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宇宙語を話すビジネスマンから学ぶ、言葉選びの大切さについて。


昔、後輩に同行した際によく話していたアドバイスがある。それは、

「今日の提案を、一切横文字なしで話す練習をしてみようか」

というものだ。
ちなみにそのほかにも

「実家暮らしだよね?お母さんでも伝わる言葉で話してみようか」
「5歳の姪っ子にも伝わるように話してみて」
「奥さんに話して理解してもらえるように言い換えてみて」

など、相手に合わせて表現は変えていたものの、伝えたいことは同じだった。ビジネスで使うような専門用語は便利な反面、使い方を間違えるとコミュニケーションの阻害要因になる。だから相手のことを考えずに難しい言葉を乱用するのは、もはや伝える側の都合でしかないと考えていたのだ。今日はそのことについて少し述べていきたい。

難しい言葉だらけな業界の話

私はデジタルマーケティングの支援会社で働いており、Webマーケティングの提案をする機会が多々ある。そしてこの業界は、カタカナやらアルファベット3文字やらの”専門用語”がやたらと多い。

だから提案でも難しい言葉が使われがちなのだが、そもそも言葉を知らない人からしたら会話についていけなくなる。そして内容が理解されなければ、「宇宙人の言葉」を話しているのと変わらない

もちろん知っておいた方がいい言葉もたくさんあるし、ビジネスでは常識と言われるような言葉もある。でもいきなり知らない言葉を連発されたら、聞く側も拒絶反応を起こしてしまい、理解する気も失せてしまう。

特に初見の相手には、できる限り専門用語を避けるべきだと考えている。そもそも、そういった言葉を使うのも伝える側の都合でしかないので、相手に合わせた最適な言葉選びが必要なのだ。

わかりにくい提案の例

例えば、Webサイトの改善提案などでよくあるのが以下のような提案である。

今回のKPIとして、コンバージョン〇〇件を目指したいと思います。そのためにまずはSEOでアクセスを集め、ある程度セグメントを絞ってアドを出稿していきましょう。そこからはCROの施策を行なってCVRを上げていきながら、アドの出稿額も上げていきましょう。


KPIやSEO程度であればわかるかもしれないが、CROやらCVRなどは通じない人もまだまだ多いと思う。相手がこういった言葉を明らかに理解しているなら話は別だが、そうでないなら極力使わない方がいい。

ちなみに先ほどの提案は

今回の目標として引き合いを〇〇件獲得を目指したいと思います。そのためにまずはWebサイトの検索順位を上げて、見込み顧客には広告を出しましょう。そこから引き合いに繋がりやすくするために導線等も改善して、徐々に広告の金額も増やしていきましょう。


でも十分通じる。前者の提案で伝わらないことがあっても、後者で伝わらないことはあまりない。だったら初めから後者のように日本語で説明するべきである。その上で、「ちなみにこれはCROと言いまして〜」といった形で、後から説明をすれば良いだけなのだ。

そもそも相手に伝わっていなければ本末転倒だし、認識のずれから後々トラブルにも繋がることもある。なんとなく並べただけでも凄そうに見えてしまうので、理解をしていない人ほど言葉で誤魔化しがちだが、正確に伝えることの方が優先度は高いはずなので、乱用すべきではない。

相手に合わせた適切な言葉選びを

もちろん専門用語を使うメリットもある。前提を揃えることでコミュニケーションをショートカットできたり、そもそも日本語で表現しにくいニュアンスを伝えたりすることができるので、必要に応じて使っていくべきだ。場合によっては、相手からの信頼も得やすくなるであろう。ただし、少なくともそれはコミュニケーションが成立する範疇での話だ。

つまり、大切なのは聞き手の立場に立って適切な言葉を選ぶことである。相手のことを考えずにこちらの都合の良い言葉を使うのは、もはや伝える側の怠慢でしかない。できる限り事前に相手の理解度を調べ、現場でも細心の注意を払う必要がある。

こう書くと当たり前の話なのだが、できていない人がとても多いように感じる。恐らくそれは、自分の中の常識が世の中の常識だと思い込んでしまう人間の習性が深く関わっているからだと思う。特に最近ではSNSやネットニュースなどが、この習性を助長している印象である。だからより一層、気をつけていきたい。

ところで、私の中では初見の相手へのマイルールのようなものがある。それは「相手が使ってきた言葉は積極的につかう」というものだ。

営業のテクニックでは基本なのだが、相手が「SEO対策」と言っているなら、こちらも「SEO対策」と言うべきである。そこで「検索順位対策」などと言い直すと、逆に違和感を与えてしまう。

もしくは大前提として、相手のリテラシーが高いことがわかっている場合は難しい言葉を積極的に使うこともある。専門用語を使わないことが、マイナスに働くこともあるからだ。とはいえその場合でも、念の為補足などは添えることが多い。

などなど、私も一定の条件をクリアしたら専門用語もバンバン使う。ただし、それはあくまで適切だと思ったシーンだからだ。それ以外では、基本的には優しい言葉を選ぶようにしている。一律に専門用語を振りかざすような提案はしない。

まとめ

ということで、そろそろ締めに入る。

わからない相手に専門用語を使うことでそれっぽくみせたり、大きく見せることは可能だ。でも結局、中身が伴っていなければ後でボロが出る。であれば、まずはわかりやすい言葉で正確に伝えた方がいい。そうすれば相手も聞く耳を立ててくれるし、伝えていく中で、少しずつ言葉も理解してもらえる。そうやって「コミュニケーションを育てていく」ような感覚が、とても大切なのかもしれない。

ちなみになぜこの記事を書こうと思ったのかと言うと、現在「ぶんしょう舎」というライティング講座に通っていて、昨日の講師だった橋口幸生さんの「カタカナ語は使わない」という話にとても共感できたからだ。


文章で読み手のことを考えるのと同様に、会話では聞き手のことを考えなければならない。相手の立場に立って伝え方を考えることは、コミュニケーションの大前提だと思うので、これからも強く意識していきたい。


私が宇宙人だと思われないように。


小木曽
Twitter→小木曽

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