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ジョー・ブラックをよろしく

思い出に残り、今、別の感覚で思い出す映画がある。
ブラッド・ピット主演の「ジョー・ブラックをよろしく」である。
あらすじ。
ニューヨークのメディア会社の社長、ビルのもとに青年、ジョー・ブラックに姿を変えた死神が降り下りる。体の調子が思わしくなかったビルは、自分の死期を予感する。家族にどう伝えたら良いか困ったビルは青年をジョー・ブラックだと紹介する。婚約者に情熱を持てなかった一人娘のスーザンだったが次第にジョーの不思議な魅力に惹かれていく。ジョーと出会い、人を愛する「情熱」を学んだスーザンはようやく婚約者との結婚を決意する。
結婚式の最中に、ビルはジョーに連れられ、未練を残しながらも小高い丘のむこう側に消え去っていく。

1998年公開で、当時私は40歳。
スピリチュアルでもなく、ありがちな、死を悟った大金持ちが人生を懺悔し最後は善人として死んでいく。というような安っぽいものでもなかった。
ちょっと設定が変わったヒューマンドラマだと感じた。
当時はそれ以上でも以下でもなかった。

さて20年後、外出がままならない中、もう一度観なおした。
いつにまにかジョー・ブラックではなく、ビルの立場になっていた。
よく「お迎え」とかいうが、本当に自分にもジョーみたいなのが降り下りるのだろうか?あの丘のむこうはどうなっているのだろうか?
不思議な感覚で観なおすことになった。
映画そのものは1秒たりとも当時と変わっていない。
だが観る年齢により、全く違う意味を持つ。
特に、ジョーとビルが小高い丘のむこう側に消え去っていくシーン。
当時はなんということはなかったが、今回は珠玉であった。

◇ ◇ ◇

話はそれるが、105歳で亡くなられた日野原重明先生とお食事をご一緒させていただいたことがある。当時先生はちょうど100歳であった。
わずか2時間ほどの会食であったが、驚かされることばかりであった。
私がご馳走する立場だったので、先生のご高齢を考え、和食を予約した。
が「僕は肉が食べたい」。ので、急遽ステーキハウスに変更、先生の注文は「フィレ。ベリーレアで400グラム」。ペロッと召し上がられ、「追加したいけど、身体のこと考えてやめとくわ」。
また、お忙しそうですねと話を振ると、「本業以外に、講演会やら何やら、5年後までスケジュールが入っている」。きっちり5年後に天国へ。
偉人の活力は、食と仕事。。。実感した出来事である。

映画の話題に戻すと、先生もこの「ジョー・ブラックをよろしく」をご存じで、ご自身のホスピス病棟に小高い丘を作っているということであった。
死期の迫っている患者にとって「あの丘は良い。丘のむこうが見えないのも良い。あのむこうに何があるんだろう、と思うということは、何かがあるという希望につながる。」ということであった。

この時は、実感がなくポカンと聞いていたが、なんとなく理解ができるまで齢を重ねたということなのだろうか。
寂しい気分もする。

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