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新卒2年目がプライム上場企業内でAIの新規事業を作った話

はじめに

これはSun* Advent Calendar 2023の1日目の記事である。

僕は新卒2年目で、Sun*という企業でビジネスデザイナーとして働いている。その企業で僕は今年、AI(ChatGPT)を活用して新規事業アイディアを創出する事業「AI*deationアイディエーション(参考:プレスリリース)」を生み出し推進している。「AI*deation」はこの一年で多くの企業にお声がけいただき、支援メンバーの育成が追いついていないためにやむなくお断りすることがあるくらいのサービスにまでなっている。この記事ではどうして僕がそうした事業を生み出すに至ったのかの経緯を自分の過去を遡って書いた。

このSun* Advent Calendarではこのあと弊社のビジネスデザイナー、PM、エンジニア、デザイナーによる様々な有益な記事が出てくることだろう。しかしこの記事は自叙伝に近いもので、変な人間のこれまでの歩みを読み物として楽しんでいただければ幸いである。

(注:この記事では厳密には「LLM」や「GPT-4」と表現すべき箇所を、便宜上「AI」や「ChatGPT」と表現する場合があります。)

大学までの自分の生い立ち

僕、遠藤和真は宮城県の公立高校に通っていた、ゲームとディズニーが好きな普通の高校生だった。
凡人ではあったが紆余曲折あり一浪して母校から10年ぶりの東大合格者として東大理科一類に入った。
僕のやりたいことは何かと言われたら、たくさんの人々にワクワクと笑顔を届けることだった。それはディズニーランドに心惹かれ影響を受けていたことが大きく影響している。

ディズニーランドでのシンデレラ(筆者撮影)


ワクワクと笑顔を届けるために何が必要なのかは昔からディズニーランドに行きながら考えていた。それは大きく分けて4つあると思っている。

  1. キャスト(従業員)がビジョンを共有して適切に役割分担をして持続的に働くこと。(経営、マネジメント→Business)

  2. テクノロジーを駆使して新しい体験、便利な体験を実現すること。(工学、エンジニアリング→Technology)

  3. ゲスト(お客さん)の見えるもの、歩く場所、座る場所、体験すること、感じることを緻密にデザインすること。(デザイン、建築→Creative)

  4. そして最後に…自由にビジョンを描き、これまでの発想にとらわれないアイデアを再現性高く生み出して実現し続けること(ビジョンドリブン、イノベーション)

だ。
僕はこれらの全てに興味があった。

しかしこれは僕一人で完結するものではない。多様性のあるチームが必要だと考えた。それは様々なスキルが必要になるからということもあるし、もう一つ大きな理由は多様性のあるチームの方が「新結合」の発生確率が上がると考えたからだ。
「イノベーションの父」と呼ばれる経済学者のシュンペーターは、イノベーションとは既存の要素の「新結合」であるとした。僕はこの話がとても好きで、イノベーションの発生確率を上げるために今までに出会うことのなかったものたちの出会いを生むということについてよく考えていた。
そのために、僕の中に広い知識をインプットして僕の中での新結合の発生確率を上げつつ、さらに僕とは違う発想をする人や違う専門領域の人との関わりを持つようにしていた。

そんな学生生活を送る中で感じたのは、多様性のある異能のチームが創造的対話をすることは決して簡単ではないということだ。
そこで僕は幅広い興味を活かして、ジェネラリストとしてこうした様々なスキルや経験、思考を持つ多様性のある異能のチームの架け橋となる人材を目指すことにした。

東大では新入生は全員最初の1年半は教養学部生となる。そこは学ぶうえで最高の環境だった。
僕は教養学部を最大限利用して、必修の数学、物理、英語等だけでなく、文学、文化人類学、デザイン思考、建築、アート、コンピュータサイエンスなど様々な授業を受けた。
憧れていた東大の図書館でたくさん本を読み、博物館や美術館を見に行った。
僕の頭脳に貴重な時間となけなしのお金を惜しみなく投資した。

東大の総合図書館


教養学部で幅広く勉強した1年半を終えた後は、工学部システム創成学科のシステムデザイン&マネジメントコースというところに進んだ。これは様々な分野で培われてきた工学知を結集させて社会にシステム(広義)を実装するという実践的な学問で、僕にはうってつけの学科だった。大学院も工学系研究科システム創成学専攻に進んでシステムデザインを学んだ。ここで学んだことは今も仕事でとても活かされている。

