作曲家修業の思い出(9)メロディ先、コード後のほうがカッコ良く仕上がる&リミックスに目覚めた

曲をパーツパーツで保存しつつも、名曲(迷曲?)が生まれず苦悩の日々を過ごす日々。サビにメロディアスなストーリーを求めるJ-POPでは、やはりメロディを先につくり、そこからコードをのせ、アレンジを詰めていったほうがうまくいくことが圧倒的に多かったです(この方法を「メロ先」と言ったりします)。

ぼくは、たまたまクラブミュージック寄りのカテゴリーで作曲家修業をしましたが、クラブミュージックでもJ-POPでも基本は同じだと感じました。むしろ、日本のクラブミュージックでは「リミックス」という手法が確立されている分、メロディの判りやすさというものが、より重要なファクターだなと思います。


リミックスとは?

リミックスは、基本的に曲のパート(ボーカルやコーラス、ギター、ベース、ドラム、キーボード、パーカッション、ホーン、ストリングスなど、、、)を全部バラバラのファイルで受け取り、自分なりの解釈で再構成していく手法です。基本的にはボーカルとコーラスパートだけは元のファイルを使い、それ以外のパートはすべて捨てて、和音構成(コード)/曲展開/テンポ/使用楽器などを丸々変えていきます。そのため、リリースされた曲によっては、「アカペラバージョン」というボーカルパートだけ抜き出したバージョンが、カップリングでついていることがあります。これは、「リミックスしていいアレンジ公開してくださいね~そしたらぼくたちの元曲の露出機会も上がって売れてくれるかも~」という思いが詰められている、、、はずです。笑

2017年現在のトレンドは今一つ掴み切れていませんが、2005年頃のクラブミュージックはハウスミュージックを中心に、シンプルなメロディに対して、ハーモニーや和音(コード)構成がかなり複雑な曲が多かった印象があります。またその複雑さこそが、先端なイメージ・カッコよさを演出していたように思います。そして、そのカッコよさをJ-POPに持ち込むことが、ぼくなりの作曲家修業だったというわけです。少なくともぼくは自分なりに、これがミッションだと思ってやっていました。

コードを先に作ってしまうと、どうしても後でつけるメロディに制約がついてしまい、せせこましい曲が多くなってしまうのでした。そこで、何はともあれ鼻歌でメロディをどんどん作るぞ!という癖をつけるようになりましたが、そんなに急に変われるわけがなく、量産には本当に苦労しました。結局不完全でもエイヤッで提出し、ダメだしを喰らう日々となったのでした。涙


「リミックス」されると、どう曲が変わるか?

参考までに、メロからできた曲が、いろんな人のリミックスを通るとどうなっていくのかを開陳したいと思います。

(1)シンプルな進行とメロディのライブ盤

Trans of Lifeのリーダー、トガシ兄が2001年頃に作った曲です。
最初はこのようにインストゥルメンタルでした。そもそもTrans of Lifeは、ぼくの加入当初(2001年頃)はフュージョン・スムーズジャズなバンドでして、今のハウス系ユニットに変貌したのは2007年頃からですね。


(2)バンド単位でレコーディングしたインディーズ盤

2001年にTrans of Lifeとして初めてセルフレコーディングしたときのものです。音質悪い&妙に生っぽいのはご容赦。

構成上、ブリッジが追加されて、ブラジリアンフュージョンっぽくなっています。アレンジもかなり変更され、ギターによるメロディからスキャットも追加しています。これはCorduroyやArmando Trovajoliのスキャット曲が当時好きで、アレンジに取り入れたものです。ギターだけでメロディを弾くとどうしてもフュージョンになってしまうんですね。
このあたりをレファレンスにしていました。



(3)(2)をもとに瀧澤賢太郎くんがリミックスしてリリースしたバージョン

ぼくがハウスミュージックに開眼するキッカケとなったリミックス。
瀧澤賢太郎くんとの出会いがなければ、ぼくがハウスにハマることはなかったと断言できます。彼には感謝してもしきれません。

2003年当時流行っていたラテンハウスのアプローチながら、構成を大きく変えず、判りやすいナンバーに仕上がっています。
ガットギターはTrans of Lifeのトガシ兄が録り直して収録。ぼくがボイシングをディレクションしました。


(4)さらに(3)を福富幸宏さんがリミックスし、リリースされたバージョン

これを初めて聴いたときは衝撃でした。(3)同様に元曲から残っているのはスキャット、ギター、オルガンの3種なのですが、もはや原型をとどめないリズムとコード進行。痺れます。

ということで、曲づくりの段階で、(1)からいきなり(4)に飛ぶのは難しいとしても、メロディという核が出来上がっていれば、いくらでもハーモニーが考えられ、曲の解釈が拡がっていくということが共有できればうれしいです。


【おまけ】すごい人は最初から複雑なコード進行で作曲している?

天才は最初から、こういうつくりができるんですかねえ...ハウスミュージック界のドン、BlazeのJosh Milan。映像前半のピアノを操る姿、ちょっとすごすぎます。

サビを筆頭にコード進行も見事だけど、アドリブのようなAメロと、判りやすいサビの億世も見事としかいいようがないです。


(つづく、かも)

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