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ドラマだけでは見えなかったVAULT、BOS、シェイディサンズ、ヌカコーラ等の新事実【Amazonプライムオリジナル「フォールアウト」】

アマプラオリジナル作品がようやくいい形で脚光を浴び始めたドラマ「fallout」を観た。

シーズン1は基本的にストーリーで見せていくと言うよりは世界観紹介と核心は見せすぎずにシーズン2に向けた伏線を散りばめていく展開だった。

シーズン3ぐらいまでは見据えてかなり大きな風呂敷を広げたなというのが正直なところだが、原作が完成されている分資金力のあるAmazonに世界観再現に特化させたら最強なのは伝わった。

アマプラオリジナル作品はストーリーで裏切られてるのであまり期待はしないでいるが、シーズン1の見せ方は噂通り素晴らしかった。こういうドラマ路線で完成されたものに特化して作ってほしい。

falloutは未プレイな自分でも楽しめたが、最近のドラマでは珍しく用語や世界観も詳細なところは余白だらけで説明不足だったのも否めない。

各話振り返りつつ次シーズンに向けて世界観の整理をここでしておく。


あらすじ
史上最高のゲームタイトルの一つ「Fallout(フォールアウト)」、それは持てる物などほとんど残されていない不毛な世界を舞台にした、持てる者と持たざる者の物話だ。世界の終末から200年後、快適な地下施設に暮らしていたはずの居住者は、とてつもなく複雑で驚くほど奇妙で、そして暴力に満ちた世界へと足を踏み入れることになる。


舞台は資源戦争による最終戦争とされ核がアメリカに落とされた2077年の200年後の世界となる。

VAULT33で暮らしていたルーシーは同じ地下で繋がれているVAULT32の男と婚約する流れで進んでいたがこれが によるVAULTに対するテロであり、ルーシーの父を攫って物語が始まっていく。

社会保存とリスク分散された数のVAULT


VAULTとはVAULT-Tecが建設した避難用シェルターであった。戦争で崩壊した世界を生きるための最後の砦。

表向きは核戦争の衝撃にも耐え生活もできる人類を守るためのシェルターだとされていたが、終盤ではこの謳い文句は全てプロパガンダであり選ばれし者たちだけを保存するための施設だったと明かされる。

そしてVAULTの住人でさえそれに気づいてるものはこの時も極一部で選ばれた優秀な人間として優雅な生活をしている。

VAULTは優生思想を元にした人体実験施設だったわけだ。

ちなみにVAULT31~33はゲームでも描かれておらず正史の過去を補完する完全オリジナルな舞台と言える。

VAULT31では会議に参加していた当時のVALTTECの役人と思わしき人物の脳が選ばれし人間らを管理する場となっていた。

彼は世界の発展をマネジメントと捉えて管理していたわけだが、そこが本来の目的であったとすれば、

VAULT31~33以外のゲームなどで描かれていたVAULTは「リスク分散」のための居場所だったということにも考えられる。ゲームも合わせると約122個存在するようだ。

ドラマで訪れたVAULT4の人間をミュータント化させて集まっていたことや、12階で堂々と実験が行われていたことも踏まえるとそういうことなのだろう。


マキシマス視点から見える衰退したBOS


BOSは元々テクノロジー保全を理念とする非人道的な化学による過ちを許さない武装組織だとされる。BOSがあの科学者の顔を追い続ける理由はそこから来ると思える。

米国に併設する巨大なテクノロジーを持った軍事組織だったようだが、核戦争後の様子を見ると完全に独立した軍事国になっている。この辺の背景はシーズン1を通しても過程が見えなかったためまだ何とも言いづらい。

シーズンを踏まえてマキシマスを通じて見えるのはBOSはそうした強固なイデオロギーで成り立っていた理念に歪が生まれ始めているということ。

未来の世代に文明の再建に役立てるために過ちを繰り返させない組織だったはずが最終戦争後はリーダーも力で奪い合うことを信条にし、若い兵士をテクノロジーで実験的に利用していく組織になっているジレンマも見て取れる。

最終的にマキシマスはBOSの英雄としてリーダー格の立場になる。BOSやナイトの歪んだ正義に絶望もしていた彼がもう一度立て直すための革命を起こす話になるのだろう。

BOSの理念をもう一度立て直すことになれば自ずと父を追いかけるルーシーとグールの利害は一致していく。


科学者の顔が狙われた理由

2話以降自ら毒死した科学者の顔がルーシー、BOS、グールの争点となり展開されていく。

科学者の男は頭にVAL35というかつての資源戦争で争っていたエネルギーの問題を全て解決するテクノロジーのチップを埋め込んでいたのが狙われた一つの理由だった。

なぜ彼があの技術を持ちだして命をかけて逃げていたのかは描かれていないが、元々モルディヴァ―と開発に携わっていたのは間違いないだろう。

ルーシーの父を攫うことができたことで科学者にとって持ち出す条件も整ったタイミングだったと思える。

またシェパードと見えるドッグミートを非人道的ではあるが訓練させる施設の背景を観ても、VAULTでは受け入れられなかった犬を意図的に繁殖させている意味ではモルディヴァ―の思想に通ずる反体制的なところも垣間見える。


