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動物病院のカルテ 礼儀作法を見失う

では、始めます。
メス下さい!
メッツェン!
モスキート!
もう一本お願いします!

動物病院でも、手術はよく行われます。
メスやハサミや糸を使うのですが、一般的なそれらの持ち方や結び方とは、だいぶ異なります。
だから新人獣医は、暇さえあればそれらの器具を持って使い、慣れるように努めます。
ハサミを持つ時は、丸い穴にそれぞれ親指と薬指を通します。
人差し指は、ハサミの留め具辺りにおきます。
中指と小指は丸い穴の周りに沿えます。
この方が一般的なハサミの持ち方よりも、繊細な動きをしやすいのです。
羽尾先生はこれを覚えてから、紙を切る時などもこの持ち方です。
「みんなこうやって持ったら良いのに。なんでそう教えないのだろう?」
などと思うこともあります。

メスの持ち方は、テーブルナイフのように持つか、ペンのように持つかのどちらかです。
犬や猫などの動物病院では、主にペンを持つ方法がとられます。
その方が繊細な動きをしやすいからです。

「高志くん、何してるの?」
「え、何が?」
記念日だからと、彼女と行ったコース料理。
羽尾先生はペン軸把持法を用いてナイフを持ち、メインである黒毛和牛のポワレを切っている自分に気づいたのでした。

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