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不思議な話22 「あれは誰だったの?」

 ある施設での出来事です。

 その施設は、詰め所を中心に3つのユニットがある作りの施設でした。

 1ユニットは10名のご利用者の個室があり、詰め所の前にそれぞれ食堂があり、ユニットごとに回廊型のつくりになっていました。

 担当していたフロアは、認知症専門棟で2人で夜勤をしていました。

 ユニット間は扉で仕切られており、電子ロックがかかっており、ご利用者は自由に行き来ができないようになっていました。

 雑談をしながら夜勤をしていると、なにげに2人が見た窓ガラスに、白地に縦のストライプのパジャマを着た、男性ご利用者がうつむいて歩いている姿が見えました。

 私達は、ご利用者が徘徊しているのだと思い、3つあるユニットの2つを手分けして見に行きました。

 2つのユニットに絞ったのは、歩行できる男性がその2つのユニットにしかいないためです。

 しかし、起きているご利用者はおらず、みなぐっすりと眠っていました。

 お互いに巡回した後、詰め所に戻り見間違いかなと話していて、ふと見に行ったユニットのご利用者が廊下を歩いても、私達が見ていたガラスには姿が映りません。

 見に行かなかったユニットの男性は一人で、一人で立ちがることも、歩くこともできない方でした。

 さらに、私達は、ご利用者の上半身全部が見えていたのですが、窓のいちはそんなに低くないですし、もし仮にそのご利用者が立ち上がったとしても、そんなに背は高くありません。

 しかし、2人でみた男性は、そのご利用者に似ていたようにも思います。

 あのうつむいて歩く男性は誰だったのでしょうか……。

 

 

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