肉食犬 動物病院のカルテ
一ヵ月もの間食欲があまり無いため、動物病院に連れてこられたミニチュア・ダックスフンド。
それにしては、丸々とよく肥えています。
不思議に思った羽尾先生は、保護者の男性に聞いてみました。
「食欲が無いと言っても、何かは食べているのですよね?」
「唯一食べるモノがありましてね」
「ええ、何ですか」
「人の肉です」
「え?」
羽尾先生はギョッとして、聞き返しました。
よく聞こえなかったと思ったのか、男性はもう一度言い直しました。
「人間の肉が好きなようでね」
「・・・」
「そればっかり、まぁ、良く食うんですわ」
その日のお昼休み、一緒に診療に入っていた看護師さんが同僚の看護師さんと、楽しそうに話していました。
「牛とか豚とか鳥とかの肉料理のことですって」
「へー、なるほどね」
「ホントにビックリしたわよ」
「人間が食べる用の肉、ってことよね?」
「まさか勘違いはしないだろうけど」
「羽尾先生もビックリしたでしょうね」
「いい顔してましたよ」
「どんな?」
「こんな!」
その様子を、羽尾先生は乾いた笑いをしながら、眺めていました。
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