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オフコースのオリジナルアルバムを勝手にレビューするシリーズVolume10:「LΦIVE」

先ずお詫びから。本来、「We are」の前に、これを紹介しなければならなかった。順番から言えばこちらが先にリリースされているし。
忘れていた。見事にすっ飛ばしている。申し訳ない。「Over」をやる前に、これを片付けないといけない。
歳のせいでボケたか?あるいは病気のせいなのか。いずれにしろすっ飛ばしてしまったことは事実だ。大変に申し訳ない。

例によって敬称略。ビル・シュネーが関わらない作品でもある。まあ、カセットコーダーで録音されたとか、そういう作品もあるので、彼がエンジニアをやっていたら、大きく質的に変わったかもしれない。
一部、収録時期の関係でグループ名に中黒をつけるべき箇所があるが、それはしていない。
本作のタイトルをどう表記するか迷った。Amazonなどで見られるように「LIVE」にしておくべきか、それとも「LΦ(ギリシャ文字のΦで表記しているが、本来は「O」に斜線を引っ張ったもの)IVE」とすべきか。
どっちでも良いと思ったが、ひとまず「Φ」込みで記載しようと。

序説

オフコースのライヴアルバムとしてはこれが2作目になる。前はこちら。

こちらは、一部の曲などは割愛されているが、ほぼ同じショーをトータルに収録しているのに対して、「LΦIVE」は収録場所が曲によって異なっているという違いがある。
いや、基本となるショーがあるにはあるのだけど、それだけがフィーチュアされているわけではないのだ。

その上とにかく今回は大ボリュームの2枚組である。「THREE AND TWO」までの様々な曲を網羅している。
一つのショーとしてよりは、この頃のオフコースはこういうショーをやるんだなあ、ぐらいの感覚で聴いた方が良いのかもしれない。

後に出される映像ソフトの「1982.6.30」みたいなもの、と考えても良いのかもしれない。いや、あれは収録日と場所が一貫しているので、このアルバムとは若干趣は違うけれど。

序説

もう一度言うが2枚組だ。

基本的には収録曲の大多数である19曲中12曲が、1980年2月4日(2曲)または5日(10曲)の新宿厚生年金会館公演からで、2曲が横浜神奈川県民ホール公演から、演奏のみの2曲が九段会館で行われた「オフコース小さな部屋Vol.7」から、札幌厚生年金会館、広島郵便貯金会館、田園コロシアム(前にTHREE AND TWOに収録された「いつもいつも」とは別の日)から各1曲ずつ選ばれた。

また、札幌と広島での録音は、会場のテープレコーダーを使用してのものであり、「小さな部屋」で録音されたものは、いずれもカセットテープで録音されている。

マスターとしてはこのようにおよそ貧弱と言わざるを得ない作品もなくはないが、会場のテープレコーダーを使ったなんて、言われなければそうと気づかないし、カセットテープ録音も同様だ。

この頃はまだビル・シュネーが関与していないので、Kimura・Hachiya・Meraトリオの音作りである。これはこれでダイナミズムを表しており、個人的には良いと思う。

収録曲の多くは、収録時期がTHREE AND TWOツアーの最中だったこともあって、THREE AND TWOの収録曲だったり、その近辺でシングルカットされた曲だったりする。
THREE AND TWOで選から漏れたのは「その時はじめて」と「愛あるところへ」の2曲。少なくとも「愛あるところへ」はYouTubeで聴いたことがあるので、ツアーで演奏はしているはずだ。

収録曲は以下の通り。曲の末尾は収録公演。

DISC 1
1:愛を止めないで(新宿2/5)
2:Run Away(新宿2/5)
3:恋を抱きしめよう(新宿2/5)
4:雨の降る日に(新宿2/5)
5:思いのままに(新宿2/5)
6:風に吹かれて(札幌)
7:汐風のなかで(新宿2/5)
8:失恋のすすめ(新宿2/5)
9:老人のつぶやき(広島)
10:さわやかな朝を迎えるために(田コロ)
11:Chili's Song(小さな部屋)
DISC 2
1:歴史は夜つくられる(横浜)
2:君を待つ渚(新宿2/4)
3:SAVE THE LOVE(新宿2/5)
4:生まれ来る子供たちのために(新宿2/5)
5:さよなら(新宿2/4)
6:のがすなチャンスを(新宿2/5)
7:愛を止めないで(横浜)
8:僕の贈りもの(スペリオパイプ)(小さな部屋)

