小林拓也

アートディレクター|デザイナー https://goodol.jp

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最近の記事

芸術激流

芸術激流。 何度も声に出したくなる抜群のネーミングセンスに「もしかしてイベント名も芸術のひとつなのか?」といった12回裏ツーアウト満塁の神宮球場を支配する淡い期待に放棄が混じった雰囲気を胸に抱きながら、何の抵抗もなく口にしている周知の言葉は人に平時の安心感を与え予定調和を許すにも関わらず、羅列すると稀に発生するディストーションと摩擦が生んだ白い煙は周囲に異変をアナウンスすると同時に、結局のところ、有事に信じられるのは耳障りのよい言葉や目障りな参考書なんかではなく、己の習慣に

    • 10月のサンタクロース

      栗。 花の87年生まれの中でも特に好きでも嫌いでもなく、35年間の合計で1分も栗のことなんて考えたこともなかった俺がびっくりしたのは2020年の11月。 今年は自分たちで奪りに行くぞと、ワンピースを目指すシャンクスさながらの心意気と絵に描いた栗泥棒の装備を抱えて、渋滞の圏央道へ向けてクルマを走らせた。何をもってして花なのかはまったくわからぬまま。 クルマのシートがその役目を終えた場所は、新潟県十日町市松之山。俺の田舎であり、控えめに言ってすべてである。 地元の名酒に赤

      • そもそも海洋ゴミとはなんなのか?

        海洋ゴミは3つに大別される 漂着ゴミ:ビーチや岸に打ち上げられたゴミ 漂流ゴミ:海の中を漂っているゴミ 海底ゴミ:海底に沈んでいるゴミ この3つらしい。 では、それぞれどんなゴミが多いのか? 漂着ゴミは自然のゴミが多い 漂着ゴミは容積・重量ともに自然のゴミが多いとある。自然のゴミってなんだ? ピンとこないがとにかくそうらしい。 個数で見ると9割以上が「人工物」。中でもやはりプラスチックが多く、プラスチックの主はボトルのキャップやふた、ロープ・ひも、マドラーなど

        • 【世界海洋デー】リバークリーンの約束①【6月8日】

          海洋ゴミが増え続けている。 決まり文句のように言われて久しいが、「増え続けている」を示すデータが見つからない。 少なくとも10分ググっただけでは。 ほんとうに増え続けているのだろうか? 誰か教えてくれ。 「海洋ゴミ」と入力して検索ボタンをポチ。 検索結果上位50ページのタイトルとディスプリクションをざっと見る、 それっぽいページをすべて新規タブで開く。 どれどれ。 1タブずつ見ていこう。 ……。 プラスチックばかりだな。 海洋ゴミ全体を示すデータがない。

        芸術激流

          昼下がり。充実の日曜日

          暇だ。 「暇」の文字を見すぎてゲシュタルト崩壊してくるくらい暇だ。「暇」は、日を背負った亀がコ&又の猛勢をなんとか押さえてるように見えなくもない。 どうだろう。 誰か答えてくれないか。 そもそも人は「暇」についてきちんと考えたことがあるだろうか? 概念について、そして字の成り立ちについて。 何を言っているのかさっぱりわからない。難しいことはよくわからない。とにかくいま「暇」なのだ。 そうそう、それそれ。実際そうなんだからそれでいい。 ただ、ちょっと「暇」に同情した

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          夏休みの宿題もうやったよって言う友だちに感じる気持ちの正体

          はぁ。今日も変なタイトルをつけてしまった。つけたからには書くしかないし、書いたからには仕上げないといけない。 夏休みの宿題。 良くも悪くもない思い出がフラッシュバックする言の葉。文字にすると、前前前世の記憶のカケラにも感じる。 目を閉じて、脳の検索窓に「夏休みの宿題」と入力。少し強めにエンターを押すと、SEO対策された記憶の上位10ページが表示された。検索結果1位を選択すると、小学生のぼくの目線の高さで広がる景色があった。 その景色は白い額縁の向こうにある。どんな景色

          夏休みの宿題もうやったよって言う友だちに感じる気持ちの正体

          カイロは貼ってこそ温かい

          別に書くのが好きだから書いて仕事してるわけじゃない。じゃあなんなんだって言われても、特に説明はできないんだけども……。 うまく言えないときはたとえてみる。 温かくするのが仕事だったら寒い環境がいい。エジプトのカインズホーム的なホームセンターでホカロンは売ってないだろう。カイロだけに。 逆も然り。チリの南の先っぽでかき氷屋は儲からない。 それと同じく、ぼくは文章を書いてコンテンツをつくるとビジネスになる環境にいた。具体的には制作会社に勤務していた。お金を稼ぐ手法を考えて

          カイロは貼ってこそ温かい

          湯の中の収穫

          共同浴場で湯に浸かっていると、湯気の向こうからなまり声が聞こえてきた。 「さぁだっけねぇ」 おそらく、久しぶりという意味のあいさつだ。 「あっつくて、ちっともすすまねのぉ」 何が進まないのだろう。 「稲も汗かいちまってぇ」 稲刈りの話だ。この地域の人は、よく擬人化して話をする。会話は訛っていて聞き取りにくいうえ、解釈できたとしても私とは関係のないことが多い。 普段は他人事だが、今日は思わず顔がにやける。両腕の赤く腫れたかぶれは、稲によるものだ――。 新潟県十日

          湯の中の収穫

          リバークリニスト小林さんのゴミ拾い活動

          先日取材を受けた番組が放送されたようだ。めっちゃ寝起きで家出たから、眠そうな顔してないといいけど……。 ディレクターさん。ナイスピックを入れていただきありがとうございます!