修士論文は、理論的な内容よりも実務的な、僕の発想で社会に価値を直接届けることに興味があったので、海洋生態系の領域にAI研究で使われていた理論を持ち込むという新結合によって、効率的に海洋生態系のシミュレーションにかかる人間の負担を大幅に自動化するプログラムを実装するということをした。

学生時代は他にも、エンジニアをしたり、本田圭佑氏の会社で新規事業創出に携わっていたり、はたまた有名漫画の編集に携わったり、また中高生が社会課題解決を考える泊まり込みのワークショップのファシリテーションをしていたりと、ここでは書ききれないほどに色々なことをしている変な学生だった。

Sun*への入社

周りには起業を夢見る野心溢れる学生も多かったが、僕は、僕ならではの価値を発揮しつつ「ワクワクと笑顔を届ける」ことがしたかったので、それができる企業があればそこに就職してそこで色々な人と出会えれば良いと考えていた。
そんな僕が就職先として選んだのがSun*という会社だ。この会社は「誰もが価値創造に夢中になれる世界」をビジョンとする会社で、Biz(Business)、Tech(Technology)、Creativeのスペシャリストを数多く擁する「デジタル・クリエイティブスタジオ」としてクライアントの価値創造の支援をしている。

代表取締役の泰平さん(皆親しみを込めてそう呼んでいる)も魅力的で、金髪革ジャンという見た目をしているのだが「誰もが価値創造に夢中になれる世界」という世界平和を目指してルフィのようにこのSun*という船の船長をしている。

泰平さん(筆者撮影)


このSun*はビジョンが僕と重なり、かつ僕がこれまで学んできた内容を活かして色々なチャレンジができそうで、Biz、Tech、Creativeという異能の人材たちのチームの中で架け橋となって活躍したいということでとても魅力を感じて選考に臨み、最終面接では泰平さんと世界平和について語り合い、入社することとなった。

また、これは泰平さんがよく言う話だが、人類が月に行ってみたいと思ったような、常識の殻に閉じない自由な願いや憧れから価値創造は始まり、そうした思いを諦めないで済むような価値創造のインフラとしてSun*がある。そういった思想は、夢はいつか叶うことをいつも説いてくれるディズニーに影響を受けている僕からすると共感しかないのだった。

オーロラ姫(筆者撮影)

ちなみにSun*にはディズニー好きが多く、会社の部活でよくディズニーランドに行っている。

ChatGPTの登場

Sun*はメンバーのやりたいことを尊重し僕ならではの働き方をさせてくれる会社で、僕は入社後はエンジニアをしたりビジネスデザイナーをしたりと様々なことをやらせてもらいながら働いていた。

入社後1年弱経った頃、2022年末についにOpenAI社のChatGPTが公開された。当時gpt-4は無く3.5のみだったものの、非常にインパクトが大きいものだった。
僕がChatGPTへの興味を持った理由は、学生時代からAIに興味があって勉強していたりしたことや、OpenAI社の画像生成AIであるDALLE2をすでに触っていたことなど様々な理由があるが、一番大きいのはGithub Copilotに触れていたということだろうか。

Github CopilotとはOpenAI社のモデルをベースにしたAIによるコード生成ツールで、学生時代にベータユーザーに選ばれて使っていたのだが、当時からその性能の高さにはかなりの衝撃を受けた。当時はエンジニアの仕事を楽にする便利ツールという立ち位置だったが、進歩のスピードが速い領域なので、このまま順当に進歩すればただのエンジニアを助ける便利ツールにとどまらず、エンジニアがコーディングで価値を出せなくなると感じたほどだった。(これは2024年に登場するGithub Copilot Workspaceによって現実になりそうだ)
という背景で自然とCopilotと同様の技術であるChatGPTに興味を持ち、ビジネスや開発、UXデザインへの活用を色々試して社内TwitterであるTimesに投稿したりしていた。