一部、何故かタイトルが微妙に異なった曲があるが、まあ、いろいろ事情があってのことだろう。
なお、各曲紹介は曲順は上のようにディスクナンバーごとに分けずに、通しで表記したい。

1:愛を止めないで

このアルバムの多くを占める1980年2月5日の新宿厚生年金会館公演からの演奏。
イントロ部分は小田のキーボードソロ。終盤に申し訳程度にサビが演奏されている。
というように、終盤もう一度出て来るものとは違い、あくまでもここではイントロダクション風の演奏になっている。導入部、というテイストだ。
(作詞・作曲:小田和正)

2:Run Away

少しユルめのテンポながら、ロックテイスト溢れる作風に大きくアレンジが変わった作品。収録日と場所は1と同じ。
言うまでもなく「SONG IS LOVE」のオープニングナンバーであり、シングル「めぐる季節」のカップリング曲でもある「ランナウェイ」だが、ここではアレンジの変化と共に曲タイトルも英語表記になった。
スタジオ盤はキーボード、というよりシンセ主体のアレンジだったが、ここでは文字通りギターオリエンテッドロックになっている。サビ部分で小田の声が明らかに聞こえてくるコーラスがカッコいい。
シンセのソロは終盤に出てくるが、ここではやや控えめ。曲終了と同時に挨拶の第一声を放つのは小田。
(作詞・作曲:鈴木康博)

3:恋を抱きしめよう

鈴木の曲がもう一つ続く。アルバムにも収録されたが、シングル「風に吹かれて」のカップリング曲なので、そういう意味では有名な曲かもしれない。
鈴木はアルバム「僕の贈りもの」の頃からこういうペーソス溢れる作品が得意でもあるのだが、本作はその完成形と言って良いのかもしれない。
スタジオ盤にほぼ準拠したアレンジの完成度も高い。収録日と場所は1と同じ。
(作詞・作曲:鈴木康博)

4:雨の降る日に

アルバム「ワインの匂い」の冒頭曲だが、ここでこういう選曲を持ってくる辺りがオフコースらしいというか。
もちろんスタジオ盤にあったような車の走行音のSEはない。また、元々ドラムスが入っていない作品でもあるため、大間ジローのドラムスや清水仁のベースも入っていない。
モーグシンセのソロもここでは入っていないアレンジになっている。収録日と場所は1と同じ。
(作詞・作曲:小田和正)

5:思いのままに

ツアータイトルでもあるアルバム「THREE AND TWO」の冒頭に入っている小田の作品。収録日と場所は1と同じ。
スタジオ盤と比べて途中のコーラスで何を歌っているのか、ある程度明瞭に聞こえるサウンドバランスになっている。
間奏のシンセと思しきサウンドは少しメロディにアレンジが加えられていると思われる。
最終盤に向かって静かになりつつ、徐々にパワーを貯めていくような部分をスタジオ盤に比べて長めに取っていて、しかもいざドラムスが本格的に入るとギターソロが展開されるという凄いアレンジになっている。
その部分は結構長い。そしていったんリズムがオフになりながら例のシンセソロが聴かれてフィニッシュする。面白いアレンジだ。
(作詞・作曲:小田和正)

6:風に吹かれて

3をカップリング曲としてシングルカットされた曲。スタジオ盤と違い、ややテンポが遅めにアレンジされている。
1979年11月22日の札幌厚生年金会館での収録だが、この会場のテープレコーダーを録音に使用している。商品化するライヴ音源で、それって本当なのだろうか?と思ってしまう。
ストリングスがアレンジにないバンドのみのアレンジなので、後奏部分はああならざるを得ないのかも。今のCDがどうかは知らないが、昔この曲ではエンディングに次の曲の紹介が登場している。
(作詞・作曲:小田和正)

7:汐風のなかで

小田がこの曲に入る際のMCで「ヤスの作った非常に美しい曲」という紹介をした曲。収録日と場所は1と同じ。「さよなら」のカップリング曲でもあり、「THREE AND TWO」にも収録。
鈴木は本作のみならず海を題材にした曲が多く、ここでも鈴木らしい世界観を聞かせる。
間奏で本来アコースティックギターがやる前半部のソロはエレキギターでやっている。それ以外は、キーボードのフレーズ等に若干の相違はあるものの概ねスタジオ盤に準拠したアレンジ。
(作詞・作曲:鈴木康博)

