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CES2020_ひみつと愛嬌

年初は米国のCESにいってきました。今日は、現地で感じた違和感と、これからどうその違和感に向き合っていったらよいのか、考えたことを書いてみます。


ひみつを保持しはじめた企業たち

ある種の違和感を感じたのが、P&Gの講演で、頻繁に

If the users allows us to collect their data...
if she let us store her data...

と言っていたところ。

スクリーンショット 2020-02-10 23.38.44

P&GのLifeLab商品、例えばOral b i/o は、磨き残しのある場所を教えてくれたり、磨く時間や強さについてのフィードバックをしてくれる歯ブラシ。
人は自分では「2分位磨いている」と思っていても、実は30秒しか磨いていなかったり、心の中で「強く磨きすぎると歯が傷んでしまうのではないか」と思い弱い力でしか磨いていないことが頻発するそうです。
フィードバックを与えるため、データを収集するよ、という説明のタイミングで出てきたのが冒頭の言葉。

こんなベネフィットが強いものでさえ、人の”秘密”を保持するには同意を元にしていることを強調しているところに驚きました。いや、承諾するのが当然なのはわかるのだけど、そこまで逐次言うんだ…という。

ちなみに、P&Gのトークセッションは下記から見れます。というか、CESののセッションの多くは無料で下記から見られるので、ぜひ。


更に、同じような機能を持つ製品はすでにPhilipsが製品化していますが、P&Gのほうが話題になっているのは、Life Labとしてのブランド化のうまさか。


IoT化=日常の"秘密"のデータ化

日本ではそこまで浸透していない感があるけれど、CESでの出展品を見ると、否応なくGoogle AssistantやAlexaが搭載されている。
例えば、Alexa搭載のトレー(重量センターがついていて、トレーに置かれたものが少なくなると自動的に注文する)や、Google Assistantつきの空気清浄機など。

個人的に面白いなと思ったのはAlexaがボードゲームのゲームマスターをやってくれる商品。以前、絵本の演出をAlexaがやってくれるサービスもありましたね。

これまで流れていってしまった日常の秘密が、どんどん企業の収集の対象になっていき、便利になる一方、どこまで企業にデータを渡すか、がリアルに争点になってきた感じがあります。
中国では、一時期、スマホが会話を勝手に聞いていて、「ピザ食べたいね」と話していると、Wechat上でピザの広告が出る、といったことがあり、問題になったこともありました。

どんなデータを渡すか、誰にデータを渡すか

むしろ、どんな相手にはデータを自然に渡したいと思えるかが、重要なのかもしれません。
数年前からキーワードだったDigital Wellbeingは余り聞かれず、むしろSamsungのBallieのような可愛らしいインターフェースや、Mercedes BenzのVISION AVTRのような人に生物のように馴染むインターフェースでそれを解決しようとしている感もあります。

VISION AVTRは日経新聞ではサステナビリティ文脈で語られていたけど、Keynote途中で出てきたBenzのAlexander Mankowsky氏が語っていた、人間とBiosphereの融合という視点で捉えるほうが面白いなと思います


Mercedes BenzのKeynoteで途中出てきたAlexander MankowskyさんはBenzのFuturologistという肩書で、Ars Electronicaとの共同研究をしている人。

Ars Electronica含め、メディアアート界隈では、人新世(Anthropocene:人類が地球の生態系や気候に対して影響を大きく与えている時代区分)からの脱却がキーワードになっていて、そのあたりの文脈からも、今回のキーノートにあった「人間とbiosphereの融合」に繋がっているのかなと思いました。

テクノロジーを単なる敵とみなすのではなく、彼らが存在する世界を、我々にとっての第二の自然と見なし、どう柔らかい境界線を設計していけるか。CESという商業に近いところでも、そこがテーマになっていることを、とても興味深く思いました。


WIREDの最新刊がまさに人新世を扱っているので、興味ある方はぜひ



現地情報やスケジュールの立て方をまとめたnoteも書いていますので、よければこちらもどうぞ。


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