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Tuna Melt

どうも、ご無沙汰してしまいました。
前回から引き続き、またもや趣味機材の話です。

前回は素敵なギターとアンプを買った話をしました。毎日鳴らしています。良いギターを良いアンプに繋いで鳴らす幸せ。はい、最高ですとも。これ以上何が必要というのでしょうか?

…と言いたい所ですが、時にはちょい足し味変アイテムなんかも有ると楽しいかも。

例えば、ごはん。
良いお米を美味しく炊いたごはんというのは、その香りと旨味だけでも素晴らしく幸せな気分に浸らせてくれるわけですが、もし、そこに漬物や佃煮、明太子、南蛮味噌といった素敵なごはんのお供が有れば、香り、食感、味わいに広がりや変化が生まれ、その掛け合わせで食事の楽しみが何倍にも膨らんだりするものです。

ギターにおけるごはんのお供的なものと言えるのがエフェクター。よくギタリストの皆さん、足元に怪しげな箱を沢山並べて、踏んで、弄って、ああでもない、こうでもない、とかやっていますよね?あれです。

エフェクターと言っても色々なのですが、基本となるのは次の3種類でしょうか(本当はもっと色々と有るわけですが、まぁ、とりあえず…)。
①音をザラついたダーティーな質感に、また、倍音を豊かにし、サステインを与える(逆にブチブチと切れるようなものも有りますが)歪み系。ファズ、ディストーション、オーバードライブといったタイプのエフェクターがこのカテゴリーに含まれます。
②残響を足し、奥行きを与える空間系。リバーブ、ディレイ、エコーといったもの。
③揺れ、うねりを与えるモジュレーション系。音の揺らし方も様々で、音量の揺れ(トレモロ)、音程の揺れ(ビブラート)、位相を変えた音と原音の干渉(フェイザー)、僅かに遅らせ音程も揺らした音と原音の干渉(コーラス、フランジャー)…など。

モジュレーション系エフェクトは楽しいです。
中でも、個人的にトレモロというものが大好物でして。この、ゆらゆらふわふわと何とも怪しげな雰囲気を醸すのがトレモロの効果です。

世界最古のギター用のエフェクターはどうやらトレモロらしいのです。1946年にRowe Industriesが製造、ギターのピックアップで有名なDeArmondから発売されたModel 60 Tremolo Controlというモデル…と言われておりますが、しかし、このDeArmond/Rowe Industriesのトレモロ効果を生む装置はどう見ても同じものが1941年のEpiphoneのカタログに既に登場しており、実際には1940年代初頭までには存在していた模様です…Bo Diddleyが愛用していた事で知られています。その後、1948年頃にModel 800 Trem-Trolというペダル型のモデルも登場します。

1940年代後半からトレモロの回路はギターアンプの中に組み込まれるようになり、特に1950-60年代においては各社の上位機種にはほぼ標準装備で内蔵されていたように思います。
DeArmond/Rowe Industriesによる世界初のトレモロ装置は電気を電解液に通す事で発生する揺らぎを信号化してトレモロ効果を生み出し、モーターでトレモロの周期を調整する、といった仕組みだったそうですが、アンプ内蔵トレモロの多くはLFO(Low Frequency Oscillator)が生み出す波形を使って真空管のバイアスを変調させる仕組みだったようです。

ちなみに、アンプ内蔵トレモロといえばFenderが有名ですが、それらのアンプのトレモロチャンネルには何故かVibratoと表記され、逆にギター本体に取り付けビブラート効果を生むブリッジ/テイルピース/アームにはTremoloと名付けたという、効果と名前が逆な謎な件…。
ついでに、FenderではなくBigsbyですが、ビブラートユニットを使い、ある意味ギター本体の方でモジュレーションを掛けたような演奏の例の紹介。

アンプ内蔵のピッチシフティングビブラートとしてはMagnatoneが有名。動画はヴィンテージのものですが、近年のリイシューのアンプでもしっかり再現されています。こちらもまた気持ちの良いモジュレーションの掛かり方で堪りませんね。これを再現したとてもお気に入りのエフェクターが有るのですが、まぁ、その話はまた別の機会に。

更にちなみに…な話ですが、世の中にエフェクターというものが広まるきっかけになったのが、Maestro/Gibsonから1962年に発売されたFuzz Tone FZ-1というファズ。市販品としては世界初のストンプボックス型エフェクターで、この曲のレコーディングで使用された事があまりにも有名。この動画でもキース様の足元に置かれ、曲中で踏んでいるのが確認できますね。

初期のエフェクターの歴史と発展の流れに関して、こちらの動画で主要モデルを発売順に実機を鳴らしながら(めっちゃ貴重)紹介していて分かりやすいので、興味の有る方は見てみてください。


さて、話がめちゃめちゃ逸れてきたので、トレモロに戻ります。前置きが長かったですが、何の話をしたかったかというと、トレモロ買いました、という話。

Danelectro DJ-5 Tuna Melt Tremolo

ね、めっちゃ可愛くないですか、これ???

