見出し画像

【観戦レポートVol.③】アジア杯 ベスト8 日本vsイラン

試合の細かい内容については皆さんも恐らくご覧になっているので省略します。

ここでは試合を観て感じたことを僕なりに書かせて頂きます。是非ご覧ください。


僕の感じたイラン戦の主な敗因

①明らかにコンディション不良の板倉選手を最後まで引っ張ったこと

この試合で板倉選手は前半から明らかに様子がおかしかったです。

簡単に相手と入れ替わられたり、裏を取られてしまったり、絶対一発でスライディングしちゃいけないところでしてしまったりと普段ならやらないようなプレーを連発していました。

グループステージ第3戦のインドネシア戦で1度ベンチ外にしましたが、恐らくまだ怪我の影響があったのではないでしょうか?

最後のPKに繋がるクロスボールへの対応も普段の感覚で頭で触れると判断したのでヘディングに行ったのでしょうが、体がついてこなかったような印象を受けました。

選手層が厚いだとか言ってたわりにベンチの谷口選手、町田選手、渡辺選手には出番を与えず、結局は控え選手のことを信頼出来ていなかったんだろうなということが透けて見える結果となりました。

②交代カードが裏目に出た

守備面で広範囲に貢献していた前田選手と
ビルドアップでボールの出口になっていた久保選手の交代は非常に悪手になりました。

ちなみにこれはバーレーン戦での交代カードの切り方と全く同じ。

それで一度成功したという経験が全く同じ采配を取らせたのではないかと思います。
ただバーレーン戦とは状況が全然違いました。

前田選手は攻撃面での貢献はイマイチでしたが守備で非常に効いていました。

持ち前のスピードとスタミナで強度のあるプレスバックを繰り返し相手からボールを奪って攻撃へ繋げていましたし、前線では相手のDFラインに対してもそのスプリント能力を活かしてプレッシャーをかけ続けてくれていたので、あからさまに相手は嫌がっていました。

久保選手は日本のビルドアップでパスの出しどころが相手に消されて無くなってしまった時にトップ下のポジションから自由に降りて来ることで一瞬フリーの状態を作り出しボールを引き出していました。(一瞬でもフリーで受けれれば奪われない技術もスゴかった)

この2人を交代したことで、それ以降この良かった部分が完全に失われてしまい、ビルドアップで繋げない→大きく蹴る→奪われる→相手DFラインにプレスもかからない→高精度のロングボールを蹴られる→とにかく弾き返す→結果また相手ボール…という繰り返しになってしまいました。

③三笘選手と南野選手を投入もシステム変更は行わなかった

三笘選手と南野選手を同時に投入し攻撃したい気持ちはわかりますが、何故かバーレーン戦のように3バックには変更せず…

相手のロングボール攻撃を4バックで必死に弾き返しますが、ボランチまでDFラインに吸収されているのでセカンドボールを拾えない、やっと拾えたと思ったら全員マンマークされていて味方のサポートが得られないのでそこから先に繋ぐこともできない。

3バックにすれば単純に後ろで競り合う枚数を増やすことができますし、サイドチェンジされてもウイングバックが戻って5バックになればサイドでフリーになる相手選手も出てこないので崩されにくくなります。

さらに攻撃面でもバーレーン戦のように相手にボールを渡してしまって攻めさせれば、奪った時にスペースがあるので前向きでロングカウンターを発動させやすい。

つまり三笘選手のドリブル突破が活きやすい形にできたと思います。

これはW杯で大きな武器だったはずなのに、ここでシステム変更を行わなかったのは何故なのか?
(まさか西野監督のように"選手達自身で変えて欲しかった"なんて無責任なこと言わないですよね?)


メディアによって作りあげられた"史上最強"

今回の代表は各メディア"史上最強"と謳っておりアジア杯の優勝候補の筆頭として扱われていました。

ただよくよく見てもらえるとほぼあの時のW杯の時のメンバーが中心のチームになっていて大幅な入れ替えなどはそこまでなく、不調のドイツを破ったり破竹の連勝を積み重ねてきた事で(確かに中心メンバーの各所属クラブでの活躍ぶりは目覚ましいですが)自分達がめちゃくちゃ強いものだと勘違いをしてしまっていたように感じます。

思えばドイツW杯で日本がGL敗退した時も当時のチームは中田英寿選手、中村俊輔選手を中心に本大会前に非常に調子も良かったことで史上最強と言われていたところが、フタを開けると1勝もできずに敗退ということがありましたが、それを思い出しました。

