ドラえもんの世界と私たちのプライバシー

Google I/Oが閉幕した。
毎年こんな大規模イベントが開催できて、しかも期待を裏切らないGoogleさん本当にすごいと思う。Pixel 3a超欲しい。

色々なことが発表されたが、個人的に良かったのはGoogleアシスタントだ。

旅行のためにレンタカーを予約したいと伝えれば、Googleカレンダーから旅行の予定を取ってきて予約できるレンタカーを表示してくれる。
なんなら予約に必要な個人情報もGoogleが知っている限りで勝手に入力しておいてくれる。
人間が行う操作はほとんど無くなってしまいつつあるようだ。

Googleレンズも圧巻だった。
画面に写った画像からレストランのメニューに書かれた文字を読み取って人気メニューを教えてくれるし、読み取った文字を翻訳して読み上げてくれたりもする。
こんな技術がさらに進化していけば翻訳コンニャクよろしく私たちはもう英語を学ぶ必要さえなくなるのかもしれない。

ドラえもんのような未来世界がいよいよやって来るんだなぁという感じもするのだけど、では何故こんなことが可能になったのだろうか。

もちろんGoogle社の技術力の高さと継続的な取り組みがあってのことではあるが、ただ技術力が高いだけではここまでの芸当は不可能だ。
その背景には私たちユーザーが提供した膨大なデータの存在がある。

私達はいつ何の情報を提供したのか

"私はGoogleに情報なんて提供していないよ"と思われる方もいるかもしれない。あるいは情報を提供していることは知っていても何の情報を提供しているのか正確に把握している人は多くないのではないだろうか。
それらの情報はGoogleの利用規約およびプライバシーポリシーに明記されている。

以下、一部抜粋。

このように私達ユーザーはGoogleのサービスを利用した時点でプライバシーポリシーと個人情報の利用について同意をしている(ことになっている)。

そしてプライバシーポリシー同意により実際に提供している情報は以下。

前提知識のある人でなければ提供している情報の種類と多さにちょっと驚くかもしれない。
用途についても同じページに書いてあるので詳細はそちらを参照してほしいのだけれど、賢いGoogleアシスタントや精度の高いGoogleレンズは私達ユーザーの情報をデータとして収集して統計的に分析することでここまでの進化を遂げているのだ。

収集されている情報の一部はユーザーの意思で提供拒否できるものもあるが、だからと言ってこれらの情報を提供しないということはすなわちユーザーが何を求めているかがサービス側に伝わらなくなるということと同義であることも忘れてはならない。
プライバシーの保護とサービス利便性の向上は今や表裏一体の関係と言えるのだ。

***

もう一つ事例を見てみよう。今度はFacebookのプライバシーポリシーだ。

こちらも用途については同じページ内に記載がされているので詳しくはそちらを参照していただきたい。

利用者が弊社製品を利用する際(アカウント登録、コンテンツの作成やシェア、メッセージの送受信や他の利用者とのコミュニケーションなど)、Facebookは、利用者が提供するコンテンツ、コミュニケーション、その他の情報を取得します。

さらっと書かれているが、書き方がシンプルな分、かなり広範囲な情報が取得可能な同意内容だと思う。
ちなみに同じFacebook傘下のInstagramも大体同じ内容っぽかった。

私達ユーザーは、便利なインターネットや大好きなSNSを利用するとき、長い説明文を読んだ読まないに関わらず、これらの情報提供に同意したことになっているし、実際に提供しているのだ。

セキュリティとプライバシー保護

実際に利用されるのが統計的な情報であるとは言え、プライバシーや個人情報保護の観点でこれらの情報収集に慎重な姿勢を示す国も当然ある。
例えば日本の企業が開発しているSNSに関しては、法令にしたがって通信の秘密を厳密に守らなければならないため、Facebookの事例のようにプライバシーポリシーに"コミュニケーション、その他の情報を取得します。"なんて一文を書くだけでプライベートなコミュニケーションに関する情報を取得するようなことは出来ない。
昨年もLINEの情報収集ポリシーに関してソーシャル上で炎上したことがあった(ほぼガセネタだった)が、実際には日本の法律に縛られていない欧米発のサービスの方が圧倒的にユーザーの情報を収集し、利用している。

またヨーロッパ(EU圏)も昨年からGDPRが施行され、対象国家において個人情報の扱いに関する取り決めを守らなかった場合、莫大な額の罰金を支払わなければならなくなった。
こちらはサービス主体者がどこの国にいようとEU圏でサービスを展開していたりEU圏のユーザー情報を取り扱う時点で取り締まりの対象になるため、実際にGoogleはこのGDPRに抵触する情報を収集していたとしてフランスで62億円もの罰金を請求されている。

こういったプライバシー保護強化の流れを受けてか、今回のGoogle I/Oではユーザーが過去に提供したデータを削除できるようにすることなどセキュリティやプライバシー保護についても強調された。
これは数千万単位のユーザー情報漏洩・不正利用インシデントが相次いでいるFacebookにおいても同様で、Google I/Oに先立って開催されたF8(Facebookのデベロッパーカンファレンス)では特にプライバシー保護を重視する姿勢が目立った。

しかしここでGoogleやFacebook(この2つに限らず他の企業・サービスも)が言うプライバシー保護とは、決して個人情報の収集を控えるという意味ではない。
データはこれからも大量に集めるが、あくまでサービス発展・利便性向上のための統計分析にだけ用いるだけで不正にプライバシーを侵害しないという姿勢だ。例えば以下のような取り組みが該当するだろう。

・分析に不必要な情報まで見ない(例:個人同士の詳細な会話内容)
・ユーザー側の意思で提供拒否したり、過去に収集された情報を削除できる
・第三者やサービス運営主体の社員が不正に個人情報へアクセスできない
・集めた個人情報を漏洩しない

利便性とプライバシーのバランス

本文の最初に触れたような夢のような未来世界を迎えるためには、私達ユーザーがどんなものに興味があるのか、あるいは実際にどんな使い方をしているのかといった情報を提供してサービス側で統計的に分析しなければ実現が困難なのが現実だ。
この記事ではGoogleとFacebookを例に挙げたが、程度の差はあれど他のサービスに関しても基本的には同じなので代わりに何か他のものを使えば良いという話でもない。
自分たちの情報を収集されていると思うと良い気分はしないが、インターネット無しに生きていくのは難しくなった昨今、ただ気持ち悪いと叫ぶよりも、まず収集される情報が何で、どういった用途に利用されているのかを適切に理解していくのが建設的だと思う。

のび太が「ジャイアンに殴られた」とドラえもんに相談した時、十分なユーザー情報を持たないドラえもんロボは小学生を力づくで捻り潰してしまうかもしれない。(どこでもドアを軽々と持ち上げるドラえもんさんのパワーは129.3馬力もあるらしい)
本質的な問題を理解し、どう解決すればのび太の成長に繋がるのかを考え、適切な道具をレコメンドして問題解決に当たる猫型ロボットの実現のためには、複雑な人間の思考回路を理解するための膨大なデータ収集と機械学習によるAIの進化がまだまだ必要なのだ。


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Kazutaka Irie

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