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PTAと地球に関する長文ドラフト

今年度、息子が都内某小学校に入ってからの学びをもとに、これからの地球のためへの提言をまとめました。長文です。

①「PTA広報」になってみた

今年度から、自分が親として、息子の小学校「PTA広報」担当に就きました。

これまで20年以上、プロとしても、プロボノ(=仕事のスキルを使ったボランティア)としても、さまざまな広報に従事してきました。少しはわかったつもりでいたら、世界は広い。「PTA広報」は、まったく違います。これは新しい学びです。

ぜひ、ビジネスや広報分野の保護者や関係者達に知ってもらいたい、と思いました。そして、しまいには地球問題にたどり着きました。
まず、PTAに参加した経緯からお伝えします。

PTAって何ですか?
まずはPTAの解説から。PTA は、ざっくり言うと保護者と先生の協会。保護者と先生で構成される、社会教育法上の「社会教育関連団体」です。戦後日本の“民主化”のため、文部省(現・文部科学省)のもと71年前に発足しました。PTAは ”Parent-Teacher Association”の頭文字です。

なぜPTAがあるのでしょう?学校での教育や、家庭での教育とならんで、地域とともに取り組む「社会教育」や、保護者・先生自身の「成人教育」を推進するためです。

どういった組織でしょう。各学校のPTA(単位PTA)と、単位PTAが集まった市町村・都道府県・全国の各レベルのPTA連合体によって、全国組織化されています。

PTAは世界にもあるのでしょうか。日本へはアメリカから紹介されました。同様の取り組みは世界各国にあります。
(参考:日本PTA全国協議会 はじめましてPTA

先に保育園から
わたしも子どもの頃、母を学校で見かけてびっくりして「なんで~!?」と聞いたら、「今日はPTA~」と言っていたのを覚えています。

自分も親になったので、昨年度、まずは保育園のPTA会長を担当してみました。"小学校前の心の準備"くらいの気持ちで引き受けました。

結果、何の苦労もなかった。先生にサポートしてもらいながら、友人と一緒になって、年2回のお遊びイベントの企画とあいさつをする程度。子どもたちの笑顔をながめながらニコニコ楽しく運営しました。

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小学校にはいったら
PTAは、小学校に入るとなると、とたんに雲行きがあやしくなってきました。“PTA”という言葉に眉をひそめる人が多くなり、諸先輩方のホラー話が聞こえてきました。

「最初の会合に行くと、役員が決まるまで帰れない」
「病気のときに推薦委員から"次期役員になってください"と2度目の電話かかってきて、"無理です!"と悲鳴を上げたらガチャ切りされた」
などなど、リアルに人権無視のような話もチラホラ。

今の時代、周りを見回しても"PTAに入りたい"、"PTAの役に立ちたいから役員になりたい"という人はレア(まれ)という状況に気づきました。

だから入ろう
実際、小学校の入学式が終わり、たくさんの配布物のなかにPTA関連の資料を発見。

まずは入ってみよう、と思いました。自分の仕事柄、広報委員を希望して、自分(息子の母親)の名前で申込みました。

そして迎えた最初の会合は、図書館がいっぱいになる大人数、そして出席者が会長以外99%女性で圧倒されました。そういえば保育園のPTA役員会も女性ばかりでしたが、子どもが小さくて心配でそばにいたかったので、PTAの業務が女性に偏っていることに気が回っていませんでした。

それまでの保育園の全学年行事には、父母が参加するケースが多かった。日常のビジネスシーンでも男女半々。そこからくる無意識のうちに、まさか子どもを守るPTAの最初の会が、女性ばかりだとは想定していなかった自分に気づきました。

お母さんの会でいい?
その女性ばかりの名簿をみて、またハッとしました。申込時に保護者の氏名欄が1つしかなかった。お母さんが記入し、自動的にお父さんが排除されがちな仕組みになっているのでは...。
家庭の仕事が、お母さんに集中していることの表れだと思いました。

PTAという組織が子どもを支える活動をするうえで、多様性がなければ視野が狭まり、思考が固まる。PTAが、社会教育・成人教育を目指す団体ならば、男性等が入れないのは機会の不均衡。そんな構造のゆがみに、静かに怒りが湧きはじめました。