          リバークリニスト小林さんのゴミ拾い活動

          原因論と目的論

          畳の部屋の灰色のソファに寝転がる人を見る。 向こうを向いて毛布にくるまっている。 正確な位置はわからないけど、横っ腹に置かれた左腕が上へ下へ反復している。 その規則的な運動はオモチャのネジを巻く因果のように、繰り返すほどあなたの眉間の皺は深くなる。 22時43分。 12の数字の上の小さな穴から、鳩が飛び出すことはない。 購入してからずっと、時計以外の機能はOFFになっている。 いつもならとっくに寝ている時間だが、動くと眉間の人が起きてしまう。 歯ブラシはあとにしよう。

          原因論と目的論

          名刀の一振りよりナタの一撃

          「価値観の違いだから、それはどうしようもないよ」 心に染みる言葉だった。 「やっぱりそうですよね」 表情変えずに違和感のない声を置いたけど、胸の前のほうは落ち着かなかった。 自分という存在が大切に抱える軸。その見えない物体は、人の言葉ひとつで揺れ動く。存在から自分を切り離したくなった。 しかし同時に、なんとなく見えた。 揺れ動くしなやかな思考こそが軸なのではないか。 固くてびくともしないと考える軸は脆い。見ないことで、考えないことで積み上げる軸は蛙だ。 対して

          名刀の一振りよりナタの一撃

          卒論テーマにリバークリーン

          十人十色のライフストーリー 10月の朝6時。青梅市の御岳渓谷で、川沿いのゴミを拾うリバークリーンに参加した。そこにいる人たちと話をした。 なぜリバークリーンをするのですか? きっかけは、ゼミで出会った本だった。『顔にあざのある女性たち-「問題経験の語り」の社会学』(著・西倉実季)。 顔に疾患や外傷を持つ女性たちのライフストーリーを取材して、当事者の存在や軌跡を顕在化する一冊。社会から「存在しない」とされた悲痛な叫びや苦しみ、経験が綴られていた。ショックを受けた。 ゼ

          卒論テーマにリバークリーン

          念願のゴミ拾い、母と。

          御岳渓谷でリバークリーン 野球の練習はすべて中止になった。旅行もできなかった。だから、御岳渓谷に行くこの日が待ち遠しかった。 ラフトボートに乗ってパドルを漕ぐ。水しぶきを浴びて急流を下る。夏休みにぴったりな、爽快なアクティビティ。でも、楽しみはまだ半分。 「あったー!」 ボートから降りてダッシュ。川岸に散らばるペットボトルやビニール、サンダルなどを拾い集め、ゴミ袋に詰め込む。ボードだけがたどり着ける川岸。みんなでキレイにすると、何だか気持ちがよかった。 「よーし、次

          念願のゴミ拾い、母と。

          当たる占いはなぜ長文なのか。

          脳は欲しい情報を拾う きっと、どっちにでも解釈できるよう、言葉をたくさん並べる必要があるからだろう。対面の場合は、早口の占い師が多いと思う。理解が追いつかない速度で話すことで、脳は理解したい内容だけを拾うようになる。 占いは楽しむくらいがいいね。 あたりまえだけど、「当たる」と思う人は、占いにすがるくらい困っていて、悩んでいる。当人は人生の交差点にいて、直進か停車か、左折か右折か、はたまた路肩に駐車か。どうするべきか迷っている。 そんな人と話をすると、本人の中ではもう

          当たる占いはなぜ長文なのか。

          安らげる場所

          人のためは、あらゆる欲求を満たす 最近、「安らぎ」に触れる機会が多くあった。そういえば、あまり意識したことのない心象風景だった。自分の「安らぎ」ってなんだろう? 考えるきっかけになった、茶道の本を読んでみた。 誰かを思ってつくる。惰性ではなく、丁寧につくる。追われるように日々を過ごしていると、ついつい忘れてしまう気持ちかもしれない。物事に真摯に向き合うためには、普段から、お茶を一杯飲むくらいの余裕を持っておくのが必要なのだろう。余裕だけじゃなくて、いただくのはもちろんのこ

          安らげる場所

          あなたはたぶん、人と関わりたいのだと思う

          悲しみはパーで詭弁はチョキ 積み木のようにモノを積み上げるとき、下段の安定性は重要だ。言うまでもない。これはなにかの「暗喩」ではなく、積み木のようにモノを積み上げるときの話。 暗喩、明喩、比喩。これらは人を扇動するときに多用される表現技法のひとつだ。広告やコピー、写真、デザインにも擬態している。自分が無意識のうちに口にしている場合もある。注意したほうがいい。 たとえば、人生に喩える人がいる。下段の安定性を「基礎体力」「好き嫌い」「幼少期のトラウマ」「母親との関係」などに

          あなたはたぶん、人と関わりたいのだと思う