見出し画像

SHINE:転落からの帰還

 今回は「SHINE」(1996)。オーストラリアの映画。
 アーティストが上り坂で転落。失われた人生からの帰還を描く。
 実際に日本にも来て公演したことのある、デヴィッド・へルフゴットの生涯を描く。厳格な父親に一流のピアニストになることを強いられ、コンクールでラフマニノフを演奏するが、精神に変調をきたして、記憶障害となる。そののち何年かして、あてどなく雨の中をさまよっているへルフゴットのシーンから映画は始まります。雨宿りの場所にぴったりの、ピアノパブを見つけて・・・・オープニングシーン、ありました。大変感動的な映画史に残る!?オープニングだと思います。

 伝説的なピアニストでアカデミー賞受賞作『シャイン』のモデルとなったデイヴィッド・ヘルフゴットは、小さい頃から厳格な父からピアニストになるべく英才教育を受け、神童と言われる天才的ピアニストだった。10代で数々のコンクールで入賞し、神童と讃えられる存在となっていた。世界屈指の音楽大学、英国王立音楽大学に特待生として進学し、音楽の殿堂ロイヤル・アルバート・ホールではチケットを完売させる。そのコンサートでは、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」を演奏し、大成功を収める。しかし、直後に精神病に陥り、11年もの歳月をピアノに触れることなく陰鬱な人生を神経科病院で過す。その後、不安定な精神を抱えながらも、ワインバーのピアニストとして働き、社会復帰への道を歩み始めていた。

 20何年前に、ツタヤで借りて数回見た映画の紹介を記憶だけを頼りに書くと、映画の時系列がこんがらがってる。WOWOWの録画を見直してみると、紹介したユーチューブの映像は、映画の中間にに挿入されているシーンだ。オープニングは、クマンバチの飛行の演奏は省略されていて、デビッドが「謎だ、謎だ、人生は謎だ」と、独り言を繰り返し言いながら、ピアノパブのドアをたたいて、その閉店後、従業員の家に車で向かうシーンのみ。それはそれで、僕の記憶にある感銘したシーンがオープニングにあるバージョンもあっていいような気がします。

 それよりも、なぜ、父親がそこまで厳格だったのか、見直しながら考えています。父親は、デビッドが王立音楽学院に入学して、英国にわたるくらいなら、絶縁すると言って、勘当した。何故か。
 かれはポーランドからの移民で、両親をユダヤ人収容所で亡くしている。そして、ソ連友好協会の会合に参加している。
 映画では、それ以上の背景描写はないが、現在のソ連関連の動きから思うに、ソ連による対独戦勝利、ユダヤ人解放により、欧米ではユダヤ人はたたかれるだけで勝者にはなれない、という考えが支配的な社会にいたのかもしれない。よくできた映画は、見るたびに背景理解が進んで、ああ、そうだったんだ、という、新たな発見がある。

こちらが本人の演奏


 そういえば、数年前に見た「鑑定士と顔のない依頼人」。
鑑定士オールドマンに、古い屋敷にある由緒ある多くの家具の鑑定をしてほしいという、女性からの電話での依頼が舞い込む。助手を出向かせるからと、スケジュール調整をしようとするが、何度も、事故や何かで立ち会えなくなった、などという言い訳で、会おうとしない。

 バラバラになった歯車の部品から自動人形を再生する話や、数字に完璧な映像記憶をもつ小人が出てきたり、こういうゴシック調の雰囲気は大好き!
 ストーリーも、自分の大切にしていた人生からの転落、の急展開が見どころ。
最近、WOWOWでまたやっていたので、見直していたら、主演Geoffrey Rush演じる鑑定士の雰囲気、どこかで見たな、と思って記憶を手繰っていたら、「SHINE」のデイビッド・ヘルフゴットでした。

 雰囲気を伝えたいので、ファイナルシーンを紹介しますが、これを見たからと言って、ネタバレにはならないと思います。