見出し画像

あつぎ気候市民会議報告会に参加して

令和6年(2024年)2月17日(土)13時から、アミューズあつぎ6階会議室にて、あつぎ気候市民会議報告会が行われました。

この日は、『『あつぎ気候市民会議』報告書』が公開される日。報告会参加者の私も、報告書を手にしました。

3部構成。第1部が「「脱炭素市民アクションプランinあつぎ」ができるまで」
第2部が、成果物の本体の「脱炭素市民アクションプランinあつぎ」
第3部が、「会議を終えて 評価と今後の展開」
となっています。いずれも興味深いものです。是非、添付から内容を見ていただければと思います。

さて、この日の日程は添付のとおりです。

会場配付資料より

これまで、上記のものをはじめ、noteでいろいろと触れていますので、ここでは、特に興味を持った部分にだけ触れていきたいと思います。

1.厚木市との関係

(1)「厚木市カーボンニュートラルロードマップ」との関係


日本でいくつかの気候市民会議が開催されていますが、脱炭素の取組は、それぞれの自治体で状況が違っています。逗子市、葉山町のように、これから自治体が行動計画を策定するというところでは、気候市民会議からの提言は、それぞれの行動計画策定の基になるものとも言えましょう。それに対し、厚木市では、「厚木市カーボンニュートラルロードマップ」が既にできており、7頁の「脱炭素市民アクションプランinあつぎ」を作り上げるうえで注意したこと」に、「「厚木市カーボンニュートラルロードマップ」(2023年3月制定)を必ず実現させるために市民目線でできることを話し合おう。(略)」、「(略)市民が行うことや、市民が行いたいがそのために必要な条件として行政や事業者に協力を求める、という内容を考えよう。」等としています。

取組が、「厚木市市民提案協働事業」ということは、既に述べてます。他の気候市民会議と比べて、このことが特徴的なものとなっています。

厚木市との協働事業なんですから、「ご協力いただいたみなさまからのご挨拶」として、厚木市環境政策課の人の話が出て来るのは、どうなのかなぁとちょっと思いました。協働だから、「ご協力」というか、当事者なのではという気もしないでもありませんが、、。

これらから察せられるのは、この気候市民会議が「市民提案」で行われているということが、その性格付けに影響を与えているのではないかということです。

もし、厚木市が自主的に、気候市民会議のような、無作為抽選のミニ・パブリックスを行おうとするならば、「カーボンニュートラルロードマップ」の策定前にやるのが一番有効だった気がします。気候問題は、実は、利害対立が非常に大きい部分もあるのですから。策定に向かって作業が進んでいる中で、協働事業が決まった。策定を遅らせるという判断にはならなかった。気候市民会議の提言は、「ロードマップ」を確実に実現させるものという位置づけ。このような厚木市のコミットメントの姿が形成されたのではないかと勝手に思ってしまいました。

(2)「脱炭素市民アクションプランinあつぎ」の提案としての受け入れやすさの工夫

「脱炭素市民アクションプランinあつぎ」の最初の頁は、参加市民の漫画家菊池栞さんの「脱炭素化したあつぎのイメージ」のイラストになってます。無作為抽選だと、本当にいろいろな人が選ばれて来ますね。

アクションプランは、5章立てで、74項目が掲げられていますが、単に項目を掲げるだけではなく、参加市民の投票により、重みづけがなされています。これは、厚木市が今後、具体的な施策を展開するのに大いに参考になる形だと思います。このようにすることで、提案の活用しやすさに配慮したものとなっていると考えます。一例として報告書の22頁を掲げます。

報告書22頁

この22頁では、最終案に対する投票結果として、「ソーラークッカー普及」がアクションプランから除外された様子が示されており、大変興味深いです。
他のもの、すなわち除外されず、アクションプランに採用されたものについて、例えば、3(3)1)省エネ家電の普及促進は、投票の結果、推進意思平均値は、6.2(7が満点)、着手時期平均値は、2.6(2030年までが2点、2025年までが3点)となっていて、他の項目と数字が比較できる状況です。
厚木市が、施策の優先順位とすることも可能かと思います。

(3)市長への提出と次年度以降の対応

「第3部 会議を終えて 評価と今後の展望」には、市長への提出について、「あつぎ気候市民会議で作り上げた「脱炭素市民 アクションプラン in あつぎ」を2023年12月26 日に厚木市長に提出しました。厚木市にはこれを 受け入れ、市民の熟議の結果として政策に反映さ れるよう期待したいと思います。とは言え、現状す ぐには取り組めないことや裏付けとなる予算や技 術が伴わないことも多く、継続的に私たち市民と 行政が協働で取り組んでいく必要があります。」と記述されています。これは、逆に、提案の活用について、具体的な回答がなかったことを表わしているように読めます。

とは言え、厚木市との関係で、次のことは決まっているとのことでした。
令和6年度の厚木市の市民提案協働事業として、「あつぎ気候市民会議展開事業2024」として採択されており、100万円の予算は確保。3年間の事業。これをベースに後述する「カーボンニュートラルあつぎ未来プロジェクト」を構築し、「アクションプランの進捗の評価や調査」として、「市との情報交換、意見交換、市への意見提案」を行うとしてます。こうした形で、厚木市との今後の連携の形を構築しているのでした。

2.市民の展開

これは、他の気候市民会議や自分ごと化会議等でも重視されているように思えるのですが、こうした熟議型会議を経て、参加した市民が成長し、今後の市民活動のキーパーソンになっていくことを推進するという側面です。

確かに、「変革には、システム(行政の施策)と私たち(市民)の展開が必要」とされるので、大事な要素ではあるかと思います。

(1)参加市民アンケートより

報告書のアンケートには次のような結果が表れています。

報告書、30、31頁より。

老若男女が共通の課題について議論をして提言をまとめるという経験は、ファシリテーターや実行委員の力量にもよるところが小さくないのかもしれませんが、参加して良かったとの感想が圧倒的に多くなっています。

報告書31頁より。

会議の前後で、知見の蓄積の意識が参加者に見られます。
今後の取組への参加も7割程度が希望するとなっています。

このように、市民の啓蒙という点では、明確に有効と言うことができましょう。

こうしたことを、今後に繋げる仕組みが、「カーボンニュートラルあつぎ未来プロジェクト」です。ここで参加市民を活動主体としていく受け皿の構築がなされ、厚木市に対する監視的なものも含めて、今後の活動への展開が設計されているのでした。

報告会配付資料。

3.おわりに

このように、「システム(行政の施策)と私たち(市民)の展開」のうち、気候市民会議は、後者には有効で、前者の市の施策への展開は、これから様子を見て行く必要があるという感じではないかと思われます。

これらミニ・パブリックスは、実際、多額の経費と手間を要し、その提言を市長なり市議会が尊重する仕組みを、無作為抽出によって構築しているのですから、もう少し、「システム」への影響が大きくあっても良いのではないかというのが正直な気持ちです。

そのためには、
①会議の前に自治体の長のみならず、担当の部局から、会議の結果をどう扱うかについてのコミットメントをより踏み込んで獲得することがまず大切なのではないか。
②また、会議の提言を、既存法規、既存施策との関係を十分把握した上での、ツボを突いたものとすることを目指すのが良いのではないか。
③その提言の選択には、参加市民間の、意見の対立と、採決を避けず、まとめあげることが必要ではないか、もちろん熟議の末ではありますが。
こうしたことが大事ではないかと思いました。

まだまだ研究を続け、更に考えを整理していいたいと思います。

あつぎ市民気候会議に参加された方々、その熱意に、ご努力に、心から敬意を表します。

あつぎ気候市民会議報告会




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?