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アニメ版海江田艦長の思惑「もしも日本が核を保有していたとしたら」【沈黙の艦隊】

Amazonスタジオにて制作された実写版が話題の「沈黙の艦隊」をアニメ版から見てみた。

原作は何となく知ってたがスルーしてたし実写版も観てないのでほぼ初見であるが面白かった。

政治ファンタジーではあるがこういう「もしも」の危機や未来を想定する作品が映画やドラマでは少ない日本にとっては意味のある実写なのだろうとは思えた。実写では現代的に加えたオリジナルな展開もあるらしいので、敢えて原作に忠実なアニメ版に沿って感想を述べたい。

あらすじ
日米共謀により極秘裏に建造された日本初の原子力潜水艦「シーバット」。しかし、シーバットは試験航海中に海江田四郎艦長指揮の下、突如反乱逃亡。米軍はシーバット撃沈を決定する。追撃してきた米海軍の前に出現したシーバットは、全世界に向けて独立国「やまと」を宣言、米艦隊の包囲網を突破し、同盟締結のため日本へ向かった。苦悩する日本政府は、「やまと」を護衛するために海上自衛隊護衛艦隊の出動を決定。日米は一触即発の状態に入る。

アニメ版も全3作の映画尺になっており、海江田による突然の原子力艦隊やまとの独立宣言、海江田の思惑と日本との和平交渉、対抗する米軍との戦闘の3編に分かれている。

個人的にはやはり2作目の海江田の思惑と国際政治の話になるVoyage2が一番面白い。

海江田の思惑をざっくり言ってしまうともしも核を持っている原子力艦ごと国として独立して国際政治をすれば、全世界に核廃絶を実現できるのではないかということ。

厳密に言えば本当に彼らが核を持っているかは定かではない。ただそれを持っているかもしれないと世界にちらつかせることで全世界に対して抑止力になるのではないかという思惑があった。

そして彼はその独立国として日本に一番最初に同盟を持ち掛けたのは決して自分が日本人だからではないと語る。それは日本が唯一政教分離の国であるからということ。

今日でいえば地政学的として予想外な争いも起きてはいるが、大戦後に起きてしまう争いやテロは宗教的な視点の争いが最後に引き金を引いてしまうことが多く、日本は唯一無神論で成り立っている国であるからこそその意味があるということである。

ただこれも今日でいえばかなり耳の痛い話になっているが。

またこれは作中では語られていないが日本が核を保有していると世界に認識させたことで実質的な永世中立国的立場にいることを選択しやすくなる見方もある。

海江田と同盟を結んだあと首相は早々に国連安保理にその核の行使権を委ねることを高らかに宣言し海江田もその条件を了承した。

結局作中では共同開発したアメリカがそれを認めさせなかったことで戦闘は起きていくが、海江田の思惑としては渋々吞んだわけではなくあそこまでが日本と同盟を結ぶ思惑だったと感じる。

戦争では敗戦国となり唯一原爆被害にあったという国の道義も踏まえて日本が永世中立国な立場で国際政治をすれば世界に対して説得力を持てる国にはなり、海江田が望む核廃絶のための超軍事国の創設の理由としても繋がりやすい。

非核三原則や憲法九条の矛盾が生じるようにも見えるが国連にその行使を委ねさせたことでこの矛盾も解釈としては綺麗に解いている。ただアメリカやロシアが認めさせず実力行使するから、戦闘する展開にはなるのだが。

この辺の政治家の議論も9条の改正のときとも似ていて面白い。これもいろんな見方があるので控えるが、あれも解釈の制限を広げるということではあったと思う。その辺も作中の首相が上手く取りまとめていた。

あと海江田もそうだが首相がめちゃくちゃ有能すぎるので仮想ではあるけど結局ファンタジーにしか見えてこないのは哀しい所でもある。

ただ政府自体もあれは積極的な判断ではなく海江田による「余所」から突然やってきた提案への受動的な対応である。

結局明治から、海からやってきた異国の人間の提案によってしか日本は改革することができていないというのが日本人が見る視点として自然なのだろう。







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