編集しますよ
その日の議題は、広報部を含む「常任部会」の中で委員長、副委員長等の役員を決めることでした。
あからさまに"みんな嫌だよね"というささやきが聞こえるなかで「そもそも何をやるかわからないので、嫌もなにも、できるか否かもわからない」と発言すると、前任の委員長さんたちがこれまでの活動を説明してくれました。

ちなみに広報部の場合、活動は「広報紙の発行」、以上。
企業や組織の広報運営の視点から見ると、広報紙はあくまでも発信ツールの1つ。なぜ広報活動が広報紙の発行か、そもそもの議論がないことに驚きました。

しかしそう言っても進まないので、わたしは編集という名の役員を引き受けました。

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②悩みはじめた

保育園広報会長を経て、小学校のPTA広報になると、自分のキャリアが広報なだけに、「広報観」の違いに悩み始めました。

説明がふんわり
小学校PTAの最初の会合で思ったのが、「そもそもPTAとは何か、説明らしい説明がない」。保育園のときも説明はなかったのですが、することがシンプルにお遊び会だったので違和感がありませんでした。しかし、小学校PTAは年間びっしりとプログラムがあり、本業やその他のボランティアを圧迫するので、優先順位付けが必要。そうなると、説明を求めたくなります。

しかし調べても、上述のようにPTAとは何かの説明がふんわりとしているので、活動のイメ―ジがわかない。つまり「何のために、何をやっている組織か分からないのに、半強制的にメンバーになって働かされる仕組み」が、とまどいを生んでいる。

これでは協力するモチベーションがわかないわけだ、と思いました。
そしてうっかり役員になると、1年間通して無償の重要任務を強いられる。
それは皮肉にも、現代の奴隷制度に見えました...。

みんな大好き「やり逃げ」
こうして、なかば強制的に働かされる"ほぼお母さんのみ"の集団は、経済的インセンティブ(動機)もないため「一番楽な仕事」のやり逃げを狙います。

ちなみに、ほとんどの家庭で、お母さんがお父さんに「仕事変わって」と頼む習慣がないため、PTA仕事がお母さんのみに押しつけられる構造ができ上っています。ヒアリングすると、女性の多くは、男性に仕事をさせることに暗黙の罪悪感を覚えることも分かってきました。

こうしてPTAでお母さんたちが「一番楽な仕事」と狙うのが、"広報"です。
一見、華やかにも見える広報は人気。力仕事もないので、コミュニケーションが得意な女性にも向いています。

PTAは基本、日本人の大好きな「同調圧力(どうちょうあつりょく)」により、毎年きちんと「前例踏襲(ぜんれいとうしゅう)」をコピーしようとします。

PTA広報ではその結果が、毎年粛々(しゅくしゅく)と続く、広報紙の発行、という形になっていました。

広報の冒涜
わたしは内心、憤慨しました。日々、世界の広報のプロと、しのぎを削っている立場としては、差し出がましいですが「広報の仕事をなめるな!!」と怒鳴りたくなりました。これは正直に言って、広報の冒涜(ぼうとく)です。

しかし、「これがPTA広報である」と疑わず、純真無垢(じゅんしんむく)に真面目に取り組んでいる他のお母さん達を見て、グッと怒りを抑えました。まずは現状把握しよう、と気持ちを切り替えました。
そして次の打ち手を考え始めました。

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③広報紙づくりは楽しい

こうして小学校PTAの広報担当を務めてみて、これまでの自分のプロ、プロボノ(=仕事のスキルを使ったボランティア)としての広報観から、疑問が湧いてきました。わたしは、事例研究を始めました。

全国600名超のメンバーを数えるFacebookグループ「PTAを面白がる会」に参加し、"PTA広報"についての実態をヒアリングしました。

PTA広報は楽!?楽しい?
そこでのディスカッションから見えてきたのは、
「PTA広報は、仕事が少なくて楽」
「定型だからIT化、デジタル化できて楽」
「子どもの写真を優先的に撮れるから人気」
という共通認識(パーセプション)でした。

そしてどのPTA広報も活動は、異口同音(いくどうおん)に「広報紙の発行」

もちろん、広報紙には広報紙の価値があります。
広報紙づくりは、取材する相手を理解するきっかけを作り、メディアの力に触れ、記事というコンテンツを作る楽しみを生み、学校や地域とのつながりを強くします。
わたしもそれを今年度、身をもって体験しました。