トレモロを買うのは初めてではなく、今までに数台買い替えてきたのですが、またトレモロ欲が湧いてきてしまい(ほとんど病気です)。
最近知り合ったエフェクターレビューサイトを運営されている方にオススメをうかがったところ、Tuna Melt良いですよ、と。

ほほう???
Danelectroは1947年創立のブランドで1960年代末まで比較的低価格帯のギター/ベース、アンプなどを製造していました。Jimmy Pageが3021というモデルを使用した事で有名です。

Danelectroは1990年代後半に復活し、今に至るわけですが、ブランド復活後はコンパクトエフェクターも製造するようになったのです。特に、美味しそうな食べ物の名前が付けられたミニサイズのフードシリーズは、キュートな見た目で値段もお手頃。何となく知ってはいたのですが、ほぼノーマークでした。しかし、このシリーズななかなか良く出来ていて使えますよ、との事。ならば、とりあえず試してみるか、と早速購入。

ほら、箱からして、既になんか良い感じなわけですよ。

電池もなんか良い。

では、アンプに繋いで鳴らしてみましょう。
真ん中のスイッチでモードをSoftとHardに切り替えられます。まずはSoftモード…あれ、何だかちょっと薄味…?
掛かりの深さを調節するDepthつまみを上げていってもそこまで深く過激なモジュレーションとはならず、優しく柔らかめ。しかし、しばらく鳴らしていると、このトレモロはアンプのトーンに対してあまり味付けをせずに溶け込んでいき、非常にナチュラルな掛かり方をする事に気付きました。何だか段々と気持ち良くなってきました。ちょっとクセになるかも。
シンプルで薄味が故に素材の旨味、味わいを感じるような料理って有るじゃないですか。例えると、そんな感じです。

Onにすると音量が落ちる気がするので、もしかしたら、ある程度大きな音量で鳴らす場合は音量差が気になるかもしれませんね。

今度はスイッチを切り替え、Hardモードに。
Softモードでは緩やかにカーブを描くようなモジュレーションでしたが、こちらはブツ切りにチョップしたようなOn⇔Off的な掛かり方となります。Speedつまみを上げ気味にすると楽しいかもです。また、HardモードではDepthつまみは効かないようになっているようです。
拾った試奏動画ですが、こんな感じ。

箱には各モデルのメーカー推奨セッティングが記された紙が同梱されており、それによると、Tuna MeltはSoftモードで、つまみはどちらも時計の3時の向きがオススメ。なるほど、確かに気持ち良い掛かり具合です。このセッティングを基準に好みに合わせて微調整する感じが良さそう。

音良し、見た目良し、値段良し、と良い事尽くめなのですが、1つ大きな欠点が。
プラスティック製筐体の強度の問題……。

いや、プラスティックが故の軽さと可愛さなので僕は大好きですが、ジャックの抜き差し、つまみの調節、フットスイッチの踏み込みなど、力加減に気を付けないと簡単に割れそうです。ちょっと弄ってみただけでも、あぁ、これは相当気を付けないと…と感触で分かる程です。
紹介してくださった方は別の筐体に入れ替えているとの事でしたので、がっつりハードに使いたい場合はその方が良いでしょう。

手持ちのトレモロと比較してみました。
最近復活したMaestro(Fuzz ToneのあのMaestro!!!)のMariner Tremolo。これもデザインが良いのです。しかし、まあまあゴツくて重い。真ん中のつまみでトレモロの波形を無段階で変える事ができるのと、通常のトレモロとハーモニックトレモロが切り替えられるのが面白いポイント。

このハーモニックトレモロというのは、1960年代前半のFender社の所謂Brown Face期のアンプの中でも、Bandmaster、Vibrasonic、Twin、Showmanといったアンプに搭載された独特な回路のトレモロで、後の時代に登場してくるフェイザー等のエフェクターと似たようなシュワシュワとした効果を得られ、これがまた何とも魅惑的なトーンなのです。

しかし、今回はHarmonicではなく、Classicモードで比較。
Mariner Tremoloの方が音に太さを感じ、コンプレッション感も有るように思います。比べてTuna Meltは線が細いように聴こえますが、あまりコンプレッション感が無く、とにかくトーンがナチュラル。また、スピードの可変の幅自体は広いのですが、ツマミを回した時に効き方のカーブに癖が有るように感じ、美味しいポイントでの微調整がちょっと難しいようにも感じました。その点はMariner Tremoloの方が扱いやすいかもしれません。

とはいえ、Tuna Meltのあまり色付けされないナチュラルな掛かり具合とキュートなルックスはやはり魅力的。買って良かったです。


余談ですが、各種モジュレーション系エフェクトはよくハモンドオルガンと組み合わせて使われるロータリースピーカー(レスリーユニット/レスリースピーカー)のような効果を狙って生まれたものだと言われています。
ロータリースピーカーには、キャビネット(箱)の中に回転するスピーカーが仕込まれており、それによって生まれるドップラー効果を利用してトレモロ、ヴィブラート、コーラスのようなエフェクト効果を得るものです。

1960-70年代には実際にロータリースピーカーにギターを繋いで演奏する事も流行りました。こんなサウンドです。

このサウンド、堪らなく好きなのです…。
フェイザーやハーモニックトレモロ、コーラス等で似た効果を狙おうとしましたが、そこはロータリースピーカーのサウンドをシュミレートしたペダルを試すべきではないかと。で、試奏した結果、やはりめちゃめちゃ気分が出る!!!という事で買ってしまいました。

Keeley Electronics Roto Sonic Rotary Speakerというモデル。
Custom Shop Limited Editionという事で限定品です。恐らく、国内在庫最後の1台でした(すみません)。

シンプルなコントロールで扱いやすく、音の方もさすがKeeleyだな、という仕上がり。
真ん中のスイッチでモードが切り替えられ、上からレスリー、恐らくFender Vibratone、Jimi Hendrixの使用で有名なUni-Vibeというエフェクター、と3種のロータリー系サウンドを選べるようになっております。

というわけで、長くなってしまいましたが、今回はこの辺りで。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!!

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