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「今は治る病気だよ」と言わせてほしかった

子猫のもらい手を探してるから

「とあるブリーダーさんが閉鎖することになった」
「猫たちの行き先を探しているから引き取れないか」

知人からそのような話を聞いて写真を見たとき、
小2の子も私も、どうしても飼いたい!と思いましたが、
私たちはペット不可の賃貸マンション暮らし。

「ばあばんちで飼ってくれんかなぁ」
「犬がいるから無理かなぁ」

「子猫なら良いよ。子猫から飼えば犬とも仲良くなれるだろうし」

これまで飼ってきた猫は、大抵、猫の方が犬より先住で
犬と猫が仲良くなったことはありませんでした。

犬と猫が仲良く暮らす様子に憧れがあったばあばは、
渋っていたじいじをなんとか説得し、
そのうちの1匹を迎え入れることにしたのです。

名前はミミ

3年前、7歳で病気で虹の橋を渡ってしまった犬は「ナナ」でした。
ナナみたいに同じ音の繰り返しの名前が良いね、と
子どもが考えた名前は「ミミ」

2022年9月1日ミミがやってきました。

ミミがやってきたとき、まだ生後7週。
430gでした。
少し早いのではと思いましたが、閉鎖の事情もあったのでしょうか…。
(詳しくは聞いていません)

ミミが来てからは、毎日のようにばあばんちに通い
仲良くなっていきました。

回虫、猫カビ


まずは、健康診断です。
動物病院に連れて行くと、母子感染の回虫がいるということで、
駆除薬が処方されました。

目ヤニや頭の上のかさぶたのような症状も気になりましたが、
伝えても少し診てくれた後、特に何も言われませんでした。

まだ小さいと言うことで、ワクチンは8週を過ぎてからになりました。

その後、よく食べ、よく遊び、
体重も徐々に増え、順調に大きくなっているように思いました。
8週を超え、ワクチンも接種できました。

ある日、子どもの頬に発疹ができました。
かゆそうにしていましたが、虫刺されかなと、
数日、かゆみ止めを塗って様子を見ました。

ところが、赤い発疹はどんどん大きくなります。
念のためと思って皮膚科に行くと、
セロハンテープを発疹に貼り、顕微鏡で調べてくれました。

「ペットはいますか?」

ペット由来のカビということがわかりました。

ほっぺたの絆創膏は猫カビの薬を塗っているところ

ペットも一緒に治療してくださいと言われ、
ミミも抗真菌薬を飲むことになりました。

すると、次々できていた頭の小さいかさぶたも無くなり、
毛づやもよくなっていきました。

来たときから気になっていた頭のかさぶたは
猫カビだったのかもしれません。

その後、大人達も猫カビ由来の皮膚の発疹が出て、
かゆい思いをしましたが、皮膚科の塗り薬ですぐに良くなりました。

お腹の緩さが治らない

猫カビも落ち着き、ワクチンも済ませ、
ミミの体重も1980gになっていました。
よく遊び、よく食べました。
遊び疲れると膝やお腹に乗ってきて眠りました。


これまでも野良猫出身の子を飼ってきましたが、
子猫のうちに自分から膝に乗ってくる子はいませんでした。

ミミは自分から膝に乗ってきてゴロゴロ喉を鳴らして甘えてきます。
ミミが来てから2ヶ月。
子ども、私、じいじ、ばあば、みんなの癒やしの存在になりました。

【11月20日頃】

来たときからお腹の調子が整いづらい子でしたが、
またお腹が緩くなってきました。

【11月23日】

2日経っても良くならないので、
じいじ&ばあばが動物病院に連れて行きました。
先生に何か食べさせましたかと言われましたが、
キャットフード以外は与えていません。
完全室内飼いです。

便を顕微鏡で見ても悪い物はなさそだったということで、
点滴と下痢止め2日分の処方でした。

【11月26日】


下痢が治らないので、じいじ&ばあばは再度動物病院へ連れて行きました。
すると41度の発熱!
点滴をし、3日分の下痢止めの処方で様子を見ることになりました。
食欲がないなら再度来て下さいと言われて帰宅。
この日は、自分からケージの中に入り、ずっと寝ていました。


【12月1日】

<朝>
ケージのトイレが便でひどく汚れていました。
ミミのお尻も尻尾も汚れていました。
急いでお尻周りをシャンプーして、病院へ。
「まだ治りませんか?」と顕微鏡で便を見てもきれいなようでした。

そして目を診て
「大変だ黄疸がでてる!」

「今日預かって調べさせて下さい。夕方に連れに来てきて下さい」
預けて帰りました。

<夕方>
夕方に、連れに行くと、先生が、深刻な顔で待ってました。

言いにくいのですが、血液検査の結果が良くないです。
貧血が有るし黄疸もでてます。 
お腹にも水がたまっていました。
猫伝染性腹膜炎、FIP(エフアイピー)の可能性があります。
命に関わる病気です。
人間の新型コロナとは別のウイルスですが、
同じコロナウイルスの一種です。
人にも犬にも移りません。

