪問入浴」の仕事でした。

 

 

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