ChatGPTの新規事業創出への活用

色々とChatGPTを試している中で、ChatGPTがアイディアの発散に便利であることが分かってきた。それもそのはずで、イノベーションとは「新結合」であり、人間よりも広範な知識がインプットされているAIは新結合をより多く、より早くだせるのだ。だが僕は、危機感を覚えた。ビジネスデザイナーとしてクライアントの新規事業アイディアを出すという支援もさせてもらっていたが、Github Copilotが便利ツールで終わらずエンジニアのあり方を変えてしまうだろうと感じたように,このままChatGPTが進歩すれば自分の仕事のあり方が大きく変わるということを直感的に感じた。(当時は画像生成AIの進歩のスピード感にも驚いていたので、一層身に沁みて感じた。)
そこで、新規事業創出におけるAIの活用を模索するべく、2023年3月に社内の有志を巻き込んでChatGPTビジネスコンテストを開催した。

SlackでChatGPTビジネスコンテストの参加者を募集


これはChatGPTから出てきた内容だけで新規事業をプレゼンテーションするというもので、その試行錯誤の過程も参加者にプレゼンしてもらうことにしたのだが、結果としては大盛況だった。

ChatGPTビジネスコンテストのスライド


参加者それぞれのChatGPTの使い方をお互いに共有することで、プロンプトの細かいテクニックだけではなく、より本質的な、新規事業創造のどういったフェーズでChatGPTを活用するといいかといったことも見え、新規事業創出におけるChatGPTの活用可能性の地平が開けた。

そんな折、とある企業からこんな相談がSun*に寄せられた。「会社として新規事業に取り組んでいるのだが、自分たちのアイディアが網羅的に探索しきれているのか懸念している。アイディエーションを手伝って欲しい。」
最高のタイミングだった。
この悩みに応えるべく、AIを用いた解決策を検討した。そこでできたのが「AIでアイディアを探索し、人の力で収束させるプロジェクト=AI*deation」だ。

AI*deationの紹介資料。この内容についてはこの記事では詳しく紹介しない


ここではAIを利用して計1000案以上の新規事業アイディアを発散し、最終的に10案程度のアイディアに収束させアイディアの具体化を行った。
この案件を皮切りに様々な企業に対して同様にAIを活用した新規事業創出支援を行い、その方法論に関しても色々な人を巻き込みながらどんどんブラッシュアップさせていった。
ありがたいことにこのAI*deationは多くのお客さんに興味を持ってもらい、僕はそのほぼ全てのプロジェクトにビジネスデザイナーとしてJoinしてプロンプトデザインやアイディア具体化の支援を行っている。
また、AIでのアイディアを発散、具体化を効率化するためのアプリを一人で開発し、社内メンバー向けに公開するということもした。
こうした動きができたのはBiz、Tech、Creativeのそれぞれの知識を活かしつつ、様々な自分と異なるスキルや発想を持つ人を巻き込むことができたからこそだと思っている。

AIと価値創造

僕は今こうしたAIを活用したアイディア創出に取り組んでいるが、その理由はAIを活用することで「誰もが価値創造に夢中になれる世界」の実現に繋がると考えているからだ。僕はビジョン・夢を持つ人のサポートをしたいということを常々思っていて、ビジョンはあってもその実現方法を見出せない人に対して、こうしたAIを活用したアイディア創出によって安価で迅速にアイディアを形作ることを支援することができれば、「ビジョン実現の民主化」に繋がり、その先に「誰もが価値創造に夢中になれる世界」があると思っている。ということで今後も「誰もが価値創造に夢中になれる世界」の実現に向けて、アイディア創出が一部のアイディアマンだけでなく誰でも再現性高くできるようAIの活用の仕方をブラッシュアップしていきたい。

最後に、ここまでお読みくださった読者の皆さまに僕から、どうAIと向き合えばいいかお伝えするとするならば、まず、世の中にはAIというツールを目的化して何でもAIを使おうとする人や、AIがよく分からないという理由で敬遠してしまう人など様々いるが、僕はAIを活用すべきところで活用していくということが今後の価値創造においては重要になると考えている。なのでAIの情報を追うときは、今得意なこと、苦手なこと、(AIの領域は進歩が早いので)今は出来ないがすぐにできるようになること、を分けて考え、その活用の仕方を模索するのが重要だと考えている。もしAIをこう使ったらいいんじゃないかというインスピレーションが湧いたら、すぐ試したり、他の人を巻き込んでいくと、どんどん楽しい価値創造の世界が広がってくるはずだ。

最後に

最後までお読みいただきありがとうございます。

この後も、Sun* Advent Calendar 2023では、Sun*のビジネスデザイナー、エンジニア、PM、デザイナーが記事を連載していきます。チェックして頂ければ幸いです。→リンク
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