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TMS9900 - 16ビットCPUだから良いわけではない

さて、変わり種のCPUをいくつか紹介しましたが、比較的普通のものに戻りましょう。今回はTIのTMS9900です。このチップは、1976年にリリースされた16ビットCPUで、当初はワンチップ化したミニコンのような使われ方をしていましたが、TI-99/4Aというパソコンにも採用され、広く使われました。

TMS9900

出自がワンチップ化したミニコンであることもあり、整ったアーキテクチャを持っています。特徴的なのは、メモリを最大限活用することで、CPU自身が持っているレジスタはとても少ないことです。この時代は、複雑な処理を行うCPUでアレコレするよりも、メモリアクセスをしてしまう方が、むしろ速度が出るという時代でした。あまりにレジスタを減らしたため、スタックポインタも持っていないのですが、退避するものが少ないため、割り込み処理が素早くできるというメリットもありました。

ただし、ハードウェアとしては、多くの機能を盛り込んだため、64ピンのパッケージを採用しており(8080など一般的な当時のチップは40ピン)、電源やクロックも少し複雑なものを与える必要があったため、素人だけでなくプロでも少し扱いにくいものでした。

TMS9900

TIはその時代でも老舗の半導体メーカーであるため、どんどんチップを製造するものの、サポート、特にソフトウェアに関してはあまり熱心ではありませんでした。それでも評判が良かったためか、パソコンという分野での需要を喚起したかったのか、TI-99/4Aというパソコンを1981年にリリースしました。

TI-99/4A

このパソコンは非常に優れた設計で、実際にそれなりには売れたのですが、メモリの接続を8ビットで行うなど、コストを抑えることに注力したため、せっかくの16ビットCPUであるのに、そのパフォーマンスは褒められたものではありませんでした。ただし、アドレス空間も一般的な8ビットCPUと同じ64Kバイト(32Kワード)しかありませんし、ソフトウェアの書きやすさを除けば、そんなに違うものはありませんでした。

しかし、このパソコンは、ディスプレイ表示は専用のチップに任せる(さすがチップ屋です)であるとか、メモリをレジスタのように使うなどのアイデアは、その後のCPUのアーキテクチャやパソコンの設計手法に大きな影響を与えたと言えます。

THE INSIDE STORY OF TEXAS INSTRUMENTS’ BIGGEST BLUNDER: THE TMS9900 MICROPROCESSOR

その後も、いろいろなバリエーションを展開しながら製造され続け、玩具メーカーであるトミーから1982年にリリースされた「ぴゅう太」にも採用されました。

TMS9900 family

https://www.cpu-world.com/CPUs/TMS9900/index.html

ミニコンのアーキテクチャを持つCPUは、8ビットな時代にはパソコンでは高級言語を使うことも限られましたし、マルチタスクをするわけでもなく、メモリも数キロバイトしか持たない時代にはメリットを出しにくかったようです。

TMS 9900 Microprocessor Data Manual

http://www.bitsavers.org/components/ti/TMS9900/TMS_9900_Microprocessor_Data_Manual_May76.pdf

http://datasheets.chipdb.org/TI/9900/TMS9900_DataManual.pdf

ヘッダ画像は以下のものを使用しています。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:KL_TI_TMS9900_Black_Background.jpg

Konstantin Lanzet - CPU collectionCamera: Canon EOS 400D, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7028108による

#CPU #16ビット #TI #TMS9900 #TI -99 #ぴゅう太

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