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アナログテレビで画面が流れるのは何故か

ちょっとAIに聞いてみたのですが、まだまだ状況を正確に説明し問題点を絞った質問をしないと、一般的な回答に終始し問題点を理解できるような回答をするのは難しそうです。まあ電気製品の不具合を問えば、プラグはコンセントにささっていますか?的な答えになりがちです。Copilotは参考にしたWEBサイトのリンクも教えてくれるのですが、そもそも見つけてくるサイトが良く見られているサイトなので、そこに書いてあることが無難な説明なのが原因なのでしょう。まだまだ想像力が働くのは無理なようです。

さて今のテレビというかディスプレイは画像をデジタルなプロトコルで処理しているので、信号強度が弱かったりノイズが乗ったりしても、画面が固まったりブロックノイズが出たりすることはあっても、画面全体が乱れることはありません(そして砂の嵐も見られません)。

ところがアナログなテレビの時代は、信号強度が弱かったり強すぎた場合などに含まれる同期信号の成分が正しく復元できない場合や、テレビ自身のアナログ回路の定数が劣化や温度によって狂ってしまうと画面全体が斜めに映ったり、縦にスクロールを始めてしまうということが日常でした。

アナログ時代のビデオ信号というのは、ひとつの線に輝度信号、同期信号、それに色信号が重畳(重ね合わされていること)して載せられており、これらを周波数成分であるとか信号レベルで分離して、それぞれの信号の役割を果たしていました。

NTSC

Wikiの説明などではIREという単位で書かれていますが、得られた信号を1Vppというレベルにして、この電圧で信号を解釈しているのです。この時に閾値として使う電圧としては

  • ペデスタルレベル

  • 同期信号

  • セットアップレベル

というのがあり、これらの電圧を調整するためのボリュームがテレビの裏であるとか側面にあったものです。

IREという名の電圧単位

またブラウン管はアナログ回路なので、送らてくる同期信号と回路で生成している同期信号のタイミングがずれることもあって(この2つを合わせるからこそ「同期」信号なんですが)、走査線1本毎の水平同期(15.75kHz)と画面単位の垂直同期(59.9Hz)を調整するためのボリュームもありました。これが合わないと画面が斜めになったり、流れたりするので、テレビを叩くのではなくて、ちゃんとボリュームを回して調整をしたのです。

アナログ ディジタル・ビデオ信号の基礎知識

https://www.cqpub.co.jp/dwm/contents/0128/dwm012800800.pdf

つまりレベルで信号の種類を判断していたことから、輝度信号の強さが大きく変化したりすると、輝度ではなく同期信号と勘違いしてしまうおそれがあったわけです。ですからニュース速報などで強い白レベルを持つ文字の信号が来た途端に、画面が傾いて肝心なニュースを見ることができないなんていう笑えないこともありました。同じことは映画の字幕などでもよくありました。

まあ昔のテレビは、こうした調整を割と頻繁に行う必要があって、これを上手にできるとお父さんの株も上がったものです。時代を経るにつれ徐々に自動調整ができるようになって、だんだん調整する必要もなくなると同時に調整できる人もいなくなってしまいました。真空管がボーと光っている脇にあるボリュームを回すのは、何か怖いものもあったのですけどね。

ということで、同期信号の(時間的、表示位置的な)近くに輝度信号を含ませると、それが画面に出なかったり同期信号を見失うことがあったので、画面の左右には何も表示させない領域を設ける必要がありました。ですから、どの範囲を実際に画面に出すかも調整することが出来て実際には有効な信号の90%くらいを表示しているケースが多かったです(オーバースキャン)。この調整次第では信号があるにもかかわらず画面には出てこないこともあるので、パソコンなどの出力をテレビで出す時には、上下左右に余裕をもたせる必要がありました。

MSXの画面モードの説明(まあVDPの仕様なんですが)の中にも、ボーダーエリアという表現でこの隙間の部分の色指定なんかが登場します。またソフト側でこの領域を調整する方法として、SET ADJUSTというコマンドもあったります(誰も知らないよね?)。そもそも初期の頃はSCREEN 1では横方向に32文字、縦方向に24行の表示が可能だが、特に最初のメニュー画面などではディスプレイの調整が不十分ですべての領域が表示されるとは限らないので、上下左右の端2文字分は使わないほうが良いみたいな記述を見た覚えもあります(どこで見たんだっけ?)。

MSXの表示領域について

マイコンなどでディスプレイ出力の信号を扱う時には、こういったビデオ信号の原理を覚える必要もあったのですが、パソコンではだいたい何も考えなくても画面を出せたのでだんだん無頓着になっていったようです。もっともVRAMのデータを画面に出すために、CPUは画面を出していない間しかVRAMを読み書きできないという設計だったパソコンも多くて「垂直同期のタイミングで割り込みがかかるので」であるとか「画面がチラつくけど速度を稼ぐためにDMAを止める」みたいな形で顔を出すことはあったようです。

テレビの信号については、まだまだ色の扱いや音声多重放送、ビデオに録画する時の話や編集する時の同期信号の話など、まだまだありそうです。

ヘッダ画像は、以下のものを使わせていただきました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:SW_Testbild_auf_Philips_TD1410U.jpg
By Eckhard Etzold - Self-photographed, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4230239

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