わたしたちの場合
わたしが参加したPTA広報紙の場合は、まずは従来のやり方を真似ながら、クラウド利用の環境整備を進めてデジタル化を加速。業務分担は、いったん決めたものを各人のペースにあわせて随時見直し。わたしも海外出張の際は「バトンタッチお願いします~!」と声を上げました。

ふだんの仕事でクラウドツールの広報を担当していたので、実際のユーザー体験をできるのは非常に良い機会でした。かつ、自分が普通と思っていることが他の人にとってはそうでない、ということが、クラウドツールの使い方ひとつをとってもよく分かりました。

広報紙をつくる喜び
長年の広報人として、年3回の広報紙づくりを経て嬉しかったのは、日々、広報とは関係ない仕事をしている人々が、自分が取材したイベント、撮った写真がメディアの上で輝き出すのを見つける瞬間。文章やレイアウトに心をこめることで、情報に魂が入るのを見て「すごい~!!」と喜ぶ声を聞くのは、とても幸せな時間でした。

そしてそれを配布した後、街中で見て子どもに「ほら~、あれ、ママがつくった広報紙~」と言えるのはとても誇らしいもの。PTA広報紙が、学校と家庭と地域をつなげている、と実感しました。

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④Public Relations

学校PTAの広報紙を発行してみて、作る喜びやチームワークの楽しさを経験しました。しかしどうしても、広報のプロとして、許せない思いが抑えきれなくなりました。広報そのものは、広報紙だけでなくコミュニケーション全般をとりまとめる仕事だからです。

真の広報の広がり
そもそも広報とは、戦後日本に“民主主義”を広めるために紹介されたPublic Relations(PR)の訳語。さまざまなメディアを介した、社会との信頼関係のためのコミュニケーション活動を指します。

広報は多くの場合、情報収集、調整、執筆、編集、交渉、発表などに時間がかかります。そして、プレスリリースその他の発表資料、取材、会見、SNSといった形でコンテンツを提供し、いわゆる報道対応を行います。

これ以外にも、政治家やタレント、インフルエンサーの情報発信、企業や産業の広告キャンペーンなど、報道対応とは異なる場面でしばしば広報という言葉が使われます。デジタルメディアの浸透に伴い、広報の幅が広がっています。

(参照:PRとはなにか ~ PR会社の現場から(グローバル) , PR におけるイノベーションとは

目的によるブランドづくり
どの組織でも、なぜ広報が必要か、まず「目的」の定義が先決です。そのためには、組織としてのゴールと戦略の策定が必要です。

広報に取り組むには、組織としてのブランドを考える必要があります。広報の対象を、どう幅広い関係者、いわゆるステークホルダー(企業にとっては消費者、従業員、取引先、政府、地域社会、メディア、株主など)にやさしく受け入れてもらい、信頼、支持、行動してもらうか、を考えてブランド作りをします。この土台作りをしてから、具体的な広報手段を選ぶのです。
(参照:PRとはなにか ~ PR会社の現場から(日本)

怒りから希望へ
こうした議論がなく、手段を広報づくりに固定してしまうのは、残念ながら「手段の目的化」ではないでしょうか。

広報の価値向上を目指す者として強いて言うなら、「広報紙づくり」を「広報そのもの」とすり替えるのは、悪意がなくとも詐欺に等しいと思います。

それでは広報が持つ価値、つまりコミュニケーション活性化、ステークホルダーとの関係構築、組織の改善、ブランド強化といった力を放棄することになる。それは、本質的な広報ではない。

このように形骸化したPTA広報は、協力する保護者の善意を踏みにじってないだろうか。

などと考え、PTA広報紙を編集しながら時々、率直に「何をやってるんだ、わたしは」と思いました。

考えれば考えるほど憤慨し、「こんなPTA広報はおかしい!」と情けなくて、しまいには涙がほとばしりました。

そしてその後に、救いが見えてきました。改革の先駆者がいました。

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⑤「PTAを面白がる会」の広報改革

PTAを面白がる会」で「PTA広報」についてディスカッションする中で、イキイキとした変革事例が見えてきました。

変わるPTA広報たち
北九州市の中学校PTA広報では、「PTA広報紙なのにPTA活動を掲載していない」「校長が発行する学校新聞と重複していないか」といった疑問から、それまでのPTA広報紙を全面的に見直し。子どもたちのための改革の取り組みのひとつとして「生徒会ミーティング」を始め、子どもたちにPTA広報紙が必要かを問いました。

