私にとっての新訳『機動戦士Zガンダム』
こんにちは。
Kazuhiraです。
久しぶりに『劇場版 機動戦士Zガンダム 3部作』を観た。
大人になってじっくり観てみると、とてもメッセージ性が強い作品ということがわかった。
今回は、そんな新訳『Z』を観た感想を書いていこうと思う。
・新訳『機動戦士Zガンダム』とは?
まず、この作品について書いていこうと思う。
この作品は、1985年から1986年にかけて放送されたアニメ『機動戦士Zガンダム』全50話を再編集し、完全新規作画を追加し、劇場版として再構成された作品。(リメイクではない)
作品名 『劇場版 機動戦士Zガンダム A New Translation』
第一部 「星を継ぐ者」劇場公開:2005年5月28日
第二部 「恋人たち」劇場公開:2005年10月29日
第三部 「星の鼓動は愛」劇場公開:2006年3月4日
本作はTV版全50話を映画三部作にまとめたもので、コンパクトで観やすい内容になっている。
もしまだ『機動戦士Zガンダム』という作品を観たことがない人がいるとすれば、映画版から観るのも一つの手だと思う。
というか、私自身、TV版を観たことはない。
新訳『Z』が、私の中のZガンダムの基盤になっている。
・物語の背景
ここで、簡単に『機動戦士Zガンダム』のストーリーを書いていこうと思う。
時は宇宙世紀0087。『機動戦士ガンダム』で描かれた一年戦争から7年後が舞台。
一年戦争では地球連邦軍とジオン公国との間に激しい戦いが繰り広げられたが、地球連邦の勝利によって終戦を迎える。
その後、世界には平和が訪れた…。と言いたいが、そうもいかない。
戦後の動乱で地球連邦は腐敗の一途を辿り、スペースノイド(宇宙に住む人々)の弾圧を目的に、治安維持部隊の「ティターンズ」が連邦内部に設立される。
ティターンズのやり方に意を唱え、事態に対抗するため、反地球連邦政府の組織として結成された「エゥーゴ」。今作の主人公であるカミーユ、クワトロは、このエゥーゴに所属する。
ティターンズ、エゥーゴ、そしてジオン。最終的に三つ巴となる戦いは、後に『グリプス戦役』と呼ばれ、激しい戦いが繰り広げられる。
・新訳『Z』と私の出会い
私がこの新訳『Z』という作品に出会ったのは、私が小学生のころだ。
私は、おそらく幼稚園の頃から『ガンダム』という作品に触れていた。
第08MS小隊、0083などのVHSをツタヤで借りて、よく分からないながらも熱中して観ていた記憶がある。
小学生になり、父親が一本のDVDを買ってきた。
それが、本作の第一部『星を継ぐ者』だった。
当時小学生の私は、すぐさまこの作品の虜になった。
劇場版の完全新規作画は、それは美しいもので、かっこいいMSの動き、登場人物たちの日常が彩られるシーンが、大好きだった。
特に、ガンダムMk-Ⅱが、ガルバルディβにキックをかますシーンは最高だ。
その後、どのタイミングで第二部、三部を観たのかは覚えていない。
ただ、子どもの頃からこの作品が好きだったことは間違いない。
・なぜ今、新訳『Z』を改めて観たのか。
時は過ぎ、現在私は25歳。
今年に入って、この作品のBlu-ray を購入し、作品を観直した。
それは、妻の一言が大きい。
我が家では、夕食時、何かしらのアニメを1〜2話観るという生活スタイルになっている。
私が機動戦士ガンダムユニコーンRE:0096を観ていると、妻が「アムロとかシャアが出る作品も観てみたい。」と、宇宙世紀シリーズに興味を持ってくれたのだ。
私は嬉しくてたまらなくなり、すぐさまNetflixで劇場版 機動戦士ガンダム三部作を妻と観た。
古い作品ということもあり、観ていて辛くないかと心配もしたが、それは杞憂だった。ファーストガンダムのシンプルながらも重厚なストーリーに、妻もはまっているようだった。(キャラクターを覚えるのには四苦八苦している様子だった。)
そこから、続きを観て観たいという話があり、私はすぐさま新訳『Z』を推した。
私自身がTV版未視聴ということもあるが、初心者にいきなりアニメ50話見ようというのも酷な話だ。
なので、すっきりまとまっていて観やすい、劇場版三部作を観ようと思った。
そういった意味でも、新訳『Z』は、未視聴の人にも勧めやすい作品なのかなと思う。
しかし、そこで問題が。
新訳『Z』がNetflixから外れてしまっていた。
これは失敗した。タイミングが悪い。と思っていた時、気づけば私はAmazonに検索をかけていた。
すると、ガンダムのBlu-rayシリーズで、『U.C.ガンダムBlu-rayライブラリーズ』なるものを見つけた。
これは、シリーズ40周年を記念して、ガンダムシリーズの宇宙世紀作品がお手頃な値段でリリースされているものだ。
男というのは、やはりコレクションを求めてしまうものなのだろうか。
こういった企画が統一されたシリーズを見てしまうと、揃えてしまいたくなる。