8:失恋のすすめ

アルバム「FAIRWAY」に入っている鈴木の作品だが、そこにはブラスが入っているはずなのを、ここではそれが入っておらず、そのアレンジの薄さを逆手に取り、アコースティックタッチで攻めている。
一種のフォークブルーズっぽいと言っても良い。セットリストにこれが入っているというのはむしろ面白くて私は好きなのだが。
収録日と場所は1と同一。
(作詞・作曲:鈴木康博)

9:老人のつぶやき

1979年6月20日に広島郵便貯金会館で行われた公演の中から収録しており、これも会場のテープレコーダーを使用した、とクレジットされているが、本当かどうかは何とも言い難い。
ただ、6と比べると会場のテープレコーダーを使った、という説明に説得力がありそうな音には聞こえるような気はする。
言うまでもなく「ワインの匂い」のエンディングナンバー。そして「みんなのうた」でボツを喰らった曲でもある。
(作詞・作曲:小田和正)

10:さわやかな朝を迎えるために

何故また「僕の贈りもの」のエンディングナンバーが出て来るのかよくわからないのだけど、ここに収録。もちろん、オリジナル通り鈴木がリードを取って歌唱している。
ただ、元々のタイトルは「さわやかな朝をむかえるために」なのだが、本作に於いては「さわやかな朝を迎えるために」と漢字表記されている。
しかも、これが1979年8月4日の田園コロシアム公演からの録音になっているという、なかなか面白いことになっている。
ちなみに、この翌日の田園コロシアム公演から収録されたのが「生まれ来る子供たちのために」のアルバム版に付け足された「いつもいつも」である。
(作詞・作曲:小田和正)

11:Chili's Song

松尾作のインストゥルメンタル。1977年4月25日に九段会館で行われた「オフコース小さな部屋Vol.7」からの収録で、これはカセットテープで収録された、とあるが、真偽はともかく、そうらしい。
演奏のクレジットは松尾しかないようだが、少なくともバンド全員が参加しているようだ。
松尾はハーモニカとギター(何処ら辺りからのフレーズをやっているかは不明)だが、ドラムス、キーボード、ベースなども明確に聞こえる以上、単独演奏というのはあり得ない。
松尾が最初期にオフコースで作ったオリジナル、ということは言える。ちなみにスタジオ盤はない。録音されたかどうかも不明。
(作曲:松尾一彦)

12:歴史は夜つくられる

1980年1月14日の横浜神奈川県民ホール公演からの収録。アレンジがスタジオ盤とかなり違う点があり、イントロのシンセによる三連のリフはギターで代用されている。鈴木の歌い方も少し語尾を伸ばし気味。
エンディングのオルガン風味のサウンドをシンセで代用している。ただ、CDの版によるのかもしれないが、次の曲のカウントが入ってしまっている。
(作詞・作曲:鈴木康博)

13:君を待つ渚

松尾の作品で、彼がリードヴォーカルをやっている。他の多くの曲とは違って、1980年2月4日の新宿厚生年金会館公演からの収録。
作詞は小田。元々松尾は作詞はあまり得意ではないのかもしれず、例えば後年には職業作家である秋元康や松本一起に依頼したりもしている。
間奏で松尾が喋る台詞は加山雄三の「夜空を仰いで」から引用している。後年の「せつなくて」のようなキーのパターンで曲を作っている。
なお、この後もセットリストに入ることが多く、後年「1982.6.30」でも取り上げられているが、オフコースとしてのスタジオ盤が存在しない。その代わり松尾が自身のソロアルバムで取り上げた。
(作詞:小田和正、作曲:松尾一彦)

14:SAVE THE LOVE

鈴木による8分超の非常に長い曲だが、問題なくライヴにかけている。アレンジはスタジオ盤とほぼ変化していない。シモンズっぽいシンセドラムでさえ聞こえてくる。
この長さはむしろライヴ向きなのかもしれないなあ、と思ってしまう。エンディングはスタジオ盤のようにぶつ切りでなく、キチンとエンディングが作られている。
収録日と場所は1と同じ。
(作詞・作曲:鈴木康博)

15:生まれ来る子供たちのために

このアルバムの少し前に発売されたシングル曲。スタジオ盤はシンセがフェイドインしてくるが、ここではそういう芸当ができにくいので、シンセは最初から主張するように大きめの音で鳴っている。
台詞部分にも特に仕掛けはない。アレンジは概ねスタジオ盤に準拠しているというべき。収録日と場所は1と同じ。ここでも編集がマズく、GDの版にもよると思うが、次の曲の紹介が入ってしまっている。
(作詞・作曲:小田和正)

