作曲家修業の思い出(2)自分が提供したいと思うアーティストを100組挙げる

面会は赤羽橋の某所。その方はクラブ系アーティストのエージェントをしているといいます。

※エージェントといえば、トム・クルーズのあの映画を思い出していただければ。

ザ・エージェント 20周年アニバーサリー・エディション


ざっくりいうと、単なるマネージャーなのではなく、クライアントとのクリエイティブワークにも深くかかわるプロデューサー的な役割も多分に含んだ業務をする、そのために営業もする、そんな感じでしょうか。ビジネスプロデューサーというほうが、僕の中では近いかな。

この方、仮にAさんとしておきます。

どことなく広告代理店の匂いを感じたのですが、ビンゴでした。だからクリエイティブにこだわってるんだなと。

まずはAさんのプロフィールを聞き、彼の手がけた仕事、そして彼が手がけるアーティストの曲デモを聴かせてもらいます。なるほど、聴いたことのあるオシャレものでした。

デモの作りもなんとなく理解できました。フェードインの曲が多かったのですが、最初においしいフレーズやメロディがわかるように入っており、全体的に1~2分で収められていました。

初回面会の前に、資料の準備を言い渡された

次は僕の番です。この日のために次の2つを用意してきて、と言われていました。

・送付したデモ以外の自分の曲を持ってくること
・自分が影響受けたアーティストを100組挙げてくること

出た!代理店の王道です。アイデア100本ノック。

仕事柄、量が質を凌駕する、というのは実感ありましたし、自分もかつてコピー作るときなどはこういうことをしてきていたので、そこはまあ手慣れた感じでこなします。そもそもいろいろなジャンルを聴いてきているので、影響を受けたアーティストは数知れずでしたし。

で、送付したデモ以外の曲をいろいろ聴かせます。ぼくは前述のとおりバンドで売りたいと思っていたので「なんで自作の曲をいろいろ持ってこい」なのかなあと思っていたら、要は作曲家育成をしたいということだったわけです。

総じてコード感が良い、メロディもハマると良いものがある、そんな感じでした。特に以下の曲は、今聴くとひどい録音ですが気に入ってくれました。

【Farewell】(外部サイトで音源が流れます)

この曲は後年セルフカバーして、ぼく自らが歌う曲として2009年に単独12inchリリースすることになるんですが、そのへんの経緯はまた改めて書こうと思います。

Aメロ、Bメロ、サビと流れる王道進行、間奏・ブリッジがちょっと変態気味、という自分の中で勝手に「これは名曲」と思っていたものをちゃんと認めてくれた。あ、指向性は合っているんだろうな、とも思えたので、モノは経験。とりあえずついていくことにしました。

そこで契約条件。
育成といっても費用は発生しない。そのかわりどこかに採用されたら、ぼくの取り分のうち●%をエージェント料としてもらう、そんな条件でした。どこにチャンスが転がっているかわからないし、二つ返事でOK。

では早速曲作りスタート、とはならず。

「自分が提供したいと思うアーティスト100組挙げてメールで提出してね。期限は3日後」

うお、、、そこも100本ノックか。
これは曲を作るよりも生みの苦しみでした。
その一方で、100組も挙げなければいけないがために、自分がどの路線で生きたいのか、第1優先的な路線、第2優先的に書いてもいい路線、第3優先的に許容できる路線、というのが整理されたのを覚えています。
やっておいて損はなかったですね。

ということでようやく曲づくりのスタート、なのですが、そこから先はまた次回。

(つづきます)

※Na MiraはこちらのコンピレーションCDにも収録されてます。 



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