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動物病院のカルテ 犬が「なく」

犬はなきます。

鳴きます?
泣きます?

羽尾先生はカルテを書いていて、ふと疑問を感じました。
「あれ?犬がなくのって、どんな漢字を使えば良いんだろう?」
鳴くと書いたら、なんだか虫の鳴き声と同じようです。
鳥なら鳴くで良いのでしょうけど。
羊や山羊も鳴くはずですけど。
犬は鳴くのとは、少し違う気がしたのです。

先日、チワワの診察時、その子がポロリと涙をこぼすという出来事がありました。
人が感情で流す涙とは違い、犬は緊張すると涙の分泌が増えることがあるのです。
決して悲しいわけではありません。
しかし、一般の人はそんなことを知るよしもありません。
「あらららら、泣いてるの?そんなにここが嫌なんだね。可哀想に…」
この時、羽尾先生はやるせない思いをしつつ、カルテには「問診中に泣いた」と書いたものです。

また、いかにも元気がない柴犬は、こんな泣き方をしていました。
「この子が一晩中、嗚咽を漏らしていて…」
つまり何が悲しいのか、声を殺して咽び泣いていた、と言うのです。
よくよく聞いてみたら、気持ち悪そうに「オエッ」と言っていただけで、全く泣いてはいなかったのですけど。

そんなわけで、羽尾先生はカルテにはいつも「なく」
と平仮名で書いています。
別にそれがしっくりきている訳ではないのですけど。

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