（出血！、・・・・では無い、のかな！？）

トイプードルの診察中、頭の毛に赤い何かがこびり付いているのを見つけた。
羽尾先生は、最初血が出ているのだと思ったが、手に取ってみてどうやら違うようだと気づいた。
「これは・・・」
そう呟きながら、ふと顔をあげたところで、トイプードルを連れてきたご婦人（正直に言うとおばちゃん）の真紅の唇が目に飛び込んできた。

（あぁ・・・。）
おばちゃんがトイプードルの頭に「ぶちゅ～」としている図。
それが羽尾先生の頭に、悪夢の様に浮かんだ。
その瞬間、ご婦人はニターッと笑いながら、ピンク色に頬を染めた。

「これは・・・、大丈夫ですね」
そう言いながら、羽尾先生は診察台の下でアルコール綿を使って手についた口紅を、そっと丁寧に拭った。