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『風は遠き地に』第二章にまつわる雑記

 2023年現在、メインで展開している長編ファンタジー小説『風は遠き地に』。
 Webでは相変わらず、解説や後書きも付けずに淡々と掲載しているのですが、もう少し突っ込んだネタバレが知りたい、なんてたまに言われるので、第一章の雑記(https://note.com/kazuki_yuki/n/n91937a1ea134) に続き、第二章についてのお話です。
 まだ未読だからちょっと待って〜という方は、ひとまず以下のサイトなどで本編をご覧頂いてから、また読みにいらして下さいね。

『風は遠き地に』掲載場所はこちら
📚 小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n5601hf/
📚カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16816700428155671702
📚 pixiv https://www.pixiv.net/novel/series/7877578

1993年頃の未完の物語が発見、再構築されて公開されるまでの雑記はこちら↓

イルギネス、登場

 第二章の冒頭<出会い1>から、いよいよ啼義の生涯の相棒となるイルギネスが登場します。
 ここ! 実は、未完で放置の1994年の原稿の文章を、ほとんどそのままで使っています。イルギネスにモデルがいるのか? っていうのもたまに聞かれるんですが、今現在だとその答えは8割方イエス。でもこの頃はまだ、そのモデルには出会っていません。にも関わらず、イルギネスのイメージはこの頃からブレていないのです。ある意味予知? とにかく、自分的には最大に惚れた相手の要素がふんだんに入っていて、彼については一番納得のいくキャラクターでもあるんだけど、書き始め当初には、まだ出会っていないんですよ。めっちゃ前向きに解釈するなら、彼のモデルとなる人物に会う必要があったから、作品が未完で止まっていたのでは? というくらい(絶対違う)。
 ただ、ここから先は本当にもう、草稿すらない状態へと突入していきます。未完の原案を作った自分が、どこまで物語を作っていたのかの記憶も既に曖昧だったので、もうなかったものと考えてのリスタート。ここからが、今の自分が引き継いでの、ほとんどイチから作った物語となります。

信頼関係の構築

 イルギネスの救助によって一命をとりとめた主人公・啼義(ナギ)は、全く土地勘がない、もちろん知った人間もいない土地で目覚め、状況が全く把握できないながらも、なんとか生きるしかないという状況に放り出されます。果たして、目の前にいる男=イルギネスは敵か味方か? みたいな、潜在的にはかなり疑心暗鬼になっていて、でも、頼れる人も他にいないので、イルギネスの申し出を受けて、彼の旅に同行することに。
 冒険ファンタジーではよくあるパターンだけど、大体、全く知らない人間でしょ? それを、読んでて不自然にならないようにどうやって打ち解けさせ、キャラ同士の絆を構築していくのか。これは結構、気を遣う流れだったりします。啼義とイルギネスは男同士なので、男女だったらもっと高かったであろう警戒線を下げられたのは、助かりましたね(笑)。あとはやっぱり、イルギネスの性格が大きい。彼が主役の短編や、本編を読み進んでいくと分かるんですが、彼は人たらしなんですよ。なんか分からないけど、普通よりは最初から好感度が高くて、相手の警戒を解きやすい雰囲気がある。でも、どう書いたらそれが出せるかは、あんまり考えてません。そう見せようという計算はなくて、今まで自分が会ってきた、そういう雰囲気の人のイメージを浮かべながら、感覚で書いてます。……って、何の参考にもならないこと言っててすいません(汗)。でも実際、キャラの言動については、ざっくりイメージにある人物像を当てはめて、だったらこう言うかな、こう動きそうっていう、ごくごく直感で書いています。
 あとは……そうだなぁ。
 普段から、何かあるごとに、「このシチュエーションだったら、あのキャラはどうするかな」って言う妄想はしてるので、そういう引き出しはストックしているかな。Twitterのタグとかで、よく色々回ってくるアレです。「キャラの食事事情」とか「この表情が見たい」みたいなの。そういうネタで、キャラのイメージを深めておくのは、有効だと思います。

