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小林賢太郎『うるう』で潤い、憂う

ちょっと前にブルーレイ盤を買ったばっかりだったんでなんか若干損した気がしないでもないのですが、せっかくなので見たことない人は見てみてください。

ちょっと前のサブカルオタクはみんな水曜どうでしょうやらラーメンズやらが好き。メインストリームの笑いやバラエティに辟易として乾いてしまった心に、彼らの少しニッチで新しい尖ったアプローチが心地よかったものです。Quick Japan読んでそう←その通り

ただ、そういうのにハマりまくり影響を受けまくって心酔していても時の流れというのは残酷なもの。サブカルチャーは人気を得るほどに注目されはじめ、どんどん市民権を得るにつれてそれに対する熱は冷めていき「はいはいラーメンズね、見てた見てた。」みたいな感じの評価に落ち着いてしまいがち。

「ハイセンスで気の利いた感じがちょっと今となっては胃もたれしちゃうんだよなぁ〜」みたいな感じでどうも敬遠してしまう…のですが、でも見たらなんやかんや最後まで楽しく見ちゃうし面白い。この「ちょっと飽きる→やっぱおもろいやんけ!」の距離感のムーブをここ十年ぐらい繰り返してる様な気がします。

ラーメンズから始まる小林賢太郎の作品は大体DVD買ったりして見てるのですが、"小林賢太郎演劇作品"はちょっと人を選ぶものが多い。

面白いんだけど、1本の作劇として見た時に話のバランスというか、構成がけっこう変わっている印象。面白い言葉遊び、面白いオチのために作られたコント群を話の筋に合うようパズルのように組み立てて作られたかのような不思議な感じ。

『振り子とチーズケーキ』『ノケモノノケモノ』あたりなんかはけっこう意識高めなクセツヨがどんどん加速してる印象があって「面白いんだけどあんまり広くウケる感じではなくなってきてる?」みたいに思ったりもしたんですが、この『うるう』は割と見やすくまとまってて万人向けな気がします。

孤独に生きる異形と少年が偶然出会い、少しずつ交流を重ねて仲良くなっていくのだが、やがてふたりに別れの時がやってきて──。みたいな話みんな好きでしょ?

『うるう』というタイトル通り閏年がテーマの作品なんですが、四年に一度といえばオリンピック。あの東京オリンピック事件があったせいで「あっ…」みたいな別の文脈を感じてしまいノイズになってしまうのがややネックではあります。(『うるう』が上演されたのは東京オリンピックのアレよりも前です)

ファンの声とか見てもそうなんですけど、小林賢太郎についてのあれこれが語られる時はなんか湿っぽくなる感じはあります。ラーメンズの活動終了とか引退とかオリンピックのあれとか。まあでも『うるう』の雰囲気もなんかそんな感じなんで今の感じにマッチしてるんじゃないでしょうか。おすすめです。

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