すぐさま私は、新訳『Z』のBlu-rayをポチっていた。
・『機動戦士Zガンダム』という作品
さて、前置きが長くなってしまったが、ここからは私が新訳『Z』という作品を観て、感じたことを書いていこうと思う。
まず、大人になって『ガンダム』という作品を観て毎回思うのだが、こんなにメッセージ性が強い作品なんだな。と、強く思う。
以前までのZガンダムの印象は、魅力的なキャラクター、かっこいいMSたちの動き、などが見どころだよな。と思っていた。
しかし、大人になると、登場人物たちの一つ一つの台詞、複雑な人間関係から生まれるドラマ。そういったものが見えてくる。
Zガンダムを観ていると、他のガンダムシリーズ以上に『愛』が描かれているのかな、と感じた。
カミーユを取り巻く環境、ジェリドを放って置けない女性陣、クワトロ、レコアの複雑な関係、ヘンケン、エマの純朴な恋模様、シャア、ハマーンの確執…。
どれをとっても、子どもの頃には深くは考えられなかった描写だ。
・カミーユの一言が、心に刺さった。
三部作を観て、一番印象に残った台詞。
それは、第二部『恋人たち』にて、ニューホンコンで、暴走するサイコガンダムをガンダムMk-Ⅱが止めようとするシーン。
ここでのカミーユの一言が、私は気に入っている。
これは、カミーユとフォウが対面で話し合うシーンでの一言。
記憶が欲しい。自分を知ってほしいと切望するフォウは、カミーユに対して
「カミーユは私を知った!」と、言い放つ。
その時、カミーユがフォウに向かって放った言葉が、「知ってくれている人がいるから、生きていけるんだろう。」だ。
私は、このやりとりが凄く好きだ。
大人になった今なら、カミーユの言っている言葉の意味が理解できる。
・人は、独りでは生きていけない。
うつ病になって、療養のため自宅で一人になることが多くなった今、カミーユのこの言葉は、私の心に強く刺さる。
自宅にいるとき、何かに没頭しているときは、良く言えば、何も考えなくて済む。怖くなくていい。
しかし、少し時間が空くと、どうしようもない孤独感・無力感を感じることがある。
そんな時、私はカミーユの言葉を思い出す。
そう。自分を愛してくれている妻。自分を大事にしてくれている両親や兄弟がいる。
自分を知ってくれている人がいてくれる。
その事実を思い出すだけで、自分は独りではないし、生きていていいんだ。と思える。
今まで、『機動戦士Zガンダム』を観ていて、特に気に留めなかった台詞が、今は心に刺さる。
『ガンダム』という大きな作品は、観る人の年齢、ライフステージ、心の状態などによって、様々な捉え方ができる、深い作品だな。と改めて感じた。
・エンタメへの昇華
この新訳『Z』のラストシーンは、TV版とは全く違う。
TV版のラストでは、主人公であるカミーユが精神崩壊してしまうという、悲しい結末だが、新訳『Z』では、カミーユは精神崩壊することなく、ハッピーエンドとしてエンディングを迎える。
このラストシーンが賛否両論のようだが、私はこのシーンがとても好きだ。
多くの人が命を落とし、壮絶な体験をするカミーユ。しかし最後にはそれを乗り越え、倒すべき敵を倒す。
そして、最後には愛する人と抱き合い、これからも生きていくことを誓う。
私は、久しぶりにこのラストシーンを観て、思わず涙ぐんでしまった。
やはり、自分を知ってくれている人、愛する人がいるというのは、素晴らしいことなんだな。と再認識できた。
富野監督へのインタビューで、この作品について語られていた。
単なるリメイクにしない。
TV版は「冷たい」新訳は「温もり」が作品のイメージ。
いびつな『機動戦士Zガンダム』という作品を、映画を通して「エンタメ」にする。
マイナーからエンタメへの引っ越し。オタクの「内にこもっていく心性に惹かれる」という病気を治したい。
エンタメ性。『娯楽』という意味。
私が作品を観る上で、無意識に求めているものかもしれない。
やっぱり、ハッピーエンドが観たい。
自分の好きなキャラには幸せになってもらいたい。
そう思ってしまう。
そういう意味では、TV版を再編集してこの結末に導いてくれた富野監督には、感謝したい。
こうして、作品を通して心が救われる人もいるのだから。
・私にとっての新訳『機動戦士Zガンダム』
自分が生まれるずっと前に放送された作品。その再編集版である映画に子どもの頃に出会い、大人になって改めてその作品を観て、こうして新しい気づきがある。
なんて幸せなことだろうと思う。
私にとって『機動戦士Zガンダム』は、「自分の存在を肯定してくれるもの。」
になったのかもしれない。
これからも、作品を観る度に新しい発見があったり、価値観が変わったりするかもしれない。
そんな自分の変化を楽しみながら、『ガンダム』という素晴らしい世界を、これからも楽しんでいきたいと思う。
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