子どもや保護者たちに聞いて分かった「PTA広報紙を発行してほしい」わけは、「先生のことを知りたい」「下級生も卒業生との思い出がほしい」というもの。そこで記事トピックを改め、先生紹介、PTAによる改革の内容、一年の取り組みなどに変更。それまで載せていた固いあいさつ文は読まれないとわかり取捨選択。作りやすい形にして、子どもたちも喜ぶ意義あるものに刷新しました。

荒川区の小学校PTA広報では、広報委員のモチベーションの低さ、何のため・誰のために作っているかわからない広報紙について1年かけて話し合い、発行頻度とページ数を見直しました。同時に広報紙の目的を、「①PTAのブランディング、②PTA継続のための記録保持」と明らかにしました。そして、ただ子どもの記事を載せたPTA広報紙を発行するではなく、PTA活動によって子どもの笑顔が生まれたことをPTA広報紙が伝える、といった好循環に変わってきています。

練馬区の小学校のPTA広報では、「すべきことが“PTA広報紙を作る”というイメージにとらわれている」と気づきました。「PTAはどんなことをやっているのか、わかっているようでわかっていない保護者が多いので、それを伝えたい」と話し合い、全保護者を対象にアンケート調査。その集計結果を広報紙にしたところ、これが大好評でした。

こうした声を聞いて、次の道筋が見えてきました。地球問題にたどり着きます。

PTAを面白がる会

⑥ダボス会議からの学び

ここで話はいったん時事ネタに飛びます。なぜならビジネスパーソンと一緒に、PTA (Parent-Teacher Association) (上記①に記載)について考えたいからです。

毎年1月にスイスで開催される世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)、50回目の今年のテーマは、「ステークホルダーがつくる、持続可能で結束した世界」でした(プレスリリース)。

政治、経済、社会を代表する老若男女、世界のリーダー3000人が集まり、「株主優先」から幅広い「ステークホルダー」(ここでは従業員、顧客、取引先、地域社会、社会全体)優先へ転換し、“資本主義をどう良くするか”が議論されました。

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実はここに、前述のとおり''民主主義''をもとにした社会教育・成人教育を目的とするPTAが、日本の良さを生かして、企業と一緒に世界とつながるキッカケが隠れています。

なぜなら、「ステークホルダー資本主義」の指針となる「ダボス・マニフェスト2020」(原文)によって、企業が、どのPTAも属する地域社会、社会全体とつながることを、公約しているからです。同志がつながって、ビジネスの力を、子どものために活かすチャンスなのです。

WEFについて知ろう
ドイツのクラウス・シュワブ教授が1971年に創立した世界経済フォーラム(WEF)は、官民が協力して世界情勢を良くするために働く国際機関。ここでさまざまなリーダーが協力して、地球規模の問題について検討、議論しています。

1973年に作られた最初のダボス・マニフェスト(原文)は、あらゆるステークホルダーに貢献するためのマネジメント(経営層)のあり方を示していました。

第4次産業革命下の今、ダボス・マニフェスト2020では、主語が経営層ではなく「企業」。企業全体で、すべてのステークホルダーと一緒に、“持続性がある共通の価値を作ること”への取り組みを示しています。

この“価値”とは、利益とも読み換えられるでしょう。つまり、企業が「ずっと続く、ステークホルダーがお互い納得がいく、共通の利益」を求めよう、という提言と言えます。

(参照:第4次産業革命期における“経営者の心得”--「ダボス・マニフェスト2020」をひも解く「SEMICON Japan 2019」世界経済フォーラム日本代表 江田麻季子氏オープニングキーノート

企業が学ぶ時代
シュワブ教授は、「なぜ、よりよい資本主義のためのダボス・マニフェストが必要か」の中で、

“大企業自身が、共有する将来における大きなステークホルダーであることを理解しなければならない。自社の強み(コアコンピテンシー)を使い、起業家精神を維持することも必要だ。
しかしそれだけでなく、他のステークホルダーと、世界の状況を良くするために働くべきであり、それが究極の目的であるべきだ。”

