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HC-20 - ハンドヘルドPC登場

1980年に最初のポケコンであるPC-1210が発売され、翌年にはPC-1500も登場し、持ち歩けることで、その可能性が広がることがわかってきました。アメリカでは最初のモバイルパソコン(ラップトップと呼ばれた)であるOsborne 1が1981年に登場しましたが、これは重量が10キロ以上もあるもので、出張に持っていくことは出来るよね、というレベルで持ち歩くと言うには少し距離がありました。

Osborne 1

当時は通信環境が整っているわけではなく、自分のプログラムと、その環境を使うには物理的に運ぶしか無く、特にビジネス分野では、多少、制約があっても良いから必要なデータを持ち歩きたいという要求は強かったようです。

そこに登場したのが1982年発売のEPSONのHC-20です。サイズは290ミリ✕215ミリとほぼA4サイズ(厚みは44ミリ)で、画面こそモノクロ液晶で20文字✕4行しかありませんでしたが、マイクロソフトのBASICが動き、内蔵しているニッカド電池で50時間動かすことができました。重さも1.6キロしかありません。

HC-20

画面が小さいことを補うためにも、なんとレジサイズの小さなプリンタを内蔵しており、さらにオプションですが(殆どの人は使っていた)マイクロカセットを使うデータレコーダまで入れてA4に収まるのです。キーボードもちゃんとしたJISキーボードで入力もスムーズです。

1982年7月 ハンドヘルドコンピュータ「HC-20」

難点があるとすれば、価格が14万円弱(マイクロカセットも入れれば16万円強)と、まともなパソコン並みなことと、処理速度がなかなか厳しいところでした。速度が遅いのならアセンブラでといきたいところですが、CPUが6800互換で既存のバイナリが少なかったのと、何せクロックが0.6MHzですから、頑張ったところで限度があります。実は2つもCPUを積んでいたんですけどね。

【信州精器・諏訪精工舎】HC-20

画面サイズが小さいですし、ゲームをするには遅すぎましたから(値段もお高め)、もっぱらビジネス向けで使われたようです。それでも当時としてはかなり売れたようです。海外向けにHX-20としても販売され人気を博し、ハンドヘルドコンピュータというカテゴリが始まることになります。

Epson HX-20

HX-20

キーワードはCMOSです。電池で動くCPUは、以下の記事にも書いたCOSMACがありましたが、まだ半導体の製造技術がn-MOSなどと比べて困難で集積度を上げることが出来なかったのですが、この頃からようやく既存のメジャーな8ビットCPUの互換チップが作れるようになりました。

乾電池で動かせたCPU - COSMAC(RCA 1802)

発表された当時はなかなかのインパクトで、月刊アスキー1982年7月号には発売前の段階で評価記事を載せており、その期待度が伺われます。内容としてはディスプレイやモデム、フロッピードライブも接続できる拡張性に注目しており、記事の最後には活用アイデアコンテストを行い25台もの同製品を賞品としていました。既成のOSも無いのでソフトウェアに関してはまっさらな状態で、早くソフトを蓄積したかったんだと思います。

これこそが世界初のA4モバイル、エプソンが昭和に生んだ50時間駆動ハンドヘルド『HC-20』

当時大ヒットしたエプソンのハンドヘルドコンピュータ「HC-20」

遅い遅いと言われていましたが、4MHzで動くZ-80Aの3分の1の能力が電池で使えれば、割と優秀だったような気もします。

HC-20 (EPSON) 1982年

広告では屋外で使うシーンもあったようですが、さすがに使っている人を見た覚えはありません。持ち歩けるので、持ってきて貰って使わせてもらうには便利でしたけど。まだパソ通が広まっていなかったのが惜しいところです。まだ音響カップラの時代ですからね。

エプソン ハンドヘルドコンピュータ HC-20

HC-20 - TImeMachine

発売時点では、まだ時代を先走っていた感じもありましたが、徐々に世の中のほうが追いついてきて、後継機種やライバル機種も登場しハンドヘルドコンピュータという世界が出来ました。

ハンドヘルドコンピュータ

活用するには日本語と通信の環境が整備される必要が高くて、PC-1500は持っていましたし、私がこのカテゴリに足を踏み入れたのはもう少しだけ後の時代になってからでした。

なかなか優秀な造りだったようで、まだ動作する個体が結構あるようです。なんとプリンタ用紙やインクリボンもまだ入手する方法があるらしいです。さすがエプソンですね。

1982年製の世界初のハンドヘルドコンピュータHC-20を入手しました

ヘッダ写真は月刊アスキー1982年7月号に記載された同機種の広告ページ(部分)。この号に特集記事も載っていました。

#レトロPC #EPSON #HC20 #HX20 #CMOS #ハンドヘルドコンピュータ #Osborne1  

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