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ごまめのごたく:ロシアのもろもろ(2)草原の実験

タイトル画像は、核実験でできたクレーター


前回どこまで書いたか、頭の整理

 ロシアのウクライナ侵攻の時に、ジョージア(グルジア)について気になってたら、たまたま、ジョージア・ドイツ合弁映画「ジョージア、白い橋のカフェで会いましょう」を見たのだった。
 映画のタイトル、街角や、日記を書くシーンなどで、ジョージア語の文字がいたるところに出てくるのだが、これにすごく感銘して調べると、世界で一番かわいい文字とか、ジョージア文字がユネスコ世界無形文化遺産に登録されているとかで、余計に関心が出てきた。
 
 そのやさき、小さな本屋で、言語学者 田中克彦氏の書いた「シベリアに独立を!」という本をみつけて読み始めたら、ロシアの他民族支配にとって、民族独自の言語がすごく大きな要(かなめ)だということが分かってきた。

 ロシアの探検家、地理学者、民俗学者であるポターニンの経歴をざっと述べて、シベリアの諸民族についての話に移るところでした。

 と、前回書いてきたことを見直しながら、ここまで書いてきて、ポターニンの生まれ故郷、セミパラチンスクを、手元の紙の地図帳で見ると、地名がない。

 ネット検索してみると「セミパラチンスク核実験場」がトップに出てくる。都市としての地名は、現在はセメイとなっている。

 それで思い出した。

10年ほど前、「草原の実験」という映画を劇場で見た。

 今回は、予定変更。このあたりを脇見歩きしてみます。シベリア民族の理解には有益かと思います。

カザフスタンにおける「草原の実験」

 「草原の実験」は、2014年のロシア映画。監督は新鋭アレクサンドル・コット。

 全編を通して、会話のシーンはあるものの、セリフは皆無。

広大な草原のなかにある、一件の住居と倉庫。
見渡す限り、地平線を遮るものはない。

そこに、父と娘が暮らしていて、父は毎日ジープに乗って仕事に出かける。
上空からの、草原を走るジープの映像が、周囲の草原の広大さを見せつける。

娘は、父の仕事の内容はあまり知らないようです。
ある日、青年がバイクでやってきて娘と付き合い始める。

映画の中ほどで、父の具合が悪くなり、そこへ(仕事関連の?)役人がガイガーカウンターを持ってきて何やら家探しを始める。

このあたりから、父の仕事は核に関係する極秘の仕事ではないか、と思わせるにおいが漂ってくる。


父・娘の顔立ちが日本人によく似ている。この地方の民族構成が東洋系であることは間違いなさそう。

セミパラチンスク核実験場

 今後の展開も踏まえて、シベリア関連地図を示します。
アナログ人間なので、紙の地図からスキャンしました。

昭文社 コンパクト世界地図帳より
ユーラシア北部

 左ページ中央下が、カザフスタン。
その東北部に「セメイ」という地名が見えますが、1991年までセミパラチンスクと呼ばれていました。
 セメイの西約150kmに旧ソ連の核実験場があり、ここで旧ソ連は1949年から1989年の40年間に467回の核実験を行いました。

そこでなにがあったのか?
次の、京都写真美術館の森住卓氏のサイトが、写真を通して語ってくれています。

 映画「オッペンハイマー」は、科学者とその周囲の思惑、葛藤を、会話と激しい議論をとおして、文字通り雄弁に物語っていました。
 映画「草原の実験」と、核実験場のその後の写真は、映画「オッペンハイマー」のその後を、静かに、奥深くに語りかけてきます。

おまけ:中央アジアの草原にて


次回

 次回はポターニンに戻って、シベリア民族の中心とも言えそうなチュルク族に関係する話に移りたいと思います。