犬がVAULTに入れられないのはなぜか

ウェイストランドに出ると科学者は犬と共に行動していく。

ポストアポカリプスと言われるSFでは犬と行動していく作品は多いが、

フォールアウトの世界観も「少年と犬」という古典が起源に来ているらしい。

少年と犬
時は2024年の近未来。核戦争により世界は荒廃し、文明社会の名残は微塵も残っていない。放射能が原因の遺伝子異変で、地上にはほぼ女性がいなくなってしまっていた。そんな世界に暮らす少年ヴィック(ドン・ジョンソン)は、飼い犬の超能力ブラッドと共に食料と女を探して放浪する日々。

荒廃した世界で少年は性欲を求め、犬は食欲を求める中地下壕にある文明を見つけ少年は犬の忠告を聞かずに地下の扉を開いていく。フォールアウトとは真逆の話だがよく似ている。

ポストアポカリプスという管理もされていない世界では犬の体力だけでなく人間には生かせない勇敢さや冷静さ、賢さを持つうえで必ず徴用される。

軍用犬にもされているシェパードは忠実かつ賢さや体力も持っておりフォールアウトの世界観でも採用された理由だろう。

逆に管理されているシェルターの世界では中々彼らは介入できない。

VAULTTECの社長もVAULTに犬を入れることは最初に拒絶した。

彼らは肉を食用とするためにVAULTの世界では生きられないことを上げていたが、ディストピアにおいて彼らは人間よりも一番賢く鼻が利いてしまう存在だからである。

偽りの文明によって社会保存を意図していた政府にとっては最初に忠告する犬は真っ先に排除する必要があったのだと思える。


賛否別れそうな正史とシェイディサンズの歴史の齟齬


VAULT4の教室にて黒板に首都であったシェイディサンズとNCRの歴史について記されていた。

VAULT31-33が核爆弾をシェイディサンズに落とすまでの歴史が描かれていたが、2277年にシェイディサンズが消滅したということで正史とは異なるオリジナルな展開に。

2277年にシェイディサンズが消滅するとその後数年後に首都で争ったFallout:New Vegasの存在との歴史が矛盾してしまうことになるらしい。

またゲーム内で最大勢力だったNCRもシェイディサンズと同じころに衰退しており、その後に繋がるゲーム作品に齟齬が既に生まれ始めている。

たった数年で復興ができる根拠ができれば変わってくるが。

黒板もプロパガンダだったオチも容易に想像つくがドラマによって正史から外される作品も出てくるかもしれない。


ヌカコーラの中身とブラックジョーク


ドラマでも度々目に映るヌカコーラも気になった。

ヌカコーラのキャップは紙幣やコイン、物も作れない地上では通貨として使われている話もあるが、

ヌカコーラの中身もフォールアウトの世界観構築を担っている。

一日の120倍の糖分摂取量と共に核による放射線も含まれていることが記されている。

これはまだ放射線の危険性が理解されていなかった1930年代に美容や薬として製品化されていたラジソールなどを揶揄したものと言われる。

ヌカもnuclear(核、原子力)から来てると思うとコカ・コーラのパクリ以上にブラックジョークが効きすぎている。

全体的なフォールアウトの世界観や正史の流れもそうだが、過去の歴史の選択を再度シュミレーションし向き合った上で紡がれる話が多い。

過去は繰り返すことがテーマの未来予測だからこそレトロが混じったアイテムがリバイバルしていく発想なのだろう。

こういうSFの作り方は歴史を振り返っても、再度選択をシュミレーションする習慣のない日本では中々発想がなく面白い設定だった。


戦争ビジネスではなくシェルター企業による野望


戦争やディストピア世界における話でも、結局武器や医療で儲けられるために国と利権を組んで戦争自体が策略されてる話はよくある。

そこを資源戦争という名目によって世界ごと消耗させ、1シェルターの大企業が商機を見出してどでかい一発で世界を一掃させてしまうというSFは新鮮だった。

資本主義における最終のサイクルとして「時間」の価値を掲げVAULTだけに築き上げられる社会を永遠に保存することだけが彼らの信条である。

国側も関与していないため結局1話でテロをしたモルディヴァ―もNCR新カリフォルニア共和国の人間だったことが分かる。

衰退していくエネルギー資源の未来は自ずと訪れるだろうが、技術の保全や譲渡で争っている中で意外なところから足もとが掬われる最悪の想定もしておかなければいけない。


VAULTという争いも無く生活に困らないユートピアの側面と生態系操作と自由な運命が築けないディストピアの背反するエピソードを見せながら、

地上ではポストアポカリプスを描くというストーリー構成としても複雑で壮大な世界観を上手く「ドラマ」の形に落とし込めていた印象だった。

最終話における1話の伏線回収の構成も良かったが広げすぎた風呂敷もダラダラ伸ばさず上手くまとめて終わらせてくれることを望む。






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