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TI-99/4A - ホームPCの始祖

この TI-99/4A は、日本ではあまり馴染みがないのですが、コモドールの VIC と並び当時は大変に売れ、先進的な設計が後の多くの家庭向けパソコンに影響を与えたホームコンピュータの始祖と言っても良いPCです。1979年6月にTI/99-4、1981年6月にはTI-99/4Aがリリースされました。ちょうどこの両機種の間にコモドールのVIC20(VIC1001)がリリースされたという時期にあたります。

TI-99/4A

CPUには、1チップミニコンとして設計された TI の 16ビットCPUが使われ、最初の 16ビットPCとも言われています。

TMS9900 (CPU)

また画面出力のために専用のチップ(VDP)が開発され、この後継チップが MSX などのホームパソコンで使われるなど、ホームパソコンのアーキテクチャに大きな影響を与えました。

TMS9918 (VDP)

多くの機器がテレビを使って画面に出力することを見越してチップを作ってしまうあたり、さすが半導体メーカーです。

他にも周辺機器を独自のデイジーチェーンで拡張できるようにし、プラグアンドプレイで自動的にデバイスを使えるようにする手法を採用するなど、パソコンは「こうであるもの」という先進的なテクノロジーが満載でした。

ただ、やはり半導体メーカーであったことが災いしたのか、技術情報を積極的に開示しなかったこともあり、先進的な設計を活かすだけのソフトウェアが出揃いませんでした。また高機能なハードウェアを多用したため、コスト的にも不利な競争を強いられ、1983年10月には販売中止となってしまいました。

搭載されていたBASICは、TI BASICという古き良きダートマス BASICから派生したもので、フルスクリーンエディタも持たず他のBASICとの微妙な違いも目立ちましたが、ハードウェアを活かすための独自の拡張キットを用意することで、見慣れないCPUのアセンブラに頼ること無くハードウェアを活用するプログラムを書く道を開きました。

TI_BASIC_(TI_99/4A)

当時のハードウェアは、決して十分な性能があったわけではないので、美しいアーキテクチャよりも、少しでも高いパフォーマンスが求められていました。レスポンスの良いソフトウェアを用意するために十分な技術情報と、そのための多くのコードが出回る必要があったのだと思います。TI/99/4Aは、多くの熱烈なユーザに支えられたのは確かですが、これをビジネスとして成長させるためのマーケットを作るのには失敗してしまったんだと思います。売れ「続ける」パソコンを作るために必要なものは何かという教訓を残してくれた名機なのかもしれません。

TI-99/4A: 40th Birthday (Party?)

このPCに関する歴史的評価は高く、多くの記録が残っています。

Texas Instruments Model 99/4A Personal Computer

THE TEXAS INSTRUMENTS 99/4: WORLD’S FIRST 16-BIT HOME COMPUTER

TI 99/4

Texas Instruments TI-99/4A

TI 99 / 4A

今でもコミュニティ活動が活発で多くのエミュレータも開発されているようです。

TI-99/4A Emulators

ヘッダ画像は、以下のものを使わせていただきました(CC BY-SA 2.0 FR)。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:TI99-IMG_7132_(filter_levels_crop).jpg

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