盛り上げたい、視聴率や関心を持たせたいというメディアの気持ちもわかりますが持ち上げすぎたことでどこかチャレンジャーではなく"上から目線"な姿勢を生み、これが結果的に受け身になってしまった要因の1つになったように思います。


本質的に変わってない日本代表

これは最初に挙げたイラン戦の敗因とは別に長期的に改善されなかった日本代表の問題点です。
(もちろんイラン戦でも引き続き問題になっていた)

<継続的な日本代表の問題点>

①前からの守備(プレス)の形が決まっていないのでボランチ前のスペースの選手を捕まえきれない場面が多々あり、ここから危険なパスを入れられたり、相手DFラインにもあまりプレッシャーがかからない為に前線に精度の高いロングボールを蹴られてしまう。

②GKから繋ごうとするがビルドアップの原則(約束事)があるわけではないので基本選手のアドリブで打開するしかない為、引っ掛けられた時にカウンターを受けやすいし、チームのストロングといえる両ウイングに良い形でボールが入らない。

グループステージのイラク戦でも"まさかの"敗戦を喫したわけですが、このイラク戦で起こっていたのも変わらずこの問題でした。

そして先日のベスト8のイラン戦でもイラク戦で起きていたこの問題点を修正することができず、結局敗戦から何も学んでいないことが明らかになりました。

そしてこの問題点はカタールW杯のコスタリカ戦でも起きていたことですし、もっと言えば5年前のアジア杯の決勝戦vsカタール戦でも起こっていた現象であり、時間をかけてもこの問題点がずっと変わらずそのまま放置されていたことで本質的には何も変わっていないということが改めてわかる結果になったと思います。


選手主導型チームビルディングの限界

今の日本代表はボトムアップ式といって、監督が戦術を決めるのではなく、主に選手達で話し合って戦い方を決めています。
これは世界的に見ても珍しいやり方です。

普段ヨーロッパのトップクラブでプレーしている選手が多いので、その選手達にある程度任せてしまった方が良い戦い方ができるのではないか?という考え方からきているようです。

ですが、僕はこのやり方には限界があると思いますし、まさにそれが今大会でハッキリしたと思います。

<ボトムアップ式チームビルディングの欠点>

①あくまで中心選手達の話し合いの結果であって、間違っても選手全員の総意というわけではない(つまり自分の意見を言えない選手や言っても聞いて貰えてない選手も中には必ずいるはず)

②試合前にどう戦うかのベースの確認・擦り合わせは可能だが、試合中の相手の変更・修正に対して即座の対応・修正は不可能(試合をしながら全員の頭を繋げる作業は選手だけでは不可能)

今回の試合の中でも選手達に明らかに迷いが出ていて押し込まれる展開が続く中でベンチからの戦術的な指示は一切ありませんでした。
(前田→三笘、久保→南野と選手の交代をおこなっただけで、これは戦術的修正とは言えない)

選手達の表情やプレーぶりからSOSは出ていたと思います。そんな時に選手を助ける為の方法を明確に掲示して試合の流れを変えるのが監督の仕事だと思います。

ボトムアップと言えば聞こえがいいですが、要は選手任せの放任主義ですし、監督が指示を出していないのなら負けの原因も選手達自身が負わなくてはならないような仕組みになっているのはシンプルにヤバいですよね。


何故監督が戦術を決める必要があるのか?

戦術というとなにかと難しいイメージがありますが、要は"約束事"のことで、これは選手をガチガチに縛り付けるようなものではなく、ガイドライン的に利用する為のもので、選手の頭を整理しプレーの難易度を下げる為のものになります。

選択肢が5つも6つもある中から1つを選ぶのと、2つ3つの中から選ぶのでは判断のスピードが変わってくると思います。

そして、試合の中で今どの選択が1番良いのか?それは選手の考え方によっても違ってきます。

問題が起きた時の対応として、例えば今回の試合を例に出して言うなら、イランのロングボール攻撃に対して…

①"前からプレスに行って正確なロングキックを蹴らせない方がいい"と考える選手と

②"ロングボールを蹴られた時に対応する後ろの選手を増やした方がいい"と考える選手が同じピッチ内にいる可能性があり

それを放っておくと選手自身の考え方で前にプレスに出ていく選手と後ろに下がる選手がそれぞれ出てきてしまい、結果としてチーム全体が間延びしてセカンドボールが拾えず二次攻撃、三次攻撃と攻められ続ける現象が起きると思います。

つまり試合中に選手だけでそこの擦り合わせを行うことは不可能だと言うことです。

そんな時に監督がベンチから「こうしよう!」とイニシアチブを発揮することによって選手達の方向性が1つに統一され、それを基にあとは選手それぞれが備えた個人戦術を遺憾無く発揮できるようになると思うからです。