16:さよなら

説明不要の大ヒット曲。収録日と場所は13と同じ。前半や最終盤はスタジオ盤ではアコースティックギター主体のアレンジのはずだが、ここではエレキ主体のアレンジになっている。
一部で使う楽器に変更が見られる部分を除けば、アレンジそのものはスタジオ盤に準拠している。
(作詞・作曲:小田和正)

17:のがすなチャンスを

たぶんオフコースのキャリアで最もライヴに於けるアレンジが変化したであろう鈴木の曲。収録日と場所は1と同じ。
元々スタジオ盤はグルーヴィなソウルっぽい曲だったし、「秋ゆく街で」で演奏された時はむしろスタジオ盤に近いアレンジだった。
これが「SELECTION1973~78」に収録されたライヴテイクでは、スタジオ盤にやや準拠しているが、若干の間奏がついた。
そして、本作のテイクになるともはや初期のグルーヴィさは吹き飛び、まったく別の曲になってすらいる。
この7分近くまで引き延ばされたアレンジが結果としてライヴに於ける完成形になり、「1982.6.30」でもこれに準じたアレンジで演奏されている。
このテイクでは、聴いていればわかるように大間ジローのドラムソロが売りであり、彼がドラムソロに雄叫びに大活躍するナンバーでもある。
無論、鈴木の歌もロックに振れていてとても切れ味が鋭い。終了直後にメンバー紹介と挨拶がある。
(作詞・作曲:鈴木康博)

18:愛を止めないで

収録日と場所は12と同じ。1と違い、まだるっこしいピアノソロがなく、スタジオ盤(特に「SELECTION1978~81」)に近い、いきなり始まるアレンジになっている。
恐らくステージ構成としては、アンコールのような効果を狙っていたものと思われるし、実際にもそういう扱いだったであろうことが推測できる。
聴いているとわかるように、ほぼスタジオ盤に準拠したアレンジになっている。但し、スタジオ盤のように「その一つがまっすぐに……」で終わらず、「君の方へ」とつなげていき、サビ、アウトロへとつなげていく。
ただ、編集がぶつ切りになってしまっており、ちょっと勿体ない。もう少しやり方があったんじゃないか。
(作詞・作曲:小田和正)

19:僕の贈りもの(スペリオパイプ)

収録日と場所は11と同じ。そしてこれもカセットテープでの録音、ということになっている。真偽は不明。
サブタイトルにスペリオパイプとあるように、縦笛、まあ、リコーダーといった方がわかりやすいだろうが、それで演奏しているインストゥルメンタルであり、当然歌入りではない。
小田と松尾がソプラノリコーダー、鈴木がアルトリコーダーを、それぞれ担当している。
こういうリサイタル形式の「小さな部屋」だからこそ可能だった試みであろうと思う。オフコースが自分たちの既発曲をこういうインストにするのは珍しいことではある。
(作詞・作曲:小田和正)

アルバム全体の短評

何というか、評価の難しい作品ではあるが、せめて、全て同じツアーから取り上げてほしかった。

例えば「Chili's Song」や「僕の贈りもの(スペリオパイプ)」が浮いてしまっている。どちらも良い作品なのに、ちょっと勿体ない。

一方、「Run Away」や「のがすなチャンスを」のように新たな息吹を吹き込まれた作品があり、それは評価できるかもしれない。
また、松尾作の「君を待つ渚」のようなグループに違う光を当てる作品が登場したことも大きい。
その頃のヒット曲「さよなら」や「愛を止めないで」「風に吹かれて」なども惜しみなく投入されている。

それだけに、ラストの「愛を止めないで」のあの編集だけはもうちょっと考えてほしかった。あれはせっかくの盛り上がりをぶち壊しにしてしまいかねない残念な編集だと思う。
私の持っている(これを書くに当たって聴いた)CDは、編集が良くなく、カウントやMCが前の曲に含まれたりしているので、その辺りもマイナス要因と言えるかもしれない。

悪くない作品ではあるけど、できるなら、映像ソフトとして大変によく知られている「1982.6.30」を音源化してほしいような気がしてしまう。
ただ、オフコースのライヴが意外にこれを含めた1980年ぐらいまでしか音源化されていないのは、彼らへの渇望を煽る要素にはなり得るのかな、と。

まあ、わからないけれども。

基本的に他人様にどうこう、と偉そうに提示するような文章ではなく、「こいつ、馬鹿でぇ」と軽くお読みいただけるような文章を書き発表することを目指しております。それでもよろしければお願い致します。