と述べました。

「グレタ・トゥーンベリ効果」という章では、

「世界が注目する10代のスウェーデン人 環境活動家、グレタ・トゥーンベリ氏が、“今の経済システムに固執することは、未来の世代への裏切り行為であることを、世界に思い出させた”」

と述べ、50年越しのステークホルダー資本主義の推進を呼びかけました。

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David Attenborough and Greta Thunberg's plea for the planet ビデオ https://youtu.be/CMOEcUPGi9c #VoiceForThePlanet #WorldEconomicForum #Davos

つまり、世界の権威、80代のシュワブ教授が、10代のトゥーンベリ氏から学び、新しいマニフェストを書いてまでして、リーダーたちを「変わらんとあかんで~」と叱咤(しった)しているのです。

企業が、社会や若い世代から、学ばなければならない時代なのです。

日本、得意やん
なぜ、いきなり関西弁風になったかというと、このステークホルダー資本主義は、日本の近江商人の「三方良し」と通ずるからです。
世界経済フォーラム(WEF)日本代表の江田麻季子氏は寄稿Japan Times)で、

「日本は、江戸時代から明治時代にかけての近江商人の「売り手良し、買い手良し、世間良し」の精神を活かし、ステークホルダー資本主義をリードできる」

と述べています。

一方で、

「過去の継続では不十分。職場の多様性を高め、必要なスキルのギャップを埋め、女性の参加を増やさなければならない」
「リスク回避し、企業文化に働きかけ、イノベーションを促進してビジネスのダイナミズムを生まなければならない」

と呼びかけています。日本の良さを生かしつつ、変わろう、というメッセージです。


日本人の知らない民主主義?
エデルマン主催「2020 エデルマン・トラストバロメーター」(信頼指数調査)のセッション(2020 Edelman Trust Barometer Breakfast)は、データをもとに、資本主義だけでなく、民主主義も機能しなくなっている、と指摘しました。日本など数か国を除くと、世界では民主主義への不信感が高まっています。

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なぜ、日本は民主主義が支持されているのでしょう。パネルディスカッションでは、「ステークホルダー資本主義では世界に先んじていても、経済では失敗しているのになぜ?それとも、日本人は民主主義について考えることをやめた?」とモデレーターがつっこむ場面も。

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5人のパネリストの1人、グロービス経営大学院大学学長 堀義人氏は、「日本では人々が意見を言わない。福島原発の後は、誰もリスクをとりたくないから、ごく一部の人を除いて日本中が原発の議論を止めた」「日本人は議論を避ける。だからわたしや孫正義氏のような経営者が、声を上げなければいけない」と語りました。

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(参照:堀義人のダボス会議2020速報(2)トランプ大統領とグレタさん登場
2020 Edelman Trust Barometer Breakfast – World Economic Forum, Davos (Yahoo News)
2020 EDELMAN TRUST BAROMETER REVEALS GROWING SENSE OF INEQUALITY IS UNDERMINING TRUST IN INSTITUTIONS

声を上げていますか?
「“CEOが声を上げろ”とは、さすがグロービスの堀さん!」と思ったあなた、甘いです。(ごめんなさい、私見です)

堀さんは経営者、リーダーだから、自分自身から声を上げようというのは立派。それに頼るのは甘えです。甘えてもいいのですが、大人なら時には自立しましょうよ。

これまで長文で、日本におけるPTAの構造的なゆがみ、広報の機能不全、草の根の改革それぞれの例を紹介してきました。いずれも、PTAの存続に向けた地道な試行錯誤の上に成り立っています。