そろそろ我慢の限界です。

森保ジャパンになってからのこれまでの主要国際大会の成績は…

2019アジア杯=2位
2021東京五輪=4位
2022カタールW杯=ベスト16敗退
2023アジア杯=ベスト8敗退

ちなみにW杯以外の目標は全て"優勝"だったはず。W杯でもしっかりと目標は達成できていないのにも関わらずスペイン、ドイツに勝ったことで勝手に名将扱い。

任期はまだあるかも知れないがこれだけ結果を出せない監督にこれ以上続投させるメリットがないので、森保監督には責任を取って辞任して頂きたい。(田嶋会長にその気がないので辞任をお勧め)

選手の質は確実に上がっているし、ヨーロッパでもこれだけ活躍できる"個"がいるなかで、扱う側のレベルがこれではあまりに選手達が不憫。

負ける時の内容も毎回だいたい一緒で試合中はもとより試合後の修正もできないのは明白。

現代サッカーでは試合中でもタイムリーに修正が行われるという流れの中にあって、これができない指揮官というのは致命的と言えます。
(今回も後半のイランの修正に対して何も対抗策を打ててない)

正直何回この負け方見せられるの?と思ってしまいます。


2050年W杯優勝に向けて

今後も右肩上がりに選手の質が上がっていくかのようによく話がされていますが、昨今の少子化やサッカーの不人気により、サッカーをプレーする子どもの数は確実に減少傾向にあります。

冨安選手が言うように「自分達の世代で優勝を成し遂げたい」というのはまさにそうで、今後もこれだけの質が揃う世代が来るという保証はどこにもありません。

だからこそ今のこの選手達の能力を最大限発揮できる体制をJFAにはなるべく早く作って欲しいと願います。


次の監督問題

ただ問題なのは、例え森保監督が辞めたとしてその後任の監督を誰にするか?という問題です。

そしてその監督の決定権を持っているのは現在のJFA会長である田嶋氏です。

会長がこの田嶋氏である以上、例え森保監督が辞めたとしても似た系統の監督が後任に据えられる可能性が非常に高く、そのまま日本人監督路線という流れでいくと大岩監督を五輪監督から引き上げるか、現在コーチという立場の名波氏を繰り上げるかが現実的な路線…

2人のこれまでのJクラブでの実績的にどちらも監督としての手腕には懐疑的。
今とそんなに変わりは無さそうです。(下手するともっと悪くなる可能性も…)

現在のチームのベースを引き継ぎつつ、修正力のある監督…なかなか思いあたりません。

個人的な希望としては、日本人なら福岡の長谷部監督か町田の黒田監督。

外国人監督なら現在Jクラブを率いている人の中からG大阪のポヤトス監督、広島のスキッベ監督を推します。(少しでも日本を知っている人の方が良い)

※最近よく解説で見かける林陵平氏も見てみたいが、恐らくこのクラスのライセンスを所持していない。こうゆう若くて頭の切れる感じの人を大抜擢できないライセンスの仕組みやJFAの制度が非常に残念です。


一縷の望みは恒様

実はこのJFAの会長である田嶋氏の任期が26年3月までとなっており、そこでの退任は決定事項になっています。

そして、その後任者として話が出ているのが現在JFAの専務理事を務めている恒様こと宮本恒靖氏。

プレーヤー時代はDFとしては小柄ながら予測の早さや頭脳的なプレーで活躍し、甘いマスクで人気を博した元日本代表キャプテンのあの宮本氏です。

ただ、残念ながらこの恒様も田嶋氏の推薦により会長に立候補した身であり、田嶋氏の流れを汲んだ人選ということなので劇的にJFAが変わるかどうかは不明。最悪人が変わっただけで何も体制が変わらない可能性も大いにあると聞きます。

僕が僅かに希望を見出してるのはこの宮本氏が会長になった後に自分の色を出し始めることで、JFAを生まれ変わらせる可能性です。

とりあえず会長になるまでは大人しくしているだけで、実際に会長に就けさえすれば邪魔するものはいなくなるので、そこで本来のカリスマ性を発揮してJFAを内部から改革してくれる…

たぶん、まあ、無いとは思いますが、それに賭けるしかない現状なので全ては恒様に掛かっていると言ってもいいのかもしれません。

とはいえそこから監督を変えたとしても、次のW杯が26年6月からの開催予定になっていて、それまで約3ヶ月しか準備期間が取れないという問題もあります。

いずれにしろJFAにはなるべく早急な対応をお願いしたいところです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?