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誰が我が家の下水道管を破壊したのか?

我々が住んでいる街は遠い昔は沼地だった。そのため至る所に大きな木がおおい茂っている。飛行機から見るとまるで林の中に家がある感じで壮観だ。我が家の庭にも大きな木が一本ある。その木のおかげで、夏は強い日差しが遮られ室内は快適になる。秋になると落葉して、今度は家の中に暖かい冬の光が差し込む。そして初夏になるとまた一面緑に覆われる。我々はこの自然の恩恵を20年以上無償で受けてきた。しかし今年の夏、ついにその代償を払わされることになった。

我が家は1962年築の古い家。60年以上もシカゴの風雪に耐えてきた昔ながらの強固な煉瓦造りの家だ。しかしながら古い家には大きな問題がある。その一つが下水道管だ。1962年当時の下水道管は粘土を焼いた陶器のパイプを使っていた。陶器なのでパイプ同士の繋ぎ目はゆるゆるで隙間がある。長い時間をかけて、その隙間から木の根が侵入しパイプの中で成長していく。その結果、下水道菅は詰まり、挙げ句の果てにはパイプが割れてしまう。ついにそれが我が家に起こった。原因は庭にある、あの大木だった。この木の真下を下水道管は通っていた。その深さは地下4メートル。この木の所有権は市にあったので、この木を切ることはできない。だから全く新しいポリ塩化ビニル(PVC)の下水道ラインを引くことになった。この大木は救われ、我々が20年以上受けてきた恩恵は継続することになった。もう木の根が下水道菅に入る心配もなくなった。


新しく導入されたが下水道管

考えてみると、この大木は我々が出す下水を栄養源として、すくすくと育っていた事になる。この木と我々は繋がっていたのだと思うと、思わぬ大出費にもかかわらず何故か感慨深い。あまりに育ちすぎて下水道菅を破壊してしまい自ら栄養源を絶ってしまった。なんとなく悲哀も感じる。古い下水道管はすでに封印され、もう我々の下水からの栄養をこの木にあげることはできなくなった。なんとなく寂しい。今後は一体どこから栄養を取るのだろうか。きっと賢い木だからお隣の古い下水道管にすでに触手を伸ばしているに違いない。

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