ダリュスカインと結迦(ユイカ)の思いは何処へ

 ダリュスカインがメインで展開する、第二章の後半。
 これ、結構な誤算がありました。
 というのも、結迦(ユイカ)があんなに重要な役割になる予定はなかったんです(爆)。ただ、ダリュスカインを助けて、見送る人間が欲しいなと思ってただけなのに。おそらくは、二十歳なんていう、年頃で可愛い女子にしてしまったのが原因です。
 ダリュスカインは27歳。こちらもまぁ、良い年頃ですよね。でも彼は、幼い頃から魔術道に邁進していて、約10年前に家族を失ってからは、自身の悲願と共に生きてきました。なので恋愛感情なんて、知ったこっちゃないわけです。
 だけど彼の心を動かしたのは、亡き母の瞳と似た、結迦の深緋色混じりの紅い瞳。そして、過酷な目に遭ったことによって、声を失っていたという事実でした。
 笑ったらきっと可愛いのに、笑顔の欠片も見えない結迦。生きていても辛いだけかもと思いながら、終わらせることも出来ない。ダリュスカインの気持ちと、彼女の気持ちは、いつしか寄り添い、そうと知らず惹かれていきます。
 けれど、これに待ったをかけたのが、結迦と共に生き延び、彼女を実の娘のように思っている老爺・宗埜(ソウヤ)。彼は、ダリュスカインが何やら不穏な空気を纏い、心に闇を抱えていることを見抜きます。これ以上、結迦が辛い思いをすることがあれば、彼女は今度こそ壊れてしまう。宗埜はダリュスカインを、いにしえの祠へ導き、釘を指します。

「私が、お前さんにここを教えた理由が、分かるかね?」
 こちらに目を向けた宗埜の声は、いつもより低い。風のざわめきが、耳を掠めて去って行く。ダリュスカインは何とも答えられずに、手元の握り飯を見つめた。
「結迦から、引き離したいからさね」

『風は遠き地に』<第二章 道なる大地 /南へ 4>より

 ダリュスカインも、結迦が自分の心に、思いを重ねてきていることは気づいています。そして彼も、結迦にすでに惹かれているからこそ、自分がそばにいてはならないことを、痛いほど自覚している。
 彼は答えます。

「大丈夫です」
 一瞬、言葉を探したが、彼はきっぱりと答えた。
「長居するつもりなど、毛頭ありません」

『風は遠き地に』<第二章 道なる大地 /南へ 4>より

 やがて準備が整い、日が昇る前に結迦たちと暮らす小屋を出発したダリュスカイン。途中で休憩をとって、昇ってきた朝陽を眺めていると、なんと、結迦が追ってます。さすがのダリュスカインも驚き、健気に坂を上がって来る姿に逃げるわけにも行かず、追いついた結迦は、自分が大切に持っていた、紫水晶の勾玉を彼に託すのです。
 これは、何かの伏線になるのか?
 それは分かりませんが、二人は結局、本当に一瞬の抱擁だけを記憶に残し、道を分つのです。
 この二人の描写は、崖っぷちというか、これっきりという想い、それでも伝えずにおれない、突き動かす感情をテーマにしています。勿論、再構築のざっくりあらすじには、そんな要素は微塵もありませんでした。二人が惹き合うのは全くの予想外でしたが、これによって、ダリュスカインの人となりと、天才ゆえの秘めたる苦悩や葛藤をより深く描けたので、終わってみれば必須のエピソードだったように思います。

 というわけで、以上が第二章の裏話的雑記でした。物語の連載は現在、佳境へ差し掛かろうとしています。引き続き楽しんで頂けたら幸いです。
 この後の展開も、どうぞお楽しみに!
 ありがとうございました。

<『風は遠き地に』は以下で連載中>
📚 小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n5601hf/
📚カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16816700428155671702
📚 pixiv https://www.pixiv.net/novel/series/7877578

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