治らない病気でしたが、、、
人間の新型コロナウイルスが蔓延したおかげというか、
この半年ほど前から、人間のコロナの薬が使えるようになりました。
最初の3日間は薬代だけで2万円、4日目からは薬代が1万円で、
84日間治療しなければなりません。
検査に出したのでその結果が返ってこないと確定はできないけれど、
明日また連れてきてください。

(じいじが携帯に録音させてもらっていた獣医さんの説明を要約)

じいじとばあばは、放心状態で、病院から家まで
車の中でもほぼ無言でしゃべれなかったそうです。


発病前のミミ 

2万円×3日+1万円×84日を乗り切れば

致死率ほぼ100%→20%へ

「FIPかもしれないといわれた」
夕方、ばあばから電話がかかってきました。

FIP?
猫伝染性腹膜炎(FIP)のことについて、私は何も知りませんでした。
命に関わる病気だときき、愕然としました。
仕事中でしたが、すぐFIPについて検索しました。

致死率ほぼ100%

数日〜数週間でほぼ100%が命を落としてしまう…。
治療法は確立されていない。

そのような絶望的な情報がかかれているサイトも多くありました。

ただ、ここ2〜3年で治療法が出てきていて、
新薬を使えば80%ほどの猫が助かっている!
数々の獣医さんのサイトやFIP闘病記を読んで、希望があることもわかりました。
そして、国際猫医学会の報告書にたどり着きました。
(英語ですが、Deeplの自動翻訳でかなり読めました)

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1098612X19825701

症例数は少ないですが、確かに80%が治って(寛解して)います。

助かる可能性があるなら治療したい。
このまま治療をしなければ、確実にいなくなってしまう。

ただ、2万円×3日+1万円×84日の治療費を用意できるのか。
私がどうにかするしかない。
あれを解約して、あそこから借りて…頭は混乱していましたが、
現実的に考えなくてはなりません。

なんとか助けたい助かるかもという気持ちと、
ダメかもしれないという気持ちで、感情はジェットコースターのようです。

何をしていてもミミのことばかり考えてしまっていました。


発病前のミミ

<12月2日>

朝、じいじとばあばが、ミミを病院に連れて行きました。

「結果は、まだ検査機関から返ってきていないけれど、
 もうFIPとして治療を開始した方がいいと思う」
「今日から3日間は、点滴でゆっくり投与しますので、
朝連れてきていただいて夕方迎えに来て貰うことになります。
4日目からは、注射で投与になります」


薬は新型コロナウイルス感染症のためにも使われている薬でした。




2万円×3日+1万円×84日
(注)それぞれの猫の体重などによって使用量が変わるようなのでミミの場合の目安です)

ざっと計算して薬代だけで87万円

ひとりで子どもを育てるために、
4年前に会社をおこし、軌道に乗る前にコロナ禍へ。

もし私が普通にどこかで正規雇用で働いていたら…
ボーナスでなんとでもなるくらいの額なのかもしれない…

貧乏くじ世代、氷河期世代、ロストジェネレーション世代…
いろいろ言われる世代だけど、
私が不安定な人生を送ってきたのは社会のせいだけにできない…

84日間の治療費をポンッと用意できない自分が情けなくなりました。

でも、きっと借り入れは受けられる!
保険も解約すればいくらか戻ってくる、貸し付けも受けることができる!

とにかく、私がなんとかするから!
じいじとばあばは通院頑張って!

そういって走り出しました。


まだ来て数日の頃かな

今は助けてもらおう、そして恩送りしよう

猫好きの友人から「クラウドファンディング」を考えてはどうかというアドバイスをもらいました。

本来であれば、飼い主の責任として全額負担するもの。
ただ、今は本当に、今すぐ必要な治療を助けてほしい。

考えて考えて、
「今、私は困っている。ミミを助けたい。」
「今は私は人に助けてと言おう。そして、次は私が助ける側に回ろう」
「批判は覚悟しよう」
「ミミの治療の経過が、FIPは治る病気になったと言える一歩になるかもしれない」
と、クラウドファンディングの準備をすることにしました。

また、ミミが新しい薬による猫の伝染性腹膜炎FIP治療の症例になって、
もっと安価に治療ができるようになって、
辛い思いをする猫ちゃんや飼い主が少なくなれば!と。

【12月3日】

投薬2日目です。
右手に★模様の包帯が巻かれているのは、
点滴用のルートを確保しているためです。


【12月4日】


点滴3日目です。
検査機関から病院にFAXがあったと言うことで、見せてもらいました。
FIPV + 陽性 猫伝染性腹膜炎の診断が確定しました。

【12月5日】

投薬4日目です。
この日から注射になりました。
そして、「明日からは自宅で注射をしてください」と言われ、
じいじ&ばあばがレクチャーを受けてきました。
頑張って!じいじ&ばあば!

【12月6日] 

はじめての自宅注射。
ばあばはためらって、ミミも少し鳴いたようです。


【12月7日】
注射は上手くいったようですが、あまり体調が良くなさそうでした。
また下痢になっているようです。
それでもカリカリを少し食べるので、頑張ってと、祈るのみです。

【12月8日】
下痢が続くので動物病院へ電話し、下痢は体力をなくすからと下痢止めをもらいに行きました。負担を掛けないように、ミミは連れて行かなくて良いと言うことでした。
一日、ばあばの膝の上から離れない日でした。

【12月9日】
下痢が治らず、少しカリカリを食べては自分のケージの中で寝ています。

【12月10日】
お腹の調子は治りません。
お腹も腹水がたまっているのかポッコリしています。
でも、たくさんは食べませんが、少しずつは食べています。
一日中、ケージの中の自分のベッドで寝ていて、出てこようとしません。

【12月11日】
日中は、じいじ&ばあばが出かけるので、私と子どもが付き添いました。
お腹の腹水が目立ちます。
病院に電話しましたが、腹水は来週見せてくださいとのこと。
下痢止めだけもらいに行きました。

子どももだっこしたいのを我慢して、手で枕をしています。


【12月13日】
注射の液を常温にするのが短かったと言うことで、少し痛がったそうです。
この日は、ケージから出てきて、ばあばの膝の上で30分くらい寝ていました。

【12月15日】
昨日までは少しは食べていたのに、食べなくなりました。
毛があるのでわかりませんが、さわると骨が当たります。
痩せてしまっています。

【12月16日】
食べないので、病院へ。
「病気の勢いがすごいですね…」
腹水を抜いてもらいました。
ステロイドと抗生剤と、栄養の点滴を打ってもらいました。

【12月17日】
病院でもらったadの缶詰を少しずつですが食べています。
昨日よりは食欲がある感じです。
自分のケージからは出てきたので、少しは気分が良いのかな。

【12月18日】
食欲は無いものの、ここ数日と変わらない日中を過ごしました。
夜になって、いつも上がれる段差を上がれなくなりました。
みると、後ろ足がヨロヨロしています。

うろうろとどこかへ行こうとします。
壁にぶつかってはしゃがみ込みます。

「ミミがおかしい」
「今夜が山かもしれない」

ばあばから電話があり、すでに子どもの寝る時間でしたが
あわてて実家に向かいました。

苦しそうなのに、ヨロヨロと動いてどこかへ行こうとします。
目も見えてなさそうです。

横たわるミミをそっとそっとなでてやりました。


【12月19日】
朝7時過ぎ、ばあばからSMSが来ました。

「6時まで息をしてたんだけど、今、ミミがナナの所へ行きました」

「わかった。子どもには、夜、伝えます」

子どもには伝えず、そのまま学校へ送り出しました。
泣くのをこらえ、あふれてくる涙は、
鼻風邪を引いていたのを良いことに鼻をかんでごまかしました。

子どもを送り出し、声を上げて泣きました。

仕事を終え、子どもの習い事に迎えに行きました。

何も知らない子どもは、いつも通り車の中でパンを食べながら

「ミミたん、大丈夫かな」
「今から、ばあばんち行くよ。ミミたんね…」
「元気になりますように」
「ミミたんね…ナナのところへいったよ」
(私の方が声を上げて泣いてしまいました)
「しんじゃったってこと?」
「うん」

実家へ向かう途中、
子どもは、今日あったことなどを明るく話してくれました。
まるでミミのことなど気にしていないように。

小学校低学年です。
よく理解できていないのか、
それとも暗くなってしまっている私を気遣ってか、わかりません。

実家に着くと、すぐに
「ミミた〜ん」
と走って行きました。


フワフワの毛はそのままで、
冷たく固くなってしまったミミをなでて…


ようやく大泣きしました。
声をワーワー上げて泣きました。

私もばあばも一緒に泣きました。

「止まらない〜」
「泣きやめない〜」

「泣き止まなくて良いよ」
「今日は泣こう」

いっぱい泣きました。

「今は助かる病気」だと言いたかった。
でもきっと言えるようになる

ほんの3年前まで助からないと言われていた猫伝染性腹膜炎は、2019年の国際猫医学会での報告を受けて助かる可能性が高まってきています。
ただ、薬剤が高価なこと、まだプロトコルとされる治療方法がそれぞれの動物病院まで浸透されていないことなどで、助かる方法でのFIPの治療はまだまだ浸透していないようです。

本当は、ミミの治療を成功させて、症例のひとつとなって、
同じように苦しむ猫たちや飼い主の方達に希望の光を見てもらいたかった。

「猫伝染性腹膜炎FIPは、今は治る病気だよ」って言いたかった。

クラウドファンディングはようやく審査が通り
翌日(2022/12/20)の午前10時に公開予定になっていました。

公開予定だったクラウドファンディングのプレビュー

でもね。何より、ミミたん。ありがとう。
3ヶ月と18日。
私たちはミミと過ごせて、とても幸せでした。
ミミと出会えて本当に良かった。

5ヶ月と4日という、短い猫生だったけど、
生まれてきてくれてありがとう。
出会ってくれてありがとう。

2022年12月19日

気持ちの整理のために、
そして、支援するよと言ってくれていあ友人達への報告として。

そして最後にやっぱり言わせてください。
FIPは、今は治る確率が高くなっている病気です。
飼い主さん、獣医さん、どうか1分1秒でも早く見つけてあげてください。

福井一恵


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