しかし実は、PTAの存続以前に、PTAがよりどころにしていた''民主主義''そのものが揺るいでいるのです。

PTAに顔を出さないお父さんたちが会社を信じて働いているうちに、資本主義が機能しなくなっているのです。

お母さんたちが家庭を守り、PTAのあり方が変わらずにいる間に、地球そのものの存続が危うくなっているのです。

どろ船化したPTAに乗っている暇はないのですよ。子ども達を守る環境が、どうあるべきか、保護者のひとりひとりが考えて、行動を変えなければならないのです。

それは、PTA活動だけでなく、家庭内の分担、働き方、消費、考え方、すべてです。

小手先でPTAの活動を見直すのではなく、いったい何のために何をすべきかを、生き残るために考え直す時ではないでしょうか。

PTAも、家庭も、会社も、属するすべての場で、「変わろう」と声を上げるべきは、わたしたちひとりひとりではないでしょうか。地球に関係ない人はいないのです。

⑦地球のために立ち上がろう

スイスなんて行ったことないし、WEFなんて聞いたことないし、という方は、もしかしたら「持続可能な開発目標(SDGs)」も苦手でしょうか。

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SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」がまとめた、2030年までの開発目標です。
その「誰一人取り残さない(no one left behind)」社会の実現を目指す取り組みは、文部科学省も事例を紹介して後押ししています

PTAでもSDGs
実はSDGsを使って、PTAが、地球について考える動きも生まれています。

都内某小学校のPTAでは、主催するお祭りで「おやこでSDGsに取り組もう」をテーマに掲げ、水素エネルギーをもとにした燃料電池でミニ四駆を走らせるデモなどを企画。これを開発した静岡県の高校生らが展示に駆けつけました。


生ごみから作ったバイオガスづくり体験は、東北にある大学院農学研究科の准教授が指導。ここで作ったバイオガスは、抹茶をふるまう茶道教室でお湯を沸かすのに使われて笑顔を生みました。さらには、宮城県パラリンピック聖火の燃料としても使用される予定です。


また、地元の畳店が、畳表の切れ端を提供。リユース素材を使ったしめ飾りづくりのワークショップもありました。


こうして、PTAの小さな取り組みでも、地球のために働くきっかけづくりに役立つのが「持続可能な開発目標(SDGs)」です。


SDGsは、決して絵空事でも念仏でもない。大人も子どもも、ひとりひとりが、地球を存続させるために、何ができるかを、考えるためのきっかけになるのです。SDGsが、地球上のあらゆる問題と、組織、人、生き物、環境を結びつけるのです。


PTAに企業を巻きこもう
「SDGsってよくわからない、形だけだよね」という声や、「はやりに乗って、SDGsって言いたいだけでしょ」という捉え方もあるかと思います。

実はだからこそ、SDGsを使って自分なら何ができるかを考えて、声を上げられる機会です。「子どもが楽しめることは何だろう」と思えば、それぞれが身近なことから始められると思うのです。

世代を超えた取り組みを行うことで、地域がつながり、世界が身近になる。SDGsをテコにしたPTA活動を通して、大人も子どもも笑顔が増える。

そこに企業が入ることで、企業は子どもや地域から次世代の消費者について学べる。企業が社会のステークホルダーとはそういうことではないでしょうか。PTAが社会教育を目的とするならば、積極的に企業からも学ぶべきではないでしょうか。

PTAが成人教育を目的とするならば、WEFもSDGsも海外だからわからない、人ごとだなどと思わないで、理解しようとすべきではないでしょうか。

PTAが子どもを守るためにあるならば
わたしのこんなひと言が、大した力にはならないことは、十分わかっています。

PTAという巨大でセンシティブな機構について語るリスクも、ソーシャルで炎上するリスクも理解しています。

PTAをビジネスやSDGsに結びつけることへのバッシングもあるでしょう。

しかし、PTA以前に、地球の問題のほうがはるかに大きいのです。PTAが子どもを守るためにあるならば、資本主義、民主主義を含む地球問題にこそ取り組むべきです。

わたしも、10代から20代の6年間、大学で南北問題、環境問題といった地球問題を研究テーマにしていました。それから20年以上たっても、地球の状況は悪くなるばかりです。責任はもちろん自分たち自身です。恥を知り、子ども達の未来のために好転させたいのです。

PTAに関わるすべての人にお願いしたい。自分のことだけでなく、社会のこと、世界のこと、未来のことを考えて、現状を変えていきましょう。
変わりましょう。地球のために立ち上がるPTAに変えていきましょう。

※本稿は「PTAを面白がる会」その他有志のご協力を得て執筆しました。現在まだドラフトです。



あくまでもわたしの経験談や私見、主観なので、間違いなどありましたらお気軽にお聞かせいただけると大変ありがたいです。小さなことでも知を集積して、他の方のお役